河童の皿箱
2024-07-13 10:15:40
4000文字
Public 遊戯王:短め(2024年度)
 

輪廻

ライズハートがP.U.N.K.を戦力として攫ってくるだけ。


 その男は、己が内にて煮えたぎる、業火の如き憤怒に身を任せていた。世界へ産まれおちたその瞬間から、『自らこそは偽物である』という自意識が常に付きまとっていた。故に、男は怒った。自らこそは本物であるはずだ、その証明をしなくてはならない、と。
 男はその手でいくつもの機械兵を、侵略のための道具を作り出した。尖兵たる大狼、右腕たる駿馬、猛々しき鬼人を。けれど、それだけでは戦力は足りない。その時のために、そうだ、その時のために、もっと備えなくてはならない。男は駿馬に命じた。戦力となるものをここへ連れてこい、と。

 駿馬は従順であった。尖兵を引きつれた駿馬は世界を飛び越えて、とある5人を連れてきた。5人は何の抵抗もせず、自らの所持品を差し出し、男が檻まで連れていけば、自ら檻に入っていった。……随分と物分かりが良いじゃないか。男が囚人に問いかければ、そりゃあそうだろ、なあ。と、互いに顔を見合わせて笑うばかり。どうにも不気味な連中だ。男は駿馬に問いかけた。本当にこいつらは役に立つのか、と。駿馬は答えた。はい、必ず。その答えに食い掛った囚人は、また笑った。俺たちは集団で戦うのも強いけど、もっと役に立つほうほうだってあるんだぜ、将軍サマ。でもそのためにはまず、一旦俺たちの商売道具を返してほしいんだが……どうかな。男はしばらく考え込んだ後、檻の中へと道具を投げ返した。
 すると、囚人たちは各々の道具を手に取った。もっとも体格の良い囚人は、浮世絵師は筆を執り、空間にいくつもの建造物を描き始めた。次に、隅で様子を窺っていた黒服の囚人が、人形師が、浮世絵師から筆を受け取ってはその建造物の設計図を描き始める。その後ろで背の高い囚人が、雅楽師が楽器を愉快に掻き鳴らし、小さな囚人たちが、ふたりの能楽師が、ひらぁりひらりと舞い踊る。
 檻の中に作り出された世界は、男が作り上げた世界とよく似ていた。けれど、男にとっては知らない、たくさんの開発物に満たされていた。男はすぐに指示を出し、尖兵や駿馬たちはそれらの設計図を写し続ける。完成した設計図に男が目を通せば、どれも理論が成立している。しかも、自分たちの技術でも実現可能で、そしてなにより、有用だ。
 な、言っただろ? 俺たちは芸術家だってな。檻の中の浮世絵師は笑う。そして、続けた。いつか来るその時には、俺たちはアンタの隣に立って、戦うからな。