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めぐみ
2024-06-25 20:24:59
28027文字
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HERO/HEROINE(轟百)
支部で3話にわけたやつ
今読むと恥ずかしい
3年生なふたり
1
2
3
4
3.ふたりのヒーロー
男たちの声が近づいてきて、八百万は思わず身を固くした。複数の足音はすぐ近くで止まった。
ギギ、という扉の音と共に小さな風が八百万の肌をなぞる。
「へえ、こいつが今日言ってた雄英の生徒?」
「はい、八百万百。個性は創造です」
「ああ、見覚えあるな
…
」
3つ、別々の声である。最低でも3人組の男であるらしかった。身分や個性を知られているのは、おそらくかばんに入れた学生証を見られたのであろう。
八百万は少し迷ったが、まだ気を失っている振りをすることにした。もう少し自分の有利なときに攻めに出たい。
「こいつなら良い値が付くんじゃないか?」
「ああ、良い個性で女としても上玉だ。知名度もあるからな」
―
良い値が付く
その言葉で八百万はピンときた。最近あの辺の街では女性や子どもが行方不明になる事件が数件あった。そうした人たちの人身売買が行われているのではないだろうか。
元々敵たちの中で仲介役となるものが存在するのは知られているところだ。より良い個性を手に入れるために子どもを攫って育成したり、あるいは女性と無理に婚姻を結んでいるのかもしれない。
そこまで考え至って、八百万はじわじわと腹が熱くなるのを感じた。怒りでどうにかなりそうだ。人を何だと思っているのか。ヒーローとして絶対にこの者達を捕まえなくてはならない。
事態は深刻である。しかし、自分を売りたいのであれば命の危険はしばらくなさそうだ。八百万はグッと我慢して今にも奴らに向けんとする拳を収めた。
「しかし、最近の高校生は発育いいなあ。売り渡す前に少しくらい楽しませて貰ったっていいんじゃねえか?」
「はは、そりゃそうだ」
下卑た笑い声が響いて、気持ちが悪くなる。彼らの言葉が分からないほどもう子どもではなかった。命の危険はなくとも、それ以外の危険は避けられそうにない。これにはさすがにどうしたものか。
恐怖と焦りで思考が上手く回らない。すぐ取り押さえられるとしても拘束を外し応戦してしまおうか。外したとして、どう攻撃に出ようか。
しかしもう迷う暇もない。
―
やるしかない。そう思って八百万が創造物の構成元素を思い浮かべたのと敵の手が肩に触れたのはほとんど同時であった。
(間に合わない!)
そう思ったとき、ドォンと大きな音がした。
◇
「おい!今の音なんだ!」
「外からか!?表の奴らの様子見に行くぞ、お前はこいつ見張ってろ!」
2人分の足音が遠ざかるのが聞こえる。物音は未だ続いている。この部屋に残った敵は、おそらく1人。
―
今が好機!
