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るいざき
2024-09-06 01:04:29
13937文字
Public
AC6_ラス6_銀環
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曙光 解√ラス6♀
⚠️小物ボスが好きだ
1
2
3
4
壁上にて。
市街地戦はルビコンの二対から成る指揮官により群れに制される。次なるは壁内、勢いそのままに侵入するも、隔壁操作により戦力の分断が起きる。
『そこまでですよ、ルビコニアンの皆様』
気色悪い男の引き笑いと共にLC部隊が展開された。すかさず狙われるのはMTの軽装部隊で、半数以上が屠られる。練度の低いACパイロットから補足され、二機以上に退路を阻まれすり潰される。
「恐れるな!壁際へ押し付けろ!」
リトル・ツィイーの威勢に、静かなる六文銭の武勇に絶望に染まりかけた戦士が奮い立つ。散り散りのあぶくは再び大波となって集う。
「! 帥父!!」
黙々と応戦する軍師に躍り出るHCの鋒が降る。だが身重な一等星はこれを躱し、一手先んじて怯ませるとコーラルジェネレータの爆風を浴びせた。
『これが──戦線の
……
ッ』
「路を、開けてもらおう」
アストヒクの一蹴に弾かれるまま宙空へ舞う新型機だが、これを六文銭の爆導索が追う。逃げる先にはツィイーの『置いた』爆薬が迫る。
思うよりも減らぬ威勢戦力に敵の焦りが見られる。帥叔は帥父へ示し合わせると一喝。「ルビコニアンよ!!進め!!我らが怒りと共に火を放てェ!!」
猿叫、号令、思想も主義も共に退かぬ。
「灰被りて、我ら、あり!!」
群れは分断を食い破る。戦況報告、『壁』内部制圧に向けた再編成が目まぐるしく行われ、アストヒク及びユエユー、随伴するラマーガイアー二機が壁上へ昇る。
『しぶといですね、家屋に蔓延る害虫のようで、不快だ。
……
すべて、駆逐しなくては』
拡張され砲台をも増設された、ルビコンの要衝その天辺、HC二機と共に飛来する特務機体エクドロモイ、そして唸りを上げるは元政務官ジェイミー搭乗、カタフラクト。
先んじて危ういのは後方支援に向くユエユーだった。右腕部破損、回避行動を庇うラマーガイアーはエクドロモイの歯牙にかかり大破。カタフラクトが追い討ちに轢き殺しにかかり、パイロットごと鷲の残骸は壁外へ押し出された。
……
歪んだ断末魔がノイズともに霧散する。
HC一機撃破、代価としてもう一機のラマーガイアーも機体制御不能となり離脱。息付く間もなくアストヒクはアサルトブーストを噴いてユエユーの間近へ滑り込むと、再び槍を構えたエクドロモイへブレードを振り抜き追い払う。
「申し訳ありません、帥父
……
ッ!」
「無理をするな、生きる事を考えるのだ」
生きる事を、鼻で笑う者共はその前向きな意思すら踏み潰すように、履帯が差し迫り二機ごと隔壁へ押し付けた。
「ぐぉっ!」
「帥父!退避、を
……
ぁあ!!」
『そのまま圧死なさい、幅を取られると困りますので』
制御儘ならぬまま、アストヒクはランセツを撃ち放つ。だが角度をつけた履帯に弾かれ、虚しく火花を散らすだけだった。カタフラクトの背後に今か今かと槍に剣にエネルギーを溜める悪鬼二体。抗う術は見つからない。増援を求めるべきだと、通信スイッチへ手を伸ばした。
──途端、突如として取り巻きが姿を消した。
「?!」
『何を余所見しているのです、帥父ドルマヤン』
ギャリリッと更に履帯の回転を強めるカタフラクト。だが次の瞬間にその巨躯が縦揺れを起こしてスリップして行く。
『ガァアアア!!何
……
何だ一体?!』
「そこまでだ元政務官。その二人を離して貰おうか」
