MN*B
2024-06-23 02:56:07
11045文字
Public 夏油兄シリーズ:pixivバックアップ
 

虎杖悠仁っていう檻に捕まって出られない原作知識有り夏油傑の兄(死亡済み)だけど、死後が長いんだわ

――夏油傑は生きている。

固定名有り。男主。原作沿い。立場成り代わりもの。
世界(原作)の強制力に抗う系主人公。ただし悪役。

 
 
前話と同じく、なんでもモーマンタイな方向け。ネタバレ含む。

前話【 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21384239
シリーズ【 https://www.pixiv.net/novel/series/12070966
次話【 まだ 】

 
前話までのコメントやスタンプなど、ありがとうございました!


#夢術廻戦 #オリ主 #男主 #夏油傑 #五条悟 #虎杖悠仁 #宿儺(呪術廻戦)
2024年6月3日 01:46


 自らを生贄とした制限の解除。想定 原作通りだ。
 だからなのか、本来口にするはずの台詞を言う前に、本音が口をついて出た。

「やはり、こうなるのもまた宿命か。自らが招き寄せたものとすべきか」
「お前が何を言ってるのか、僕には分かんないよ」

 この状況に反して落ち着いたまま、乙骨憂太は言い返してくる。それにまた空笑いがこぼれた。
 俺も理解を求めていないし、誰も俺を理解することはない。……俺が明かさないから。

 俺は折本里香なんて要らない。なのに負け戦に殉じるのも馬鹿みたいな話だ。
 でも、俺には挑まなければいけない理由があったし、意味もある。大義ですらある……のかもしれない。大義というには身勝手なものだけど。

「某のような半端者相手に死んでくれるなよ、乙骨憂太」

 ついでに「女誑しめ」と憎たらしく言っておく。そうすれば、ほら――

「失礼だな。純愛だよ」
「ならばこちらは大義だ!」

 俺だって、ここで死ぬつもりはない。生き残れるのならそうしたい。その因果を捻じ曲げてやることを目標に生きてきたのだから。
 嗚呼、でも……

「やっぱムリぽ」

 へらっと笑ってしまい、乙骨くんが拍子抜けした顔をした。だってキミ、強いんだもん。
 それを最後に、視界が真っ白に染まった。



 瓦礫の間から這い出ると、身体から破片と埃、血が地面に落ちた。着ている衣服も乱れ、肩口まで伸ばしていた髪がザンバラに散らばる。
 あーあ、もーぐっちゃぐちゃだよ。原作の夏油傑もよくこんな恰好してたもんだ。生きて帰れたらもっとラフな服に俺はするからな! ……なんて。

「乙骨くんの呪いは無事に解けたかなぁ」

 お互いに縛られたままなのも、それはそれで一つの幸せの形をしているのだろう。けれど、チャンスすらないままなのと、機会があった上でもう一度縛られるのは、話が違うだろうから。
 そのためにも、俺はこの負け戦 因果に挑んだ。巻きこんでしまった者達には申し訳ないけど譲れなかった。
 戦力を分散しなければ乙骨憂太に勝てていたのは原作でも示唆されていたのに、俺の目的は勝つことじゃなかったから、試合には負けてしまったわけだ。
 いや、勝負に負けたのか? 結局、因果には負けてしまったんだし。まぁ……それでも構わない。

「これでいい。いいんだ……

 軽くなった左肩を押さえて立ち上がる。姿勢を保てなくて、壁に凭れつつ歩き出す。
 学生だった頃にも歩いた、少しだけ懐かしい道だった。



阿修羅



「おはます。永眠ッ!!」

 俺は口を開くよりもまず、相手に殴りかかっていた。が、呆気なく避けられてしまう。相手は半身を引いて俺の腕を取ろうとしてくるので、その手を肘で打って弾いた。

「貴様、礼儀というものを知らんようだな」
「挨拶したわ、ボケぇ!!」

 暴言を吐き捨てつつ、相手から少し距離を取る。さすがに二度目の奇襲は食らわないか。
 俺からの二度目の奇襲を退けた相手――両面宿儺は俺の暴言も意に介さず、和服姿で腕を組んでいる。

 周囲は虎杖悠仁曰く『地獄』の様相。即ち、宿儺の生得領域内だ。
 指が取り込まれた際には、ここでの主導権が宿儺に傾いてしまうようだった。まったく参っちゃうね。

 俺の持ちコマンドは、奇襲・強襲・みがわり・逃げる、の四択みたいなもので。基本的に搦め手でなんやかんややってなんとか勝つ、みたいな戦法を取っていた。
 俺は一本目の宿儺の指が来た時に現れた宿儺をボコボコにして沈めている。原作の宿儺が伏黒恵にやったように、俺が宿儺の魂を沈めたわけだ。
 そんな俺が初撃をかわされてしまった以上、出来る事と言えば、だいばくはつ くらいのもんである。ただし今の俺には術式も火薬もないから出来やしない。