すぐさま「創造」をして拘束具を取り払う。両手から腕輪型のチェーンソーのようなものを創造して一気に創造して断ち切った。目隠しも顔から創造して外してしまう。同時に多くの物を素早く創造するのは、雄英に入ってから伸ばしてきたことのひとつだ。
明るさに馴れない目が少し眩んだが、それをものともせず驚いた様子の男の腹を素早く殴る。
「ぐっ
…
!おま、どうやって
…
!」
「私の名前も個性も知っていたのに、甘く見すぎですわ」
間髪を入れず手刀を入れ気絶させる。暫く目覚めないだろうが、念のため拘束しておいた。
ふう、と息をついて八百万は辺りをぐるりと見渡した。捉えられていたのは6畳ほどの小さな部屋で、ほかの男達が出ていったのであろう扉以外に脱出経路となりそうな場所はなかった。
応援を呼ぼうと、八百万は通信機を創造して警察へSOS信号を送る。ゆっくり通話している暇はないので信号のみだが、これでひとまずは安心だろう。ただ、このままここに留まることは避けなければならない。見つかって人質になってしまえば救出に来てくれるであろうヒーロー達の足手まといになることは必須である。この建物から脱出するか、どこかに身を隠さねばならない。
万が一に備え使い慣れた棒状の武器を創造しておく。より殺傷能力の高い武器も創れるが、学生という身分上一線を超えてはならない。
八百万はこの後のことを思ってひとつ息を吐き出した。敵と遭遇した場合、戦闘は避けられない。自分は個人で戦うのを非常に不得手としている。今のように出来ないことは無い。ただ、創り出すのに時間がかかるものもあるから、ペアかチームで共闘する方が得意としていた。
ふと、今日の轟との会話が思い出された。あのとき、丁度こんな話をした筈だ。
そう、それこそ彼のような時間を稼ぐのも上手い戦闘タイプ。今まで自分たちは何度も共闘してきた。彼と共に戦うならば、どんな敵にも負けない自信があるのに
――
そこまで考えて八百万は思考を停止させた。
いけない。自分は数刻前にフられたばかりである。これ以上轟に迷惑をかけられないのに、自分は何を考えているのだろうか。それに、自分とて間もなくヒーローとなるもの。他人に頼ってばかりでいてはならない。
気合いを入れ直そう。八百万はヘアゴムを創造していつものように一つに結い上げた。これは八百万のジンクスのようなものである。ぎゅっと引っ張りキツく縛ることで背筋が伸び、気持ちが切れ替わるように感じるのだ。
開け放たれたままの扉から恐る恐る顔を覗かせて周囲を確認する。外は暗く長い廊下が続いているようだ。廊下にはいくつか扉があるのみだ。廊下の長さから言って建物の規模は八百万の実家と同じくらいか、少し小さいくらいだろう。先ほど出て行った2人の姿はなかった。
すうっと一つ息を吸って八百万は駆け出した。
◇
決して見つからぬよう、足音を殺して走る。履いてきたパンプスは音を立てやすいから、運動靴を創造して履き替えてしまった。窓一つなく、照明の数も少ないため怪しい雰囲気を醸し出している。先ほどの轟音以降、物騒な音は絶えず鳴り響いている。上階から足音も多く聞こえてくるし、もしかしたらここは地下なのかもしれない。
自分のいるフロアをぐるりと回ってみたところ、昇り階段がひとつ、そしてそこに見張りが2人発見された。それ以外に脱出経路や人はいなさそうだ。廊下にあった扉を開けることはしなかったが、中から物音ひとつしなかったためおそらく誰もいないだろう。
敵はどうやら上に集中しており、このフロアに見張り以外に人がいないのであれば捕まっていた部屋に戻るのも悪くないかもしれない。上で何が起きているか分からない状況の中で、自分は何をすべきだろうか。考えあぐねながら八百万は走る。
この分だと下手に上の階へ移動するよりもこのフロアでやり過ごしたほうが良いかもしれない
―
或いは、もう少しこの建物を調査してみるか。
この部屋には八百万が捕らえられていた部屋の他に、4つ扉があった。敵の話を思い出す。そう、奴らの目的は人身売買である。ならば、八百万以外にも捕らえられた人がいるかもしれない。そうでなくとも、彼らの取引先の手がかりになるような証拠が見つかるかもしれない。
