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しちろ
2023-05-07 20:01:06
6632文字
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LOM・連載主人公の短編
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みえるみえない
聖剣LOM短編集。メシマズな話と、ショートショートと、アーティファクト使いの話。pixiv投稿作品。6,700字。
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みえるみえない
「翡翠の卵?」
アーティファクトだよ、と言ってカイはシオンにそれを渡した。翡翠特有の丸みと、心地の良いひんやりとした感触が伝わる。シオンが卵の中をのぞくと、かすかなひび割れや内包物、緑の濃淡が混じりあい翡翠は複雑な色合いを見せている。
非常に美しい。
……
が、それだけだ。
「これ、お前にはどんな風に見えているんだ」
「翡翠色の洞窟の景色とか、地下水の冷たさとか、湿った空気の匂いとか。水音とかも」 にこにこしながらも、カイは少し肩をすくめた。「こんな話しても、誰も信じないんだけどね」
「そう」
カイの見る世界とシオンのそれとはまるで違う。
シオンが手にする限りは、この翡翠の卵もただの美しい工芸品でしかない。
「瑠璃が言ってたろ。真珠姫の香りがするって」
「うん、ストーカー全開だよね!」
「そうじゃ、なくて」 光に透かして見る。綺麗だ。それだけ。「瑠璃のように香りがわかる奴がいるのなら、お前みたいに何か視えたり音が聴こえるやつだっているだろうって」
アーティファクト使いではなくても、なにかしら強い思いがあれば、感じ取れるものがあるのだろう。姫を強く求める瑠璃の心がアーティファクトと共鳴したのだ。
「
……
キミは、信じてくれるんだ」
「それが、なにか?」
カイはううん、とかぶりをふる。子どもの頃、友達にアーティファクトの話をして「うそつき」と言われたことが、カイにはある。
「シオンは、なにかみえた?」
「
……
さっぱり」
どれだけ覗き込んでも、シオンには見えないし聴こえない。語りかけても来ない。かつては触らずともうるさいほどに声が聴こえたが、今はさざ波ひとつ聞き取れやしない。
――
以前の自分は、果たしてこれをどうやって使っていたんだ?
いくら目を凝らしてみたところで、何も見えては来ない。新しい世界をイメージできないのだから、それで当たり前なのだろう。
「やっぱり俺には無理みたいだ。そういうのはお前に任せた」
「ふむ
……
」
返された卵を、カイはまじまじ観察した。
この卵は、シオンと話をしたそうに見える。それはとてもとても、小さな声だけれど。
「キミ、できそうなんだけどなあ」
「は?」
「
……
なんか、そう思っただけ」
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