 山と積まれた頭蓋骨を背景に、お互いとも赤い水面に立っていた。俺は長ったらしい袈裟の袖をさばき、いつでも戦いを再開できる間合いを保つ。
 宿儺は俺のことを羽虫でも見る目で見てくる。その表情からは腹の底が読めない。

「そう殺気立つな。俺もこの現状に対して、どうしたものかと思案しているところだ」
「はえ~」

 嘘くさ。思案してたとしても、それもう終わってるヤツじゃん。自己解決、略して自決……してくんねーかな。
 俺は何かを言い返す気も失せたので、FXで有り金溶かしたようなアホ面を晒しておくことにする。

 こんなところに居る以上、対話も共存も無意味だ。
 肉体の主導権は虎杖悠仁が暫定一位なのだが、その次の座を奪い合い、俺達は殺し合いをせざる得ない。でなければ、相手に踏み躙られるのみだ。

 宿儺は組んでいた二本の腕を解き、やれやれと言わんばかりに両手を広げてみせる。

「指二本でもこの小僧の身体を奪えんとなると、厄介だということくらい察しがつく。その上、“ ここ”での主導権すら握れんとなると面倒にもなる。……分かるか?」
「おれさま、オマエ、丸かじり」
「話にならんな」

 ――来る。

 向けられた指の構えに合わせ、身を逸らす。そのまま前へ踏み出て距離を詰める。キンッと刃が走ったような気配の後に、背後で水飛沫が上がった。術式による斬撃だ。
 原作の宿儺は指二本分の時点で少年院の呪霊に術式と領域を使っている。つまり目の前の宿儺も使える可能性が高いということだ。来ると分かっていれば、この程度の攻撃、まだ避けられる。

 素早く突き出した腕の先で鈍い音が鳴った。

「ほう?」

 宿儺は薄っすらと笑みを浮かべた。その口から血が流れ始める。

……お前、わざとだろ」

 俺の腕は宿儺の腹を貫通したところで止まっている。ジャブ代わりに打った手が通るなんて予想外だ。
 宿儺は何が面白いのか、くつくつと笑う。

「存外、面白くなりそうだ。今は譲ってやる」
「え……『フッ、おもしれー女』的な? 怖。女性向けの対応やめてくんない?」
「お前は何を言っている?」

 呪いの王を困惑させちゃったゃ……
 宿儺は不可解そうな顔から気を取り直すと、下から見下すようにこちらを睨みつけ、鼻で笑ってくる。

「まぁいい。お前が好き勝手できるのも今だけだと心得ておけ。一体どこで音を上げるやら、愉しみだ」
……あっ、これ『ドキドキ♡ 宿儺の指何本飲めるカナ!? 魂の耐久レース!!』だわ!?」
……

 うっわ。コイツと話してたら埒が明かんって顔された。『もっとやって!』って書いた団扇振ってやりてぇ~~~!

「その虚勢がいつまでも持つと思うな」
「言い出したのはソッチだからな、もちろん覚悟は出来てんだろ」
「さっさと去ね」
「ハハハ。また来て刺客〜、っと」

 腕を引き抜きながら穴の開いた胴体を踏みつけ、相手を水面に叩きつける。飛沫を上げて沈み込み、宿儺はそのまま見えなくなった。
 それを合図にして、頭上の骨格も崩れ落ちてくる。積み上げられた骨が崩壊し、水面下に呑まれていく。

 頬に飛んだ血を親指で拭い、振り払う。……はぁ。いつからだったか。障害を排除するのに躊躇しなくなったのは。

 領域 周囲が塗り替わる。
 高く青い空に入道雲が浮かび、日が差したまま通り雨が降った。それを ひさしのある縁側から眺める。
 天井から下げているガラス飾りが光を受けて、座敷の畳に虹色を乱反射させていた。

 ……さて、これからどうすべきか。



 徳を積み過ぎた俺のボーナスステージだとしても、これはちょっと長すぎる。ほとんど自由もないし、できることが限られてる。
 売り言葉に買い言葉で宿儺に啖呵を切ったは良いものの、全くもって見通しが立たない。
 将棋倒しのように連なった呪いの運命だ。これも結び目を一個一個解いていかないといけないらしい。いくつあんだよ、それこそ呪うぞ。
 良い点としてあげるなら、宿儺からのネチネチ小言が虎杖に聞こえなくなることかもなー。代わりに俺がうるさくするけどね。

 ……あれやこれやと思考をまとめていく内に、残業気分になってきた。やらなきゃいけない確認が多くてゲンナリする。

 最良の結果で死んだつもりだったのに、これはどういう思し召しなんだ。俺が因果を好き勝手にイジくり回そうとしたから? それとも別の何か、天元か? いやアイツは うつつに干渉しないのは身をもって知ってるだろ。
 どちらにせよ、何の干渉の影響なんだ。俺にもパッと出てくるような心当たりはないんだけど……あ。

……ない、とも言い切れないか」

 この世界には存在するはずのない存在 ものが三つある。俺も確かなことは言えないが、おそらくこの考え自体は間違っていない。
 問題は、――鍵となる人物がすでに死人だということだ。それも二十年以上も前に。



三、夏油傑の兄 夏油任