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アヤ↑30
2023-12-27 13:37:18
8975文字
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その嫁、怪物につき。
きみのまちサンドロックのドクターファン×うちビルダー(ナギサ)の話。ファン先生の様々なトラウマの元凶であろう、継母と義兄がサンドロックに来たら…なif話。
・トラウマに苦しむファン先生がいます。
・ナギサの口悪い、ブチギレ状態
・ファンナギ結婚済み。
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「ファン遅いなあ・・・」
時刻は昼。ビルダーの仕事を終えたナギサは一足先に自宅に戻っていた。自分ともう一人、ファンの分のお茶を淹れて待っていたが彼が戻ってくる気配はなかった。
せっかくお茶も淹れてゆっくり過ごす準備したのに、とむくれているとドアをけたたましく叩く音がした。
「??誰だろ」
依頼なら今日は締め切っている筈、とナギサが玄関の扉を開けるとカラスのXが泣きながら羽ばたいていた。
「X!?!?どうしたの!?なんで泣いて・・・」
「ファン!!」
Xから告げられた夫の名を聞いて彼に良からぬ事があったとすぐに察する。
「ファンに何があったの!?」
「ファン!!助けて!!苦しい・・・助けてナギサ!!!!」
Xが泣きながら飛んでいく。ナギサは念の為槍を持って急いで駆け出した。
「ファン!!ファンーーー!!!!」
Xに案内された診療所。ナギサは扉を勢いよく開けて彼の部屋に入る。ファンは自室の床に座りこんでいた。
頬は赤黒く変色しており、目も虚で宙を彷徨っている。
「ファン・・・どうして・・・なんでこんな、何があったの・・・??」
夫の痛々しい姿にナギサも混乱せざるを得ない。
Xもずっと静かに涙を流している。
「ファン・・・??」
ナギサはそっとファンに近づく。
するとファンは弾かれた様に腕を振るった。
「やめろ・・・やめてくれ!!!何故こんな事をするんだ?!私達が何をしたんだ!!!!」
「ファン!!!」
完全に幼少期の頃のトラウマがフラッシュバックしている。
目を見開き怯えた様な表情でファンはナギサを見つめ、自分の身を守る様に頭を抱えてしまう。
「もうやめてくれ・・・!!痛いのも辛いのももう嫌だ・・・嫌なんだ・・・!!!」
「ファン!!!!!」
錯乱しているファンを見てナギサは咄嗟に彼を抱きしめる。
「兄さんもう殴るのを止めてくれ!!謝るから・・・義母さん・・・Xを檻から出して・・・」
「ファン!!!あたしを見て!!!戻ってきて!!!!」
「もういっそ私が消えてしまえば・・・」
「ファン!!!!!!!」
ナギサはファンの頬を包んで強引に目を合わせた。
彼の青い瞳にナギサの顔が映る。
その時ようやくファンの意識が戻ってきた。
「・・・ナ、ギサ・・・??」
「・・・戻ってきた??」
体の震えが止まり、ファンが彼女の名前を呼ぶ。
ナギサは安堵の表情を浮かべて彼の頬から手を離した。
「すまない・・・つい、取り乱してしまった」
「Xがあたしに助けを求めてきたんだよ。・・・それで何が・・・」
と言いかけてナギサは一回言葉を止める。
多くのトラウマを抱え、尚且つ先程まで錯乱していた彼に辛い事を話させるのが躊躇われたからだ。
「いや、ごめん。無理に話さなくても・・・」
「私の継母と、義兄が来たんだ」
「えっ・・・!?」
ナギサは思わず絶句する。継母と義兄といえばファンを苦しめた張本人達であり、彼の過去を知るナギサからすれば絶対に許せない存在だった。
「な、なんであいつらが・・・」
「分からない。多分、私を揶揄いにきただけだろう。義母は私を憎み嫌っているし、義兄からは暇つぶしの玩具としか見られていないからな」
