シフォン
2022-10-11 22:20:32
2394文字
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Encounter for determination

崇秀と幼い崇秀の話。
少しだけ幼少期の捏造を含みます。



「やあ。こんばんは。遠くから君の声がしたんだ。どうしても気になっちゃって、見に来たんだよ。びっくりさせてごめんね」

『お兄さん、だれ……?』

声をかけた。それまでは良かった。
だれ、の問いに息が詰まる。
……やばい、全っっっ然考えてなかった。
ここで僕が「僕は未来の君なんだ」なんて言っても絶対に信じてもらえないだろう。そんなアニメみたいなことあるわけない。いや、現に起こってるんだけどね?

「あー、えっと…………多分信じてもらえないだろうけど、僕は秦一族っていう、遠い昔の一族の亡霊なんだ。随分昔に死んだから、もう自分の名前も忘れちゃった」

そう言うと、幼い僕は目を輝かせて『秦一族は本当にいたんだ……!』と言わんばかりに僕を見た。
よかった、無理矢理取り繕ったけどなんとかなった。

「君の名前は?」

『ぼくは、秦崇秀。』

「へえ、君も『秦』って名前なのか。同じだね、なんだか嬉しいよ。……これも何かの縁だから、少しだけ、僕とお話していかない?」 





 
何気ない話が続いた。
楽しかった出来事や、嬉しかった出来事を話して2人で笑い合う時間が楽しくて仕方がない。
そうこうしているうちに、身の上話が始まった。
……ここからが本番、“僕”と向き合う時だ。


……ぼくたち、お父さんから『お前たちは始皇帝の護衛長官だった秦王龍の末裔だから、勇気を持って協力して生きていきなさい』って教えられたんだ。でも、誰も信じてくれなくて、嘘つきって言われて叩かれたり、蹴られたりして……。そのたびに、お兄ちゃんが『崇秀をいじめるな!』って言って、守ってくれて……。ぼく、それがとてもつらいんだ』

「僕もそうだったよ。君と同じで虐められてた。僕を庇って痛めつけられる兄さんを見るのが何よりも苦痛だった。その度に兄さんは『俺は大丈夫だから』って笑ってさ……

「僕ね、もし兄さんが危険に晒されることがあれば、その時は命懸けで守るって決めたんだ。そのためには、強くならなくちゃいけない。だからたくさん修業したんだ。そしたらね、いじめっ子を見返せるくらい強くなれたんだよ」

『すごい……!』

「今の僕は、兄さんを守れるくらい強くなってると思う。確証はないけどね。……ふふっ、こんな事言ってたら『調子に乗るな』って怒られちゃうかな?」

……ねえ、お兄さん。ぼく、強くなれると思う?』

「なれるよ、必ず。
 ……お父さんの言葉を信じて、何があっても諦めないで。誇り高く生きるのが、秦一族の末裔の務めだ。いいね?」

『わかった!ありがとう、お兄さん!』

そう言って、幼い僕は無邪気に笑った。
これならもう大丈夫だろう。
そう確信した僕は、夢から覚めることにした。

「ありがとう、楽しかったよ。じゃあ僕、そろそろ行こうかな」

『またお話できる?』

「いつかきっと、ね」






真っ暗だった深海が、
いつの間にか明るくなっていた。