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しちろ
2023-05-07 20:01:06
6632文字
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LOM・連載主人公の短編
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みえるみえない
聖剣LOM短編集。メシマズな話と、ショートショートと、アーティファクト使いの話。pixiv投稿作品。6,700字。
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4
英雄たちは飯がまずい
「アンタなあ
……
」
「ん?」
「人間のくせに、そのクソまずい飯は何とかならんのか」
「
……
だって俺、味とか、よくわからないし」
腹に入れば同じだろ、と平然と少年はのたまった。料理上手が言うのならいいが、シオンのようなメシマズに言われても腹が立つだけである。
「これはなんだ」
「だからチャーハンだって」
野営でシオンが提供したのは、飯にしょうゆをかけただけのものである。これを「チャーハンです」と言って渡された瑠璃は、本気でこの少年の頭を疑った。コイツ、手先が器用で武器防具まで作れるらしいのに、料理だけなぜこうなのか。
瑠璃は試しに鰹節をふってみた。
「シオン、これは何だと思う?」
「猫まんまだろ」
わかっているのか
……
。
「鰹節がなければ」
「チャーハン」
「殴るぞ」
「もう殴られてるけど」
本当に、頭がいいのか悪いのかわからない。
多分、バカ寄りなんだろう。
シオンは、珠魅なんだから細かいケチつけるなよとブツブツ言っている。確かに珠魅の瑠璃に食はそれほど重要ではないが、好んでまずいものを食べたいわけがない。
「たまごがないのが不満なら
……
」
シオンは瑠璃の茶碗に生卵を割り入れた。
「これはTKGだろうが!」 炒めるんだよ、炒飯!
「瑠璃。お前、人間の飯に詳しいな。珠魅なのに」
「誰のせいで詳しくなったと思っている
……
」
瑠璃だけではない。エスカデもラルクも飯はうまい。自分が作れなくては、シオンといる限りいつまで経ってもまともな物が食えないのだ。
時は流れて、カイのファ・ディール。
「ちゃ、ちゃーはん?」
「うん」
野営でシオンに料理当番が回ってきたとき、やはりカイは彼の『自称:チャーハン』を披露された。
皆さんお気づきだろうが、素のシオンは微妙に天然である。
冗談で言っているわけでもなさそうだし、どーしたもんかな、と思案したカイは、ポンと手を打った。
「これにバターを乗せると」 カイは
醤油ご飯
チャーハンもどき
の上に角切りのバターをちょこんと乗せた。バターがとろりととろける。「禁断の悪魔飯が完成ー!」
「
……
何か違うのか、これ」
「違うよ! ギルバートの詩とポキールの詩くらい違うよ!」
「それこそどちらも変わらない気がする」
カイは、あたしって天才!と飯をかっ込み、シオンはやっぱりよくわからない
……
といった風にもそもそ食べた。カイとシオンの作るものでトップクラスにうまいのがこれである。もうだめだこいつら。
バターを乗せられた謎飯を食べながら、そういえば当番のたびに弟子や仲間には文句言われたよなあ
……
と思っているシオンだが、一部の仲間がわざわざ料理を覚えたのが自分のせいだとはみじんも思っていない。そしてシオンの世界の仲間だって、時間と世界を超越して、師や友人を超える怪物が爆誕するとか思ってもいなかったに違いない。
ある日、料理当番のカイは大きな鍋を煮込んでいた。
「カイ、これは?」
「キーマカレー! 自信作だよ!」
キーマカレーって緑色だったか?
もってりとよそわれたカレーを手に、シオンは首をひねった。どちらかといえば、ドミナのモティさんのカレー(サグチキン)がこんな色だったはずだ。
この先の自分の展開は読めるが、少年は食べた。
「
……
」 あかん
……
。
「ね、ね? おいしくできてるでしょ?」
シオンは額に手を当てたまま震えている。ここにステータス異常表示があれば、今の彼は確実に『麻痺』である
「砂漠のキーマで作ったんだ! だからキーマカレー!」
「キーマって
……
あの妖怪植物の
……
」
正体を知っても吐かなかったシオンを、誰か褒めてやってほしい。
デュマ砂漠に生息する、とっても緑で巨大で触手なアイツである。
毒だ。
どこをどうみても毒だ。匂いも毒だ。なにより味がヤバい。
「お前の味覚と頭はどうなってるんだ。こんなん喰えるか」
「なんでだよ! 色と言いトロミと言い完璧じゃん! 見てよこのもったり感!」
「肝心の味が死んでる。あと死ぬ。リアルに死ぬ。お前の料理当番のたびにオールボンに会う身にもなってほしい」
「はあああ!? こんなんで死ぬとか、キミ虚弱過ぎない? こないだだって、モルボルボールの毒喰らったのキミだけだったよね? あと、オールボンって誰だよ」
「俺が普通でお前がおかしいんだよ
……
どういう消化能力してるんだ、お前
……
」
カイとシオンが二人で旅をする間、ひたすらこれが繰り返されている。たぶん、味気ない干し肉や乾パンでも食べている方が、お互い
……
というかシオンは幸せになれる。
なお、食に興味のないシオンが過剰に反応する食べ物が、カイの超弩級劇マズ飯だけであることは、誰も知らない。
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