レーザースライサーを格納する、夜鴉の流麗なる一機。口枷なきスティールヘイズはその背に一対熾天使の炎を背負って壁上に立つ。
『ああ、ラスティ!ははは、相変わらずザイレムの英雄殿は現れ方も情熱的だ。──ああ、同胞殺しの餓狼と言う方が良かったですかな、帥父』
「
……
どう思う、灰狼よ」
「帥父のあだ名の方が好みかな、今回ばかりはね」
旋回、スティールヘイズに食ってかかるカタフラクトだったが。彼は再び姿を消した。
『?!なんだ、どうなって──』
「視野も狭そうな機体だ。
前にしか居ない
のに
何故見逃すんだ
?」
眼前には再び翠眼のナハトが迫る。異様な速度で着弾するサンプ及びランセツの弾丸はあれよあれよという間に衝撃値を折り重ね神経接続の安全圏を越え、ほっそりとした夜鴉の蹴爪に容易く機体を吹き飛ばされた。
「実戦は初めてか、ジェイミー」
『貴、様
……
!愚弄する気か!!──アアアア!!』
鳴く男、亜音速で迫る光刃に為す術も無く。そして彼は目を見張る。熾天使の羽が、──コーラルビットの照準がこちらを向いている。
「は
……
っ?!」
センサーアイをスティールヘイズから逸らしその姿を探る。
それ
はそこに居るはずだ。
『──ッ、
……
!』
ようやく敵性反応を告げるアラートがHUDに表示された。特務機体、HCだったモノの首を手に、白亜の機体は赤き翼と共に静かに舞い降りた。
『なぜ、だ
……
!何故アイビスが味方では無いッッッ?!』
「それは
彼女たち
女神
に聞くんだな。──もっとも、貴方のような男とデートなど
……
私すら御免被るが」
残骸を放り捨て、彼女は逆毛でも立てるようにコーラルビットを振り翳す。
──ラスティ、
命令
オーダー
を。
「
……
。」
──このままでは、わたしはただの怒り狂う獣になってしまう。
荒れ狂う炎を背に輝かせながらも、彼女はただ静かに囁く。ただの記号に悲愴なる苦しみが滲む。──そこに寄り添えるならば、私は選ぶだろう。
「カタフラクトを撃破せよ。
……
元政務官ジェイミーによる背徳に、鉄槌を」
──承認いたしました、
ラスティ
マイ・ハンドラー
。
総ての殺意が向く。
『や、やめ──』
ビットが機体を串刺し地に縫い付けると、極限まで出力を高める赤は虹を孕む。鳥、だ。火の鳥が身を翻し、戦車の背を穿いた。機体が浮く、武装が粉々に舞う。ひらりと羽撃く間に逃げを打つコアにラスティのバースト一射、落ちるように行動不能となった中心へ、女神が君臨する。
──。
短時間のコーラル曝露。男の眼前に、灰銀の万華鏡。幾重にも連なる透明の眼差し。
──
……
きらい。
八咫烏の爪が首筋を穿つ。
敵旗落ちる市街地、ルビコニアンは壁内を治め今一度外へ出る。灰と雪ばかりの街には炎と黒煙が燻る。だがその頭上に、霞む夜明けと比翼を見た。
『──諸君、我々は壁を取り戻した。我々は、確かに明日への路を取り戻したのだ!』
帥叔の宣言にルビコニアンは勝利を喫し歓声を上げる。祝うようにして、鋼色の一羽は白鴉を愛でるように踊る。
──やがて冬の深い蒼を曙光に染めあげながら、鳥たちはどこかへと飛び去っていった。
***
やがて厳しい冬が訪れる。不活性コーラルを交えた猛吹雪がベリウスに吹き渡り、あらゆる機器類の目は塞がれる。閉ざされた環境は今しばらくは封鎖を目論む空の目からルビコニアンを守る揺籃となるが、同時に飢えた人々を永遠の眠りへ就かせる柩ともなるだろう。
凍てつく世界、その一角。平時よりも電気工具やら土方の掛け声やらでなんだか賑やかな医療棟の一室で、ほんわりと彼女は目覚めた。
「──、
……
?」
「!」
《レイヴン、目が覚めましたか
……
?》
「
