MN*B
2024-06-23 02:47:29
18839文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.29 胡蝶の羽搏き

シリーズ中第46話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

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お待たせしました。

 
「死して赦されるより、此處で生きて」「慾しかった」 これを呪いと呼ばずとして何と呼ぶ。
 

 今回、またオリジナル要素多めです。あとオリ主不在回です。
正直、原作と流れは変わんないのでカットしたって良かった部分はあるんですが、狗巻先輩に少しでも活躍してほしかったので書きました。基本方針、書いてる側が書きたいのを書くだけですので…。
ちなみに、猪野くんも好きです。というか敵含め、心底嫌いってキャラもいないので、敵だろうが出番があれば割と書きます。

 次回、たぶん若干のホラー回になるなと思ってます。個人的に怖いなーって思うだけですが。
二週間後の予定で書きます。以内に書けたらいいんですけど…。

追記:次話についてですが、書き手の筆が進まないので、一週間ほど遅れます。
追記:一週間ほどと言いましたが、無期限で遅れます。
 

追記2024.2.4:簡易領域について(4P)と狗巻のメガホンについて(5P)加筆。メガホンはフツーに忘れてました。


#夢術廻戦 #オリキャラ #虎杖悠仁 #伏黒恵 #狗巻棘 #猪野琢真 #吉野順平 #究極メカ丸
2024年1月22日 21:41



 真人は打ち落とした破片を踏み潰す。

「いやぁ、バレたね」

 五条悟を封印し、そして封印した獄門疆に起こっている現象……安易に動かせない状況であると、呪術師側に知られてしまったことを察する呪霊側の面々。
 五条を取り戻そうと呪術師たちがやって来ることは明白だ。その上で、夏油は今後どうするかを今いる面子に尋ねる。

「私はここに残るけど、みんなはどうする?」

「俺は弟の仇である虎杖悠仁と釘崎野薔薇、青嶺衛を殺す」

「釘崎野薔薇とやらは知らんが、虎杖悠仁はダメだ。宿儺にする。青嶺衛は好きにしろ。奴に関して、儂は期待しとらん」

 青嶺衛の力は宿儺にとっても価値があるのかもしれない。だが、あまりにも不確定な要素だ。本人が呪い側に靡く様子がない以上、呪霊側としては敵として扱うほかない。
 そんな漏瑚の言い分に、真人は自信を持って言い返す。

「青嶺衛は呪い側の存在だ。どれだけ本人から抵抗されても、みんなの賛同が得られなくても、俺の意見は変わらないよ」

「そうかい。私はおすすめしないけどね」

「『おすすめしない』? 素直になりなよ。『嫌い』なんだろ、理由は知らないけどさ」

 口を挟んだ夏油に、真人は試すような視線を投げかける。その魂を見透かす瞳を夏油は見返し、いつも通り意味ありげな視線を投げ返すだけだった。
 そんな二人のやり取りも無視して脹相が意見を通す。

「関係ない。虎杖悠仁も青嶺衛も殺す」

「ァん?」

 脹相は頑なに意思を曲げず、虎杖悠仁の件で漏瑚と意見がぶつかり合う。
 真人はそんな二人の間に入り、宥める。そして悩んでみせた。

「んー……やっぱ俺も虎杖殺したいかな!」

 宿儺を復活させる案を忘れたか!と漏瑚が声を荒げる。だが真人は、今の状況なら呪術師たちと呪霊側はイーブンであり、勝つときは勝つだろうと話す。

「大丈夫、俺たちなら宿儺なんていなくたって勝てるさ」

 だから、虎杖悠仁なんて殺そう。そう言い切る真人に、漏瑚が「本気か?」と訝しげにした。しかし、真人は大真面目 マジだった。
 だが、真人も仲間内で争うつもりはない。呪いの真髄、心意気を語った漏瑚へ、その代わりにゲームをしようと持ちかける。

 それは端的に言えば、早い者勝ちだ。虎杖悠仁のことを利用したい者は利用し、殺したい者は殺す。先に見つけた者が自由にすればいい。
 その提案に、脹相が乗り気になる。漏瑚が苦言を呈するが、真人は無視して勝手に了承した。そして、さらなる遊びを持ちかける。

