澄ひろえ
2024-09-09 00:01:17
8758文字
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をかしき影を追う先へ

ククゼシ2人旅ツイート小説「光のレティシア編」を加筆・修正したものです。久方ぶりですがよろしければ御覧ください。最終ページは後書きです。


 日は暮れていたが、月明かりがいい感じに地面を照らしてくれている。松明も必要なさそうだ。
 俺達は再び村があるであろう場所目指して歩き出した。
 一番の懸念であるのは見知らぬ魔物達の襲撃だったが、ここに来るまでに俺達自身も強くなっていたみたいで、なんとかやり過ごすことが出来た。
 海沿いを歩いていると、やがて岩山が現れ、海への視界を遮った。そこから南下する。地図が正しければやがて左手に村が見えてくるはず。
 途中何度か休憩を挟み、魔物達の襲撃を退けながら歩き続ける。そうして朝日が昇りきった頃、俺達は地図に描かれている村を発見し、無事到着することが出来た。
「はぁ・・・こりゃまた」
 村に入って辺りを見回し、俺は思わず呟いた。
 そこは、今まで行ったことのある町や村と一線を画していた。
 まず全く建物が違う。木造であることは珍しくない。ただ、屋根が木造ではなく、布や藁で覆われていている。それだけでも俺達との文化の違いを感じさせられる。
 そして、行き交う村人達からは突き刺さるほどの視線を感じる。まぁ、今まで外部から隔絶されてた村に突然見知らぬ人間達がやってきたんだ。そりゃ警戒と興味も沸くか。
 村人達が来てるのは・・・民族衣装?垢抜けない感じだが通気性は良さそうだ。特に女の子。ゼシカ用に一着くれねーかな・・・。着てくれるかどうかは分からないが。
「なぁあんた達、もしかしなくても島の外から来た人達だよな」
 好奇心を抑えられなかったらしい村の男が話しかけてきた。俺達は頷く。
「やっぱりそうか。ここは、レティシアの村さ。レティシアってのは神鳥レティスをあがめる者って意味さ」
「レティシア・・・神鳥レティス・・・」
 ここで、レティスの単語が聞けるとは。やっぱりこの台地には神鳥レティスの手がかりがあるのか。
「俺達は神鳥レティスの事を知りに来たんだ。何か知らないか?」
 俺の言葉に男は少し考えていたが、
「・・・神鳥レティスの伝説を知りたいなら長老に聞くといい。長老の家はほら、一番奥にある一番大きな建物だよ」
 そう言って村の奥を指差した。俺達は礼を言って長老の家を目指して歩き出した。

 長老の家にたどり着く。中に入ると年老いた男と若い男の二人の男がおり、若い男の方が一方的に何か喋っている。
「レティスが飛び回るせいで魔物達も苛立っているんだ。いくら神の鳥とはいえ、文句の一つも言いたくなるじゃねぇか!・・・でも、影だけじゃ文句も言えねぇ。ちきしょう!」
 ・・・レティス?影だけ?何か引っかかるな。
 年老いた男は・・・じっと目を閉じている。文句を言ってた男は荒々しく立ち上がり、家を出て行った。
 て事はこっちの男が長老なのか。文句を言ってた男に対して動じることは無かった。中々に肝が据わっているな。
 と、いきなり男の頭ががくっと項垂れ、頭を起こしながら男が目をゆっくりと開いた。
「うーん・・・むにゃむにゃ・・・うん?何だねあんた方。見たところよそ者のようだが・・・?」
 ・・・って、さっきまで寝てたのかよ!これが長老で大丈夫なのか、この村・・・?
 一抹の不安を覚えつつ、俺達は神鳥レティスについて長老に尋ねてみた。
「神鳥レティスについて知りたいとな。ほう、良い心がけじゃ・・・伝説によると、神鳥レティスはこの世界と異世界を行き来する事ができる力を持っているという。この力はレティスのみが持つことを許された特別な力だというな」
「異世界?」
 またえらく物騒な単語が出てきたな。俺は眉をひそめる。
「じゃが、ある時。異世界の邪悪な存在が、この世界を狙って二つの世界をつなぐ巨大な門を生み出したそうじゃ。レティスはその企みを阻止するために異世界へ旅立ち、自らの力を振り絞ってその開かれた門を閉ざしたそうじゃ」
 長老はそこまで言って一つ息を吐く。
「しかし、力を使いすぎたレティスは、己の影のみをこちらの世界に残したまま、ついに異世界より戻らなかったそうじゃ」
 レティスは影だけ残して異世界にいる・・・。この大陸に来た時見た影がそうなのか?そしてレティスが閉ざした門を生み出した異世界の邪悪な存在ってのは・・・奴のことなのか?
「・・・ああ、それと。レティスの力は完全に失われたわけではなく、まれにあの影が異世界への破れ目を作るとも言われておるな。そいつに入ると異世界へと迷い込んでしまうそうじゃ。まぁあんた方もいたずらにレティスの影を追って破れ目に入り込んだりせんようにな」
 長老はふうと息をついた。


 俺達は礼を言って長老の家を出た。
「要するにレティスに会うためにはレティスの影が作った破れ目を通って異世界に行く必要があるのよね」
「まぁ、そういう事なんだろうけどな・・・肝心のその場所はレティスの影を追って見ないと分からないって事だ」
 影・・・一体どこら辺に現れるんだろうな。
 レティスの影がよく現れる場所を村人に聞き込みをしてみる。すると返ってきた答えは『神鳥の止まり木』と呼ばれるところだそうだ。
「場所を地図でいうと・・・ほら、こいつがそうだよ」
 村人はそう言って地図上の構造物を指差した。それはこの大陸に上陸したときに不審に思ってた構造物だった。
「早速行ってみる?」
 ゼシカの言葉に俺は空を見上げた。情報を集めていた為に既に昼を過ぎている。
「いや・・・行くなら朝早い方がいいな。今から出発だと夜になる可能性がある。影が消えちまったら捜索できないからな」
 それに暑い・・・いや、熱いし。
「それもそうね。じゃ、宿屋に泊まってって・・・ここ、宿屋あるのかしら?」
「うーん・・・こんな人が寄りつかないような所に宿屋なんてないか」
 仕方ない・・・外で野営か。そう思っていたが、村人曰く長老の家に泊めてもらえと言う。
 再び長老の家に行き、事情を話すと(影を追うことは伏せておいて、あくまで一夜の宿を借りる名目でだ)快く部屋を提供してくれた。
 敷布だけが敷いてある部屋だったが、思ったより風通しも良く、外で眠るよりは遙かに快適だった。