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ほにゃっとわらって、三年後。番外編です。
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https://www.pixiv.net/novel/series/12007385

コノエは何でも受け入れて許すような穏やかな大人のような顔をして絶対何も譲らないし許さないタイプの男です。
チャ♀はすぐ怒るし拗ねるけど懐に入れた相手のことは全部受け入れるし許す甘々なタイプです。



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 午前中は娘とたっぷり遊んで、手作りのランチを妻子に振る舞い、午後になって娘が昼寝したタイミングでコノエはチャンドラを寝室のクローゼットに呼んだ。
 寝室に併設されたウォークインクローゼットには二人の衣類を詰め込んで余りあるスペースが確保されているが、チャンドラの衣類が少なすぎて半分がほぼ空である。
 軍人時代、ワーカーホリック気味だったせいもあり軍服と官給品で下着類まで全てが完結していて私服はほぼ無く、結婚後は仕事用の服を数着買い揃えただけで家ではもっぱらコノエの服を着たがる。
 産後に仕事をしながら通った大学院も仕事着でそのまま行っていたし、休日は娘と庭で泥だらけになって遊ぶので軍人時代のインナーTシャツにジャージパンツで事足りると愛用している。
 チャンドラはオシャレに興味が無いどころか忌避感がある。着飾って目立つことで性犯罪にあう可能性が上がる事を無意識に怖がっているので服を買うのが苦手なのだということはコノエも察している。
 ウェディングドレスを着てもらうのも三年の説得を要したのだから推して知るべしだ。何ならチャンドラ自身が買った服よりコノエがチャンドラの為に買ってきた服の方が多いまである。
 当然、パーティーに着ていけるような服はチャンドラ家のクローゼットには無い。
 コノエは腰に手を当てチャンドラを問い詰めた。
「明日は何を着て行くつもりだったんだ?」
「いやー、パーティーとか護衛任務でしか行ったことないし普通にモルゲンレーテの社章バッジつけてスーツで行くつもりでした」
 頭をかきながら答えるチャンドラ。スーツというと、クローゼットの端にハンギングされているくびれのない黒いジャケットにダボついた黒いパンツのセットのことだろうか。予想はしていたがそれでは恥をかく。
「ダリダ、それは普通じゃないよ。ドレスコードというものがある」
「一応、わかってるんですけどでも、前に着たドレス借りようと思ったら似合わなかったし、そもそも入らなくなっちゃっててスーツ、絶対ダメですか?」
 気まずそうに視線を逸らしながらぼそぼそと言い訳するチャンドラ。
「サイズ、ね」
 チャンドラは今年三十三歳だが、子どもが生まれて色気が増した。三年前にヤタノカガミコーティングの技術を転用して作った濃紺のドレスは少々デザインが甘めだし、何より出産を経てもほとんど変わってない体型だが胸だけサイズアップしていて、それはもうたわわになった胸が収まらないのは想像に難くない。
「スーツはダメだ。ワンピースを着ないと」
「うじゃあ、今からレンタルショップに行ってそれっぽいサイズのやつを借りて」
「仕立てよう」
「いや、レンタル
 何とかしてレンタルで済ませようと食い下がるチャンドラにコノエは笑顔で言い聞かせた。
「たまには可愛い奥さんに服をプレゼントしたい。普段は寂しくも単身赴任で真面目に働いて、離れて暮らす妻への思慕を募らせる夫のささやかな楽しみを奪うというのか。君は心が広い人だ。そんな酷い事はしないね?私の月の女神に相応しいドレスを仕立てさせて欲しい。そのくらいのわがままを聞いてくれたって良いと思うんだ。どうかな?」
「シボ? え? 月の……なんて?」
 早口で捲し立てたらチャンドラに首を傾げられたが一気に畳み掛ける。
「で、これなんだが」
「いや話聞いて
 コノエはあらかじめ準備してあったスーツケースをクローゼット内のアイランドカウンターの上にドッと置いて開いた。
 中から取り出したのは大きな箱と小さな箱二つと中ぐらいの箱である。