……
、」
よろ、と宙を彷徨う左手を、ラスティが取る。微かに指先へ力をこめて、戦友は応える様だった。
「
……
ラスティ、エア
……
」
《ああ
……
よかった
……
!》
「ドクを呼んでくる、もう暫く起きていてくれ、レイヴン」
そっとベッドへと点滴が繋がる手を下ろして、ラスティは立ち上がる。と、なんだか熱心な視線を向けられるので、ラスティは金眼を瞬かせて彼女を見た。
「
……
なかよし?」
まだ視界の定まらない彼女は、それでも何となく困惑したように二人を見比べている。ええと、と返答に困るエア、ラスティも眉尻を下げて苦笑した。
「色んな事があったんだ。君にも話そう」
ひらりと手を振り、彼は退室する。いろんなこと、ぽつりと唇を動かす彼女の頬に、暖かな質感が降ってきた。それはひとつ、ふたつ。
「
……
シエル」
《良かった、応じてくれたのですね》
──おともだち、目覚め。うれしいよ。おぼえてる?
「覚えていますよ、シエル」
はじめて会った時のような少女姿では無い、白い螢のようなものがそこに浮かぶ。
──名前、ありがとう。レイヴン。
「
……
きにいってくれましたか?」
──大好き。シエルが空なら、ナガイ、一緒にいる。
「?」
《名前の意味を調べたのです。そうしたらもう、誰にでも自己紹介をしているみたいで》
ふふ、と三人微笑んで。名残惜しそうに螢は部屋の隅に舞う。
──みんなと、しごと。またね。
「
……
ばいばい、シエル」
飛び去る螢、レースカーテンにより淡く発光する窓の向こうは、厳しく吹雪く空がある。そこに愛しい幻影は見えない。
「
……
。」
《
……
レイヴン、その、》
「?」
《
……
、》
「なあに
……
?」
《なんでも、ありません
……
。いえ、まず言うべき事がありますね。無事に目覚められて良かったです、レイヴン》
「
……
ありがとう、エア。あなたが助けてくれたから。」
《いえ、結局あなたを本当に救ったのは
……
あの人です》
一瞬よぎる、羨望の渦。だがいまの慶びにその影は必要ないのだと、手を拱く翳りから逃れるようにレイヴンの手元へ波形を寄せる。
《生きて、ください
……
》
「
……
? なにか言った?」
《いいえ。ねえ、レイヴン》
ころ、と寝返り。まるで幼い頃からのぬいぐるみを抱くように、手のひらを抱きしめる彼女に寄り添う。
《貴女は、人とコーラルがともに生きる未来を、その可能性を守ってくれた。》
とく、とく、緩やかな鼓動に、取り戻した温度に揺られながら、波形は身を委ねる。
《ウォルターが恐れた「破綻」
……
、それを回避する方法も、きっと見つかる
……
》
再び訪れるかもしれない、離れ離れの凍てついた心地を思い出し──思い描くだけではいけないと、波形はしたたかに鼓動する。
《
……
いいえ、見つけてみせます。レイヴン、ラスティ、私の友人が生きる未来を、私は見出してみせます》
──だから、どうか。
「
……
エア」
《はい、なんでしょうか、レイ──》
きゅう、と。より強く抱きしめられ。形なき身体から、どこにあるかも分からぬ瞼から、暖かなものが溢れる心地がした。
「あなたがいて良かった」
そのあたたかな言葉と裏腹に、どこまでも、どこまでも遠くに封じられたこころを感じる。
どれほどの言葉を尽くしても埋められない傷が、ぽっかりと開いた虚ろが、確かにそこにある。それでも彼女は、姿なき友を抱きしめてくれる。
なんて、たよりない。
《私も
……
貴女がいてくれて、良かった
……
》
無為と分かっても、いずれその虚が埋まる事を祈るしか、できなかった。
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