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めぐみ
2024-06-25 20:24:59
28027文字
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HERO/HEROINE(轟百)
支部で3話にわけたやつ
今読むと恥ずかしい
3年生なふたり
1
2
3
4
◇
結局そのまま2人は敵と遭遇することもなく、エンデヴァーの元に戻ったときには敵は全て拘束されていた。来る途中に通報していた警察が駆けつけ、敵を引き渡し、聴取から解放される頃にはすっかり夜も更けていた。エンデヴァーは事後処理があると言ってそのまま相棒たちと事務所へ戻っていった。
「クシュンッ」
「大丈夫か」
「ええ、平気ですわ。もうこの時間だと随分寒いですわね」
八百万の小さなくしゃみが静かな夜に響く。ふたり並んで、帰途につく。辺りには人通りもなくて、月だけがふたりを見ていた。
轟は八百万のほうをちらりと盗み見る。彼女は腕をさすって寒そうにしているようだった。
「ん」
「え?」
「これ着とけ」
自分が着ていた上着を八百万に手渡す。多少の温度調節はヒーローコスチュームがなくとも個性で出来るため、なんとでもなるのだ。
「いや、でもそれでは轟さんが風邪をひいてしまわれますわ」
「俺は平気だから。ん」
実際、轟は風邪などひかない質であるし、八百万に風邪をひかれることのほうが嫌だと感じたので少々強引に渡してみる。
「
……
ありがとうございます」
八百万は少し赤らんだ笑顔で礼を告げた。既視感のある表情に轟はいたたまれなくなる。
今日は随分と長い1日だった。映画を見て実家で夕食を食べ敵退治‥ここまですべて午後からの出来事である。
体力的には問題なくとも、轟は精神的に疲れきっていた。普段考えないことを考えるとどうも疲れる。
しかしまだ轟にはやらなければならないことがあった。彼女に伝えたいことがある。
「あ、あの、轟さん。そんなに見ないでください。今おかしな格好をしているのは分かっておりますので」
「え?ああ、悪い見てたか。つーか、どこもおかしくないだろ」
いつの間にか考えに耽りながら彼女をじっと見ていたらしい。おかしな点、と言われて改めて八百万の格好を見てみる。確かに今日初めに会ったときから髪型やら靴やらが変わっているし、個性を使用したせいか所々服が破けていたが、おかしいとは思わなかった。
「いえ。でも、髪も服もぐちゃぐちゃですので」
「頑張った証拠だろ。おかしかねーよ。色々あったけど結局敵も摘発できたし、他の被害者も見つかりそうらしいし」
「
…
ありがとうございます。でも、結果論ですわ。本当に危ないところでした」
「本当、あんま無茶すんじゃねーよ。こっちの身になれ」
心からの言葉だった。今日のことはきっと一生忘れられないと思う。
「すみません。わたし、本当にご迷惑を
…
」
「違う、迷惑なんかじゃねえよ。俺が心配したくてしてんだ」
「も、もう
…………
!!!」
八百万の顔がみるみる朱に染まっていく。その理由なんて、自分にだってもう分かる。
「おい、顔真っ赤だぞ。熱でも出てきたか」
「
…
轟さん、またそのようなことを仰って。わたしの記憶違いでなければ、今日同じようなやりとりをしたはずですわ。発言にはお気をつけなさいませ」
「わかってる。今のはわざとだ」
顔を真っ赤にして怒る八百万に、思わず口元がゆるむ。ああ、これが。この気持ちがそうだと言うのならば。
「わざと?」
「ああ」
「か、からかうのも程々に
…
!」
「聞け、八百万」
「
…
はい」
「今日の告白の返事だけどな、変更はまだ効くか」
「え?」
「...あれから色々考えた。未だにこれが、好きだって気持ちなのかちゃんと分かんねえけど、俺にとってお前は大切な人なんだ。
…
お前に何かあったらって考えただけで気が狂いそうだった。
八百万は俺といたら強くなれるって言ってくれたけどな、それは俺もだ。...ヒーローとしても、人としても、お前が傍にいてくれたら
―
いや、お前がいないと俺は駄目なんだ」
「...
…
」
「俺は、お前が喜ぶようなことをしてやれるとは思えない。いろいろ欠けてることも自覚してる。だけど、八百万のことをずっと守りたいって思う。お前はヒーローで、十分強いことはわかっているし、俺なんかいなくたって大丈夫だと思う。でも、何かあったときに一番に駆けつけたいんだ。今日みたいに、これからも。だから...」
そう言って八百万のほうへ視線を向けると、轟はぎょっとした。八百万の瞳からぼろぼろと大粒の涙がこぼれていたからだ。
「悪ぃ、気に障るようなこと言ったか」
「違います!違いますわ......もう、やっぱり轟さんは轟さんですわね。嬉しくて泣いてるんです」
「嬉しくて?」
「そうです。...わたしだって、あなたがいないと全然駄目なんです。今まであなたがくれたことばにどれほど助けられたか、きっと轟さんはご存知ないでしょう。だけど、そのおかげでわたしはヒーローになれるんです。今日だって、たとえ離れていたって、あなたに助けられました。
ねえ、轟さん。やっぱりあなたのことが大好きです。傍にいさせてくれませんか?」
「
…………
そこは、俺に言わせろよ」
「ふふふ、ごめんなさい。つい」
未だ涙が止まらないまま美しく微笑む彼女を轟はぎゅっと抱きしめた。自分を好きだと泣く彼女がどうしようもなく愛おしかった。細く弱々しい彼女だが、その温もりが腕の中にあるというだけでひどく安心した。
そこでふと轟はあることに思い至った。
「なあ、八百万。もういっこ変更効くか」
「はい?」
「さっき、この気持ちが「好き」だってことなのか分からねえって言ったけど、俺はこの気持ちを”愛してる”って呼ぶんだと思う」
真っ赤な顔で自分を見上げた彼女にひとつ口づけを落とした。
END
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