 大きな箱を開けてドレスを取り出す。黒いタイトな総レースの膝丈ワンピースドレスで襟元が詰まっているし、袖も長くて露出度が低く安心感のあるデザインで作ってもらった。デザインのバランス上、背中は大きく開いているがコノエが横に居れば問題の無いレベルだ。
「えっ、は? これ買ってきたんですか? なんか高そうなんですが!?」
「いや、そうでもなかったよ」
………ウソでしょ! あっ、ウェディングドレスと同じブランドだ! アルバートに値段聞いて心臓止まるかと思ったのに」
 広げて見せたドレスを摘んであちこち確認して、コノエの嘘を看破するチャンドラ。ハインライン御用達のプラントのハイブランドである。ウェディングドレスと同じところなので値段はおおよそバレているようだがあえて否定しておく。
「いやいや、そんなにはしないから」
「ウェディングドレスの半額以下?」
………
 問い詰められて黙った。価格はウェディングドレスとほぼ同じくらいで若干安い程度だったが愛妻の服代ならこんなものだろう。今後はチャンドラがパーティーに参加せざるを得ない事態になるのを最低二年間は避けるつもりだし、たまにはこのくらい買わせてほしい。家計とは別のコノエのプライベートマネーの範疇なので文句は聞かない。
「バカ! バカでしょ! なんでこんな二、三時間しか着ない服にそんな大金を!」
「ははは」
「笑って誤魔化すなっ!」
「靴はこれ」
 コノエは涙目になっているチャンドラの文句を聞き流して中ぐらいの箱を開けてハイヒールの黒いパンプスを取り出す。
こ、この裏面が赤いやつユリーが欲しいって言ってたブランドの
「サイズは合うと思うんだがドレスと合わせて試着してみてくれないか」
「まって。先に値段の開示を要求します!」
「ははは」
「アレクセイ!」
 何だか顔色が悪くなってきたチャンドラの文句を聞き流して次は小さな箱を取り出す。
「それで、アクセサリーなんだが」
 小さな箱を開けて四角いイエローダイヤの周りにメレダイヤが囲むデザインのシンプルなイヤリングを見せる。
「アレクセイこれ、ダイヤじゃないでしょうね」
「シンプルだから使いやすそうだろう? ドレスの襟元が詰まっているからネックレスは買わなかったんだが、お揃いの指輪もあるんだ」
 いそいそともう一つの小さな箱を開けてイヤリングと同じ四角いイエローダイヤのついた指輪を見せる。
「いやいやいや、おかしいでしょ」
「何が? 気に入らなかったかな」
「石のサイズが、えぐいですっ! ダイヤじゃないんですよね? 頼むから違うって言って欲しい!」
「君が結婚指輪を受け取ってくれないからその為に取っておいた予算が余っていて、良い機会だと思って使ったよ」
「いや、最初にもらったリングで充分だし。これ、気に入ってるし
 左手の薬指にはめているペアリングを撫でながら言うチャンドラ。
 付き合い始めてすぐに、交際を周知させる意味も含め、オノゴロにあるデパートで買った間に合わせの指輪をチャンドラはずっと大事にしてくれている。コノエとしては結婚を機にデザインも品質も最上の物を贈りたいと考えていたのだがペアリングが気に入っているからと却下されて指輪についてはこれまで不完全燃焼の気持ちだった。やっと納得いく品が渡せて満足である。
 パーティーの件を知って実質二日で準備させたので職人が大変そうだったが。
「左手の薬指にはめてもいいかな?」
「うっいい、けど
 しおらしく懇願すると拒否されなかった。チャンドラの小さな手を取って、ペアリングのはまった薬指に重ねてはめてから両手で優しく握りしめる。
「貰ってくれて嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます
 俯きながらも頬を赤らめお礼を言ってくれるあたり、なんだかんだ言ってもチャンドラはいつもコノエを許してくれる。懐に入れた相手にとことん甘いのだ。愛されている。
「ちなみに、イエローダイヤなんだ」
「うわっ! もー! 無駄遣いしてぇ!」
「ははは」
 正直に告白したらチャンドラにポカポカ叩かれたが痛くないように手加減してくれるし、照れ隠しのスキンシップが可愛すぎる。楽しいことこの上なかった。
 もっとたくさん叱られたくなったので、チャンドラを抱き抱えてベッドに行くことにした。娘が昼寝から目覚めるまでがチャンスだ。