「そ・・・れで・・・その頬はまさか」
「義兄から殴られた」
力なく自嘲気味に笑うファンを見てナギサの彼らに対する怒りのボルテージは一気に上昇する。
愛する夫をわざわざサンドロックまで来てまで痛めつけ、苦しめる二人に心底腹が立って仕方がない。
しかしファンはナギサを心配させまいと気を遣ってか、彼女に微笑む。
「この傷は・・・すぐ治る。大したことは」
ナギサは黙ってファンを思い切り抱きしめた。
大したことはないと言いつつとても悲しそうで、辛そうな彼にとてもじゃないが耐えられなかった。
抱きしめられたファンは目を大きく見開く。
「君が落ち着くまで、あたしが側にいるよ」
彼女の小さな手がファンの大きな背中を摩り、それと同時に温かな体温が伝わってくる。
ファンもナギサの背中に腕を回し、彼女を抱きしめ返してぽつぽつと話しだした。
「・・・二人の姿を見た時、真っ先に幼い頃の記憶が蘇ってきた」
「・・・うん」
「体が動かなかった。まるで凍りついたみたいに。だが、その後で母親として会いにきたと・・・母親として振る舞う義母を見てたまらなく腹が立ったんだ」
「・・・うん」
「思わず言ってしまった。ふざけるなと。当然義母はヒステリーを起こし、兄はひたすら暴力を振るってきた」
「・・・」
「兄は力が強くて、私には何もできなかった。あの頃のトラウマがひたすら蘇ってきて、何が起きているのか・・・もう・・・っ」
ファンの目から涙がこぼれ落ちる。
次から次へ溢れて、止まらない。
「何もかもぐちゃぐちゃで、何も・・・考えられなくて・・・っ、さっき言われた言葉が頭から離れないんだっ・・・あの女と、母と一緒に私も死ねばよかったと・・・っ!!」
「・・・・・ファン。ちょっと休もう。もう、何も考えないようにしよう。・・・ね??」
「ナギサ・・・っ、ナギサ・・・っ!!!」
ファンはナギサの方に顔を埋め、そして嗚咽を洩らし始める。
彼が落ち着くまで、ナギサは黙って彼の背中を摩り続けた。
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しばらく泣き続け、少し落ち着いたファンにナギサは温かいお茶を渡した。お茶を飲み干すとファンは「ありがとう」とお礼を言うと疲労からかすぐに眠ってしまった。
彼が寝入ったのを見てナギサは静かに部屋を出る。
診療所の入り口近くの止まり木に止まっていたXは「ナギサ?何処行く??」と声を発した。
「X、ファンの側にいてあげて。あたしは・・・ちょっと用事済ませてくる」
ナギサはそう言って診療所を出る。
すると丁度研究所の前を通り過ぎていく金髪の親子。
「ああスッキリしたわ。ありがとうね坊や。あの愚図で生意気なファンにはあれくらいしないと気が済まないし、分からせられないわ」
「だろお母さん!!あいつには一生俺たちに楯突く権利なんてないんだよ!!」
ゲラゲラと下品に笑いながら歩くクズ二人。
彼らをナギサは見据える。
「・・・ファン、あいつらだね。君を苦しめた敵は」
外はすっかり暗くなり、空は黄昏色に染まっている。
その時偶然近くを歩いていたトルーディは診療所から出てくるナギサの姿を見て、用事を依頼しようとしたが・・・やめた。
ナギサは何も言わずにトルーディの横を過ぎていく。普段真面目で親切な雰囲気の彼女だがその時は纏う気配も何もかもが全て氷の様に冷たかった。
あの猛禽類の様な瞳孔は更に細く長く引き絞られており、例えるなら恐ろしい怪物が静かかつ激しく怒っている様な・・・そんな雰囲気だった。
(い、一体ドクターと何があったのかしら・・・)
声を掛けようものなら襲いかかってきそうな雰囲気のナギサに理由を聞くこともできず。
トルーディはただただ静かな怒りを纏いながら歩き去っていくビルダーを見送るしかなかった。
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