MN*B
2024-06-21 01:43:57
6212文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

誕生日

この小説は【蠱毒な夢術廻戦】シリーズの番外編です。

まだお互いだけだとそんなに仲良くなくて、ちょっと余所余所しい頃の釘崎と青嶺の話です。
虎杖と伏黒がなんとなく間に入ってて、お互いが両端にいるみたいな関係。
青嶺―伏黒―虎杖―釘崎…みたいな。
この頃すでに虎杖がいないので抜いた状態じゃありますが。伏黒がいなくとも、大体先輩らが一緒にいる頃ですね。

釘崎の誕生日当日に上げようかとも思いましたが、あえてやめました。
ほかの短編と合わせてあげようかと考えていたんですけど、文字数がそこそこいったんで単体であげることに…。
それで今になって投稿というわけです。

『E.7 破鏡』の台詞回収話でもありました。本編内でも触れる日は必ず来ますが…ちょっと遠いですね。

表紙は、かんたん表紙メーカーさんからお借りしました。



#オリ主 #夢術廻戦 #釘崎野薔薇
2021年8月21日 01:24



 8月初旬。
夏らしい青空が広がっている。しかし、ここに漂うのは、それとは正反対とも言える雰囲気。

「あ~っ!!もうっ、最悪ね!!」

任務へ赴くとき、そして終わった直後でも、釘崎はずっとこの調子だ。
そのせいか、視ているこっちが哀れになるような感じで、呪霊がサヨナラしていったばかりだった。

俺は聞いていいものかずっと迷っていたがここまであれなら、聞いたほうがいいタイプのヤツかもしれない。

なぁ、釘崎」

「何よ」


ギロリと、親の仇でも見るような目で見られた。
俺はそれで少し怯んだものの、ひと思いに尋ねる。

「なんでそんな……荒ぶってるんだ?」

「私は荒魂かなんかか!!」

眉を吊り上げて声を荒げた釘崎!
それこそまさに鬼女みたいな感じであるでもそれも言ったら絶対怒られるよな!!
そんでもって、言葉を選んでもダメだった!

俺は慄いて、とっさに目線をうろつかせる。
そんな俺を睨んでいた彼女は、鼻を鳴らすと一足先に歩き出す。うろたえながら俺も、その後を追った。



 呪霊を祓うためにやってきていた場所から、俺たちは歩いて移動する。
前を歩く釘崎の雰囲気が、やはりいつもと違う気がする。さっき怒らせたのはノーカンで。
補助監督さんのとこまで戻る、短い距離だが俺は控えめに声を出した。

「なんか、予定でもいれてたのか?」

今日は突発的に入った任務だった。完全に午前は潰れてしまっている。
何かの予約でも入れていたなら、こんな風にでもなるだろう。

話しかけられた彼女はふと立ち止まった。それに合わせて、俺もその後ろで足を止める。

今日、誕生日」

……それは」

こちらを見ないまま言われたその言葉に、俺はどう反応すればいいのか戸惑った。
そんな俺の態度に苛立ったのか、彼女は肩を怒らせながらこちらを振り返る。

「祝いの言葉くらいパッと言いなさいよ!」

「そ、そうか……おめでとう」

ありがと」

俺の拙い言葉に、彼女は小声で返事をした。
先ほどまでとはまた別の気まずさが募る。
その空気を流すように、釘崎はぎこちなくも話を続けた。

「まぁオシャレして、ショッピングにでも行って、ついでに美味しいものでも食べるかって思ってたの」

重く息を吐いた彼女が、一日の半分がこれなんて最悪ねと呟く。
まぁ祝い事の日に、呪霊なんて視たいもんじゃねぇよな

今度は怒りも失せたようで、どことなく気落ちした様子の釘崎。
そんな彼女のことを窺いながら、俺は尋ねた。

今から行くか?」

任務自体は終わっている。報告なんかはやらなくちゃいけないが、それは補助監督さんに言えばほぼ終了だ。
この辺りで解散して、自由行動でも問題ないはず。

それは彼女も知っているだろう。だがその上で、怪訝そうにこちらを見てくる。

アンタと?」

その返しに、思わず思考が止まる。
……確か、に俺の言い方だと、二人で一緒に行くことを提案しているみたいにも受け取れるな。俺にそんなつもりは一切なかったが。
しかし、一人で買い物というのも味気ないかもしれない。俺がいて何か変わるか?という感じはあるものの

荷物くらい持てるぞ」

彼女は無言のまま、片眉を上げる。本気か?と問いたげな雰囲気だ。
そんな彼女の気持ちもわからなくもない
今まで複数人で出掛けることばかりで、俺ら二人で行動することはロクになかったはずだ。今回の、俺からの提案は唐突に感じただろう。

少し話に間が空いたが彼女はあっさりと頷いた。

「いいわ、こき使ってあげる」

お手柔らかに頼む



 補助監督さんと合流し、任務の報告。そして買い物へ行く旨を説明してから、車に乗りこんだ俺たち。

「どこ行こうかしら

「まず昼食にしたらどうだ?」

「それもそうね。そういえば!行きたいって思ってたカフェがあって

先ほどまでの雰囲気とは打って変わって、弾んだ声で話し始めた釘崎。
女心と冬の風なんて言葉があるが、このままの調子で居てくれると助かるんだがな。

窓から見える空は、嫌味なくらい清々しい夏だった。