MN*B
2024-06-21 01:43:57
6212文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

誕生日

この小説は【蠱毒な夢術廻戦】シリーズの番外編です。

まだお互いだけだとそんなに仲良くなくて、ちょっと余所余所しい頃の釘崎と青嶺の話です。
虎杖と伏黒がなんとなく間に入ってて、お互いが両端にいるみたいな関係。
青嶺―伏黒―虎杖―釘崎…みたいな。
この頃すでに虎杖がいないので抜いた状態じゃありますが。伏黒がいなくとも、大体先輩らが一緒にいる頃ですね。

釘崎の誕生日当日に上げようかとも思いましたが、あえてやめました。
ほかの短編と合わせてあげようかと考えていたんですけど、文字数がそこそこいったんで単体であげることに…。
それで今になって投稿というわけです。

『E.7 破鏡』の台詞回収話でもありました。本編内でも触れる日は必ず来ますが…ちょっと遠いですね。

表紙は、かんたん表紙メーカーさんからお借りしました。



#オリ主 #夢術廻戦 #釘崎野薔薇
2021年8月21日 01:24



 それからも、いくつかの店舗を回り、釘崎の買い物に付き合った。
突発的な買い物だったにも関わらず、有り余る購買欲で動く釘崎に、俺は着いて行くので精一杯だ。
そしていつの間にか俺の両腕は、彼女の買い物袋ばかりで埋まっているのだった。

「あー買った買った!」

外に出て、満足げな笑顔を浮かべる釘崎。
俺は辺りを見渡し、街中にある時計を見た。
だいぶ買い物をして回っていたから、いい時間になりつつある。もうそろそろ帰ったほうがいいだろう。
そう考えながら、俺は彼女のほうを確認する。

良かったか?」

「ん~、まぁまぁね。そもそも午前中が呪霊のせいで潰れたのがイヤ」

それはそうか。
元々、それのせいで不機嫌だったわけだし彼女の調子が戻ったことで良しとしよう。
そんな彼女は腰に手を当てて、軽く話す。

「ま、午後でやっとチャラって感じね。アンタは?」

何がだ?」

「はぁ~?こんな美人で可愛いスタイル良しの同級生と出掛けたのに、感想ひとつないワケ?」

自己肯定感が凄まじい
しかし、性格については言及されていないのもあって、概ね当てはまっているから異論はない。
とはいえ、感想……感想?特にこれといって目的があったわけではというか目的があれか。

「釘崎が、最悪じゃなくなったならそれでいい」

あ~っそ……もっと気の利いた言い方しなさい」

なぜか悩むような、間の空いた返事だ。でも俺にはこれ以上、なんとも言えなかった。
なんとなくどこか気まずい雰囲気になる。

帰るか」

そうね」

心持ち言葉少なめで、俺たちは帰路についた。





 帰り道。その道中にて、俺たちは高専へ戻るためのバスを待っていた。
釘崎と並んで立っていると彼女が何気なく話し出す。

「ねぇアンタの誕生日っていつ?」

……なんでだ」

「なんでもよ。何よ、この私が聞いてあげてるのよ」

ツンと刺すような勢いで、主張される。
いつもなら俺がすぐに折れてしまうであろう、そんな彼女の態度だったがそれでも今回に限って、俺は折れる気にはならなかった。

ジト~っとした視線が、俺の横顔に注がれているのがわかる。つい、そちらへ目をやって俺は控えめながらに主張する。

俺、誕生日嫌い」

言い終わった俺は、サッと視線を前に戻す。
言外に、だから答える気はない。ということを伝えたつもりだった。

「知らないわよ、そんなこと。私が祝うのとアンタの気持ち、関係ないから」

強気で言い返される。
それにどうしようもないままそろっと視線だけを彼女に向け、様子を窺う。
腕組みをした彼女は、当然のことのように話す。

「私が祝いたいからそうすんの。アンタは素直に受け取りなさい」


俺はなんとも言えず、だが頷く気にもなれず彼女のことを横目で見たまま黙っていた。
腕組みをした彼女の指先が、こちらを急かすように動いている。そしてそれは、すぐに止まった。

「まどろっこしいわね!!もういいわ!」

そう言い放った釘崎は勢いよく、その手を俺の制服の胸元へ突っ込んだ!?

「アンタが口を割らないなら物に聞くわ!!」

せ、せくはら

「あぁ!?グチグチ言うな!」

その勢いに何も言い返せないまま、胸ポケットをまさぐられる。
両手が買い物袋によって埋まっていることもあって、ろくな抵抗もできず彼女の行動をただ見ているだけだった。


 ジロジロと、奪い取った俺の学生証を眺める釘崎。

「ふーん1月まだちょっと遠いわね」

返すわ。と言いながら、俺の辛うじて空いている指にそれを押しつけていく。
せめて元の場所に戻してくんねぇかなと思いながら、俺もしまい直す前に学生証を眺める。実のところ、動揺を押し隠すので言葉も出なかったが。

発行日とかだと思ってたこれ"青嶺衛"としての誕生日か。
よく見たら年月日の後ろに『生』ってあるし、考えてみれば学生証なら発行日4月くらいになるはずだな
しかし助かったもし本来のものが記載してあれば、近々面倒なことに

そう思った俺のことを、ズイッと覗き込んでくる釘崎。

「何ホッとしてんの?遠くても忘れないわよ、絶対」

その顔を見ながら、俺は口の端を下げた。

なんでそんな頑ななんだ」

「やられたらやり返す主義なの。覚悟しときなさい!」

ビシッと宣言される。
その勢いに押し切られそうになりながら、ぎこちなく言葉を紡ぐ。

……憶えてたら」

「こんくらい覚えとけ!」

ごもっとも。だが、俺の返しは言い訳に過ぎない。
憶えてたら、なんて自分で言っておきながら、酷い返事だと思った。
そんな俺の真意も知らず、彼女は未来の話をする。

「あと、来年の私の誕生日には、ちゃんとプレゼント寄こしなさいよ」

「自分で要求すんのか

「当然でしょ!あ、バスが来たわ」

彼女の言う通り、道の向こうからバスがやってくるのが見える。
バスは緩やかに速度を落とすと、俺たちの目の前に留まった。

絶対だから」

彼女は顔を背けて呟くと、颯爽と歩き出し、バスに乗りこんだ。
俺は黙ったまま、同じように乗り口へ足をかけた。