犬蓼
2024-10-29 00:58:48
8864文字
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周回軌道の変化に因る惑星の接近とその影響について

せつなさんが風邪を引いた話。
外部さんたちがうどん食べてても平気な方向け。
ほとんどせつなさんとみちるさんしか出てきませんがベースは、はるみちでできています。と思います。


 幸い食欲は落ちてはおらず、完食して薬を飲むことができた。頭重感はいまやしっかりと頭痛になり始めているが、そのうちに効能が出るだろう。状況判断、分析、対応はできている、と、せつなは自身を評した。
 部屋を出る。階段横を通り抜けてパウダールームに向かう。洗面所の設えられているそこで、寝るための諸々を済まそうと考えたのだ。湯冷めをしそうだからシャワーは控えるが顔くらいは洗いたい。
 通り過ぎながら、階下をちらりと伺う。段を下ろした先は廊下だから、もちろんそこに人々の気配はない。三人はまだ夕食の最中だろうか。リビングにいるだろう。
 ほたるがセーラーサターンとして再び覚醒した時に、その身の回りを整える役割を一人で担うことも考えていた。はるかとみちるにはそれぞれの生活があるのではないかと思っていたのだ。浅薄だったと思う。こういう状況を考慮に入れていなかった。一人で食事をとるほたるを想像するだに胸苦しい。二人がいてくれて良かったと、思う。
 ぼんやりと考えながら諸々を済まし、顔を上げて見た正面の鏡に映る顔がそれなりに憔悴していて、保菌者なのだった、と改めて思った。
 造り付けの壁戸棚を開ける。アルコール綿があったはずだと思ったのだ。彼女専有の物が多いのもあってこの部屋の管理はほとんどみちるがしているが、行き届いていて消耗品を探してもすぐに見つかる。それもまたありがたいことだと思いながら、せつなは鏡から洗面台の周囲をアルコール綿で軽く拭った。殊更飛沫を飛び散らせたとは思わないが、消毒は疫学的には防除の基本だ。
 突として。背後から。
「せつな? もどしたの?」
 切迫した声音に驚き振り返る。ドアを開け、みちるが立っていた。せつなはかぶりを振った。
「いいえ」
 らしくもない読み違えだと思った。寝るための支度をしていたのだ、と添えた。
 みちるは、ほっと息をついて肩を下ろし、けれど次には柳眉を逆立てた。眼差しが飾りを外した鏡の縁のように鋭く光る。
「気遣いは嬉しいけれど、それは今すべきことではないわ。あなたが為すべきは、養生よ」
 その点に思い至らないことがまず日常のあなたらしくない、と叱りつけられた。