Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
Hizuki
2019-12-31 19:24:31
7181文字
Public
Clear cache
誘うは蒼穹、漆黒の翼を伴いて
【グラブル】ジクグラ。とある理由で艇を降りることを決めたジークフリートとそれを受け入れることを選ぶしかなかったグランの話。ちょっと特殊な部分があるので、注意書きを見たうえでどうぞ。来てくれるって信じてた。
1
2
3
4
治癒の心得のある仲間から受けた手当てと、ジークフリートさんが持っている回復力のおかげで傷はもうほとんど治りかけていた。
みんなが自分の部屋に引き上げていった後も、何となく不安でジークフリートさんの部屋に留まっていた。
ベッドの隣の椅子に座り、様子をうかがって。
無事に戻ってきてくれてほっとしたはずなのに、どうにも拭えない心配が重苦しい部屋の空気になって僕の周りにまとわりついてくる。
重圧にも似た沈黙を破ったのは、ジークフリートさんの方だった。
「
…
グラン、俺はこの艇を降りる」
相談でもなく、降りると言い切った。
ああ、やっぱり。
「
…
そう言われそうな気がしてた」
ズボンのポケットから甲板で拾った小さなそれを取り出し、ジークフリートさんに手渡した。
黒い竜の鱗を見たジークフリートさんが目を見開き、ふぅと息を吐く。
「話が早い」
この鱗はジークフリートさんのもの。
竜化が進んでいる証。
進んでしまってはもう戻りはしない。
余程のことがない限りは一気に進むことはないと聞いてはいたけれど、それが進んでいるということは。
「
…
もう少しだけ待ってくれないかな」
「何かあった後では遅い。お前や他の者に迷惑をかけるわけにはいかないからな」
「迷惑だなんてそんなこと
…
!」
竜の血が活性化したジークフリートさんがどれほど強いのかは身をもって知っている。
もし完全に竜と化したのならばどうなってしまうのか、もし暴走してしまったとして止めようとするならばどれだけの戦力が必要なのか、考えるだけでも気が重くなる。
ならば艇を降りるというジークフリートさんの言い分も理解はできる。
ただ、理解はできるだけで、それを受け入れられるかどうかは別の話で。
「嫌だ、嫌だよ
…
行かないで
…
」
「グラン
…
」
思わず椅子から立ち上がってジークフリートさんに縋りつく。
大きな手が優しく僕の頭を撫でた。
艇を降りてしまったら、こうして触れてもらうこともできなくなる。
名前を呼んでもらうこともできなくなる。
団長としてすべきことは分かっている。
けれど、その前にこの人は僕にとって特別な人で。
離れるなんて考えたこともなかったのに。
「
…
すまない」
肩口に顔を押し付けて泣きじゃくる僕を宥めるようにジークフリートさんはずっと撫でてくれていた。
離れたくないと抱きついて、背に回した腕。
服越しに触れる硬い感触は黒い鱗。
僕の名を呼んで、僕に触れて。
いなくなってしまう分の先払いのように。
この人の意思は固い。
僕がここでどうこうしたって覆ることはないと分かっている。
「この艇に乗って、空を駆けて、様々な経験をさせてもらったな」
ぽつりぽつりと普段よりも思いを語る。
こんな場じゃなければもっと嬉しかったのに。
「あいつらとの繋がりも取り戻せた
…
グランという大切な存在もできた
…
もう十分だ」
ようやく落ち着いてきたと思ったのに、また視界が滲み始める。
ああもう、この人は。
「
…
俺もお前と共に空の果てに行くことができればと思っていた」
分かってる。
行かないで。
一緒に行こう。
いっそのこと、僕も。
言えない言葉が指先に込める力になって握り締めた服の皺を深くしていく。
「だが、あの身体だからこそできることもあるだろう」
自分が辿り着く先を受け入れて、その選択肢を選ぶまでにどれだけ悩んだのだろう。
決して真っ直ぐではない道を歩んできて、更に険しい道に進もうとしていて。
「だから俺の名を呼んでくれ、グラン」
顔に手を添えられた。
促されるままに顔を上げる。
きっと涙と鼻水で酷い顔をしているに違いない。
伏せた目からはまた雫が落ちる。
「お前の危機には必ず力になろう」
重ねられた唇は誓いの証。
少しだけかさついていて、それでも柔らかくて、優しくて。
触れ合った場所が離れていき、ゆっくりと目を開ければ寂しげな金色がそこにあった。
僕だけじゃない。
初めて見る色に隠された感情はきっと僕と同じ。
ただ僕はジークフリートさんの言葉に頷くしかなかった。
艇を降りるのに体のいい理由を作ることは簡単だった。
個人で引き受けた依頼が僕達の針路からずれるから一度降りることにした、というのが全員に告げた理由。
そして、事情を知っている面々には真実を明かした。
驚きつつも納得して、ジークフリートさんを送り出した。
出発の時間に選んだのは日が沈んだ後。
「
…
ではな」
不思議とその表情は暗くなかった。
それどころか穏やかなようにさえ見えて。
夜色の甲冑は闇の中に溶けるように消えていった。
1
2
3
4
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内