よし、と心を決めてひとつの扉の前へと移動する。中の様子を探るべく盗聴器など必要な物を創造した。
扉の中を調べてみると、物音ひとつせず、その他のデータも生体反応を示さなかった。被害者も敵もいないということだろう。
八百万はもう1度周囲を確認すると、ドアノブに手をかけた。
◇
意外なことに、部屋には鍵がかかっていなかった。立ち入った部屋は6畳ほどの部屋で、書類やらおそらく拘束器具やらが散らばっている。それから、部屋の奥に金庫がひとつ。
(物置部屋、といったところかしら)
机の上に広げられた地図にはいくつかバツ印が記されている。八百万が連れ去られたあたりも含まれているから、おそらく彼らの"仕事場”を示しているのだろう。
その他、女性や子どもの写真が載った紙が数枚。年齢、体型など様々な情報が記されている。これが彼らの拐った人々だろう。万一のために小型カメラを創造して、写真に納める。
他になにかめぼしいものはないだろうか。もっと具体的な、彼らが人身売買をしていることを示すような証拠が見つかれば良いのだが
―
。
「見張りの奴はどうした?全く、お嬢さんのくせにやってくれるなあ」
突然の背後からの声に、思わず肩が揺れた。
「
……
お生憎さま。デビュー前といえどもヒーローを甘く見ないでください」
ゆっくりと振り返って、睨みつける。相手は男3人。覚悟を決める。
「はっ!さすが雄英生ってところか。だが多勢に無勢。腕っぷしじゃ男にゃかなわねーぞ!」
1番近くにいた男が自分のほうへ襲い掛かってくる。素早く武器を構え、間合いに入られる前に相手へ叩き込む。しっかりと気絶させたことを確認して、次の敵へと向かっていこうとすると、カカンと音をたてて銃弾のようなものが八百万の進路を阻んだ。
―
射的系! そう判断するとほぼ同時に腕から盾を創造する。
防御しながら一気に距離を詰める。こういったタイプの個性は統計的に近接戦闘に弱い。
走りながら相手を観察すると、どうやら指が銃のようなつくりになっているらしい。
ならば、と八百万は捕縛紐を創造し、投げつける。しっかりと縛り上げて発射口を塞いでしまえばこの手の個性は怖くない。
(拘束術でしたら、3年間最も近いところで見て参りましたので)
思い起こされるのは担任であるイレイザーヘッドの動きだ。
一瞬で縛り、背を取り、蹴りを入れる。
肉弾戦は不得意ではあるが、それなりに対策はしてきている。力はないが、確実に急所に入れれば一般的な体格の男ぐらいならのすことが出来る。トップヒーローを目指す者として、そして八百万の矜持として、「前線で戦えません」なんて言うことは許しがたかったからだ。
いける。そう思って次の敵は、と振り返ろうとしたときだった。
「いッ」
八百万の髪が後ろに強く引かれ、虚を突かれたすきに両腕を後ろに取られる。
「えらく便利な個性だが、ゲームオーバーだ」
最後の敵だった。相手の個性も分からない。だがここで引くわけにもいかず、何か創造しようと考える。
「はあ、全く。あんまり暴れてくれちゃあ困るねお嬢さん」
「
……
」
何かって、何を?安易に思いつくような強力な武器は、手元を誤れば敵も大怪我では済まない。
自分はヒーローの卵である。そのような思い切った行為をとるべきか。
それとも時間を稼いで先ほど通報した警察やヒーローの助けを待つべきか。
ぐるぐると考えがまとまらない。迷っている場合ではないのは百も承知だが、次に自分が何をするのがベストなのか八百万はすっかり迷ってしまっていた。
「おおっと大人しくしとけよ。個性はナシだ。なに、今すぐとって食ったりしねえよ」
グイッと乱暴に腕を後ろに引かれ、痛みに顔を歪める。
「じゃあ
…
、どうするって言うんですか?」
「大人しくついてきてくれりゃあ悪いようにはしねえよ。俺らが逃げ切るまで黙って人質やってくれりゃあそれでいい。その先も、まあ命の保障はしてやるよ。
全く、どこから情報が漏れたのかヒーローのお出ましだ。表の扉派手にぶっぱなしてくれちゃってさあ。」
八百万の予想は的中していたようだ。外からの物音はヒーロー達のものらしい。