「ついでにさ、賭けでもしない?」

真人はそう声をかけた。

「『彼』は、『呪い』か『人間』か。どっちに賭ける ベットする?」

「くだらん」
「興味ないな」
「ぶぅ~う」
「どうでもいい」

 各者各様の返事がされるも、それはどれも賭けに乗らない答えだ。そこで夏油が面白半分に名乗りをあげる。

「じゃあ私が賭けようか。『呪い』にね」

「えー! それじゃ賭けになんないじゃん!」

 元々呪い側だと豪語している真人に、たった一人が同じ内容で賭けたところで賭けは成立しない。真人が不満の声をあげるのも当然だった。

「大体、そんなことをしてなんになる。彼奴 あやつが儂らに殺されるか、勝手に肉体が餓死するかくらいの違いであろう」

「意味なんてない。それでいいじゃんか」

 ぶーぶーと、真人は拗ねて唇を尖らせる。そんな真人に対して、夏油が判断を急かす。

「どうするんだい、真人。賭けは中止かな?」

「しょうがないなぁ。俺が『人間』に賭けるよ。そうじゃないと成り立たないし」

 真人は渋々といった感じで話をまとめた。だが、意味深な笑みを浮かべて、夏油のことを見る。

「俺は『彼』のこと、『呪い』だって思ってる。それは変わらないからね」

「私も『人間』だとは思ってるさ、今はね」

 呪いの手に掛かり、人のまま死を迎えるか。はたまた人の ことわりの内で死に、呪いと成り果てるか。

「食えない連中だ」

 成り行きを見守っていた透坂が苛立ったように吐き捨てた。


 真人は漏瑚に向き直り、「まぁでも、殺すのは止めないよ」と笑う。

「漏瑚も好きにしなって。俺だって殺す機会があるならそうするし。漏瑚だって不満なら“彼”のことを殺せばいい」

 一貫性があろうとなかろうと、欲求の赴くままに。それが呪いとしてのあるべき姿だというのが、真人の主張だった。

「夏油はどうする?」

「私は獄門疆を見ておかないといけないから、遠慮させてもらうよ。……好きにするといい、私にとって宿儺は封印失敗時の代案にすぎない」

 漏瑚が「馬鹿馬鹿しい」と首を横に振る。

「虎杖悠仁を含めた術師たちは皆、五条を助けにここへ向かってくる。ならばここで待てばいい」

「そ。じゃ、透坂と一緒にお留守番ね。よーい、ドン!」

 そう言って走りだす真人と、それに続く陀艮に脹相。ついでに脹相は漏瑚に向かって小馬鹿にするような笑みを浮かべてから行った。
 彼らに煽られ、漏瑚も熱気を上げながら走り去っていく。

 そんな呪霊たちを見送った夏油が、つまらなさそうに呟いた。

「呪霊のほうが君たちよりも利口だな」

「返せ」

 人混みの合間から現れたのは、夏油一派の生き残りである、双子の美々子と奈々子だ。彼女らは「これ以上、夏油さまを玩ぶな」と訴え、約束通りの仕事をした自分たちへ肉体を返すよう、“夏油の皮を被った何者か”に求める。

「返すわけないだろう。君たちの頭の中まで空っぽにした覚えはないんだがね」

 “夏油”は嘲笑い、二人の言葉を一蹴する。
 彼女たちは契約を交わしたつもりであったが、それは呪術師間で結ばれる“縛り”ではなかった。故に、“夏油”はただの口約束を果たすつもりはないと、二人の要求を突っぱねたのだ。
 さらに夏油は心底呆れたとばかりに、蔑みながら話を続ける。

「考えの足りない君たちが透坂に接触したせいで、彼も疑いをかけられたんだ。君たちは性別と年齢 自分たちの生まれに感謝したほうがいい。あと、透坂の経歴にもね」

 百鬼夜行が失敗に終わった後日、二人は透坂に接触している。その理由はもちろん、『夏油傑の遺体』についてだ。
 その現場を見てしまった補助監督が上への報告を遅らせたのは、相手が“透坂だったから”だ。

 透坂は出戻った術師といえど、40年足らずの人生の大半を呪術界に貢献してきた。術師をやめてからも窓として活動し、時には立場を駆使して術師への協力を惜しまなかったのだ。
 その彼が殺さなかった、殺せなかった理由 わけを補助監督が汲み取った。祟り場未遂事件がなければ、疑われることも報告されることもなかっただろう。

 透坂は黙っていたのにも関わらず会話に巻きこまれ、疲労感を隠さず、疲れ切った声で話し出す。

「本来であれば高専所属の術師として、お前たちを殺すはずだった。そうしなかったのは、面倒だったからだ。……それを補助監督が勝手に勘違いして、上に報告しなかっただけだ」

「透坂だって夏油さまに協力してたくせに」

「裏切り者め」

 理解しようとしない少女たちは糾弾を続けた。話が通じない相手に透坂は青息吐息を吐く。

「私は彼を見逃し、情報提供もした。だがそれも、彼が死ぬまでの間だけだ。お前たちに協力する理由はないどころか、お前たちを殺したって私は構わなかった」

 透坂は夏油傑の協力者だった。だが、その思想に感化されたからではない。……透坂の妻子は非術師だった。

「分かったら諦めろ。どうせコイツも飽きたら捨てる。お前らと同じようにな」

……お前らのこと、絶対に許さない」

「後悔させてやる」

 二人は捨て台詞を吐くと、人混みの中へと下がり、その姿を消した。
 夏油は面白がる様子を隠さず、獄門疆の前に座りこむ。

「後悔か。さて、どんな味だったかな」

「すでに後悔しそうだ」

 透坂は皮肉を言った。そんな彼に夏油が視線を向け、「飽きたら捨てる、ね」と話を掘り返す。

「私のことをそんなふうに思ってたのか。心外だよ」

「要らなければ捨てる。それは彼女たちのような術師だけでなく、私や呪霊共に関しても同じだろう。協力関係とは名ばかりだ」

「私はこう見えても君のことを買っているんだよ。そうじゃなきゃ手元に置かない」

 透坂は「どうだかな」と言い返し、響いた様子を全く見せなかった。

「君の術式と術式解釈は興味深いんだ。いずれ因果にも届くかもしれない。もっと早く生まれていれば、私も少しは楽できたかもね」

「この世界は才能が8割で、私ではそれに届かないことなど身をもって知っている。それに……私にだってもう遅い」

 夏油は肩をすくめ、「何事も始めるに遅いことはないさ」と思ったが、結局口には出さなかった。
 運命は不可逆だ。損なわれた命は戻って来ないことを思えば、そう言うのは酷な話だった。


 透坂は自身の限界を理解しているが故に、下準備を怠らない。それが祟り、死にぞこなっているのは皮肉なのだろう。
 一度術師の道を逸れてから身に纏い始め、別の道から出戻り、さらに道を外れた今でも身に着け続けているのは、習慣の名残か未練か。

 透坂は元警察官だ。その警察官時代から慣れ親しんだ装備……防刃ベストによって、獣鉤手からの攻撃を紙一重で生き残っている。