そのまま腕を引かれ八百万と男は部屋の外へ出た。
「やめ
…
!..大人しく今出頭したほうが身のためですわよ!」
「馬鹿だなあ、お嬢さん。そんなこと言われて止まる敵がいると思うか?」
「
…
あなただって、分かっているはずです。もう逃げ切れる可能性は限りなくゼロに近い」
話しながら、有効な武器を考える。何か、あるはず。隙を作り出し、この体勢から逃れられる何かが。
「だからお前を連れていくことで少しでも可能性上げてんだよ。ヒーローたるもの、一般市民の保護最優先ってなあ!」
ああ、もう!こんなときに彼の顔なんて思い浮かばないでほしい。ヒーローでしょう、私は。
しかし、そうだ。あれなら。
「あなたが人質に使おうとしているわたしもヒーローであること、忘れないでくださるかしら?」
できた!目当てのものを作り上げるとともに、啖呵を切った。創り上げたのは閃光弾と長い棒状の得物。
閃光弾は、べつにそれでなくとも一瞬の隙を作れればそれで足りた。ただ、この時の八百万の頭に浮かんだのは、いちばんここに来て欲しくて、来て欲しくない彼の顔であり、そして、思い起こされたのは彼が自分に自信をくれたあの日のことだった。
創造とともにそれは開き、カッと眩く光った。
「っ! てめぇ、やりやがったな!」
あまりの眩さに、敵が腕で顔を覆う。その隙に八百万はするりと抜け出し、続けて攻撃しようとした、そのとき。
ばきり、と音を立てて創造したばかりの得物は壊れた。
相手を見やると、左手で目を押さえつつも、もう片方の手は八百万の武器をしっかりと
―
折れてしまうほどに
―
掴んでいた。
くそう、と心の中だけで愚痴る。おそらく、シンプルな増強系か。自分の最も苦手とするタイプであるが、ここで引くわけにはいかない。
増強系を倒す有効策は、急所をつくか、それを上回る力で封じるかである。
更なる攻撃を加えるために、先程作った武器よりさらに強固な構成元素を思い浮かべる。
相手は既にこちらへ拳を挙げて向かってきている。行動不能になりさえしなければ多少掠ったっていい。最終的に奴を倒せさえすれば。
八百万が来るであろう攻撃に身構えたそのとき、ピキキッという音と共に凍てつく空気が流れ込んだ。
「
…
とど、ろきさん
…
?」
この個性は、まさか。八百万は思わず頭に浮かんだその人の名を口にした。どうしてここに。今日、いや、今日以外もずっと、八百万が想い続けている人物だ。
「てめぇ、そいつから離れろ」
敵の足元だけ凍らせていた範囲を広げていく。足の力が抜けて、八百万はその場に崩れ落ちた。一瞬呆けて敵が氷結されていく様子を眺めていた八百万だが、全身を固めてしまおうとする轟を見てはっと我に返った。
「と、轟さん!それ以上はいけませんわ!この人の命に関わります!」
「黙ってろ、八百万。俺はこいつを許せねえ」
そのときの轟は八百万が今まで見たことのないほどに激昂していた。目はギラギラと輝き、八百万を映さない。このままでは、まずい。
「轟さん!!!止めてください!!」
八百万は無我夢中で轟に駆け寄って抱き締めた。半ば突進したと言っても良い程の勢いだった。轟は突然の衝撃に驚いたのか、それともこのままだと八百万を巻き込むからか、個性を一瞬止めた。
今のうちだとばかりに八百万は轟に語りかける。
「轟さん、私は大丈夫ですわ。
…
それより、この方の氷結を止めて下さい。これ以上凍らすと、相手の心肺が停止してしまいます。私たちヒーローは、敵の生命を奪うようなことをしてはいけませんわ」
「
…………
おまえは、無事なのか」
「はい。轟さんのお蔭です。大丈夫ですわ」
大丈夫です、と繰り返して丁寧に言ってみせた。無事なのかと問う声は普段の自信に満ち溢れた彼からは想像もつかないほど震えていた。
伝わる轟の体温も個性のせいかひどく冷たい。少しでも私の体温が彼に伝わればいいのに。そう思いながら八百万は轟を抱きしめ続けた。
「
…
わかった」
そう言うと轟は敵に向けていた右手をおろした。八百万はほっとして轟を拘束していた腕を解くと、安心したのかよろりと床にへたり込んでしまった。
「っおい、本当に大丈夫か。怪我は」
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます。
…
轟さん、おひとりですか?」
「
……
クソ親父と来てる。奴と相棒は交戦中だ」
言いづらそうに轟は告げた。確かに外からまだガヤガヤと音が聞こえる。しかし、エンデヴァー氏が来ているのならば、すぐに解決するだろう。
「
…
そうですか。では、私たちも急いでエンデヴァーさんの元へ行ったほうが良いですわね」
「ああ」
なんとも味気ない会話だ、と八百万は思った。もっと何か言うべきことがあるんじゃないか。しかし、何をどう言葉にしたら良いのか分からない。感情が溢れてくる。
それに、悠長に話している時間もない。
仕方がない、今は行かねば、と立たんとしたそのとき、八百万はあることに気が付いた。
「あ」
「どうした」
「すみません
……
どうやら腰が抜けてしまったようで」
立てません、というのはなんとなく言いづらくて言葉にしなかった。まったく力が入らず、そのとき初めて自分の脚が震えていることに気がついた。自分が思っていたよりも、この状況に怯えていたらしい。どうしようか、と轟を見上げると丁度目が合った。ヒーローなのに、情けない。気恥ずかしくなって顔が急速に火照る。
すると、轟の両腕が伸ばされてきた。掴み立たせてくれるのかと八百万も両腕を伸ばす。しかし、その手は掴まれることなく、轟の腕はそのまま彼女の脇へと滑り込んだ。
近い、近すぎる。まるで抱き締められているみたいだ。いや、轟は自分を立たせようとしてくれているだけである。
八百万は先ほど立てなくて感じた気恥しさとはまた別の要因で顔が火照るのを感じた。加えて、心臓もどんどんうるさくなっていく。
轟の腕に力が込められて、八百万も慌てて轟の背中へ腕をまわす。一瞬ぐっと持ち上げられる。
が、轟は何を思ったのかそれをやめて降ろし、彼女の肩口に顔を寄せた。
「と、轟さん!?どうしましたか」
「
…
少しだけ」
そう言って轟は八百万に頬をすり寄せた。どくどくとうるさい鼓動が轟にも伝わってしまうのではないかと八百万は心配になった。しかし、彼女も轟と同じ気持ちであった。
少しだけ、このままでいたい。まだ屋内に敵がいるかもしれないという状況を考えればそんな暇はないことはお互いに分かっているが、今この少しの間だけこうして2人身を寄せ合うことを許して欲しい。
「
……
無事で良かった」
ぎゅう、と強く抱き締める力は少し苦しい程であったが、八百万はそれにひどく安心した。
もう無事なのだと、轟が来てくれたと実感出来たからだ。あれほど来て欲しいような、来て欲しくないようなと思案していたわけだが、やっぱり八百万は彼に来て欲しかったのだ。
「来てくれて、ありがとうございます。轟さんはわたしのヒーローですわ」
八百万も少し腕に力を込めて答えた。心からの言葉だった。
轟はいつだって八百万を救い上げてくれる。期末試験のあのときも、今も。きっと彼は今までの自分のことばや行いがどのくらい八百万に響いたか分かっていないだろうし、この場に助けに来てくれたのも彼の正義感故なのだろう。それでも、嬉しかった。
自分一人でどうにかしなければならないと思っていた。彼に来て欲しいとも、来て欲しくないとも思っていた。しかし、轟が自分を助けに来てくれたことが八百万はどうしようもなく嬉しかった。どうしようもなく彼が好きなのだと思った。
今度こそ轟はその腕に力を入れて八百万を立ち上がらせた。脚の震えはいつの間にか消えていた。
「
…
とにかく、ここ切り抜けるぞ。行けるか、八百万」
「はい!参りましょう!」
「ああ」
八百万が立ち上がってぐっと拳を握ってみせると、焦凍はその手を包み込むように握って駆け出した。
「ちょっ、轟さん!?」
「今度いなくなられたら困るからな。ついて来い」
思わず離そうと手を開くと、そのまま指を絡めとられた。今度は八百万もその手を握り返した。
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