MN*B
2024-06-21 01:43:57
6212文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

誕生日

この小説は【蠱毒な夢術廻戦】シリーズの番外編です。

まだお互いだけだとそんなに仲良くなくて、ちょっと余所余所しい頃の釘崎と青嶺の話です。
虎杖と伏黒がなんとなく間に入ってて、お互いが両端にいるみたいな関係。
青嶺―伏黒―虎杖―釘崎…みたいな。
この頃すでに虎杖がいないので抜いた状態じゃありますが。伏黒がいなくとも、大体先輩らが一緒にいる頃ですね。

釘崎の誕生日当日に上げようかとも思いましたが、あえてやめました。
ほかの短編と合わせてあげようかと考えていたんですけど、文字数がそこそこいったんで単体であげることに…。
それで今になって投稿というわけです。

『E.7 破鏡』の台詞回収話でもありました。本編内でも触れる日は必ず来ますが…ちょっと遠いですね。

表紙は、かんたん表紙メーカーさんからお借りしました。



#オリ主 #夢術廻戦 #釘崎野薔薇
2021年8月21日 01:24



「こっちとこっち、どっちがいいと思う?」

そう尋ねてくる釘崎の両手には、それぞれデザインも色も違う服が握られている。
それに対して俺は、顎に手を当てて考える。

正直な話をすると、妙に懐かしいというか"来たな"って感じがする言葉だ。"昔"は大体、母さんの買い物に付き合ってたからな

 こういう場合って、結局は本人のなかで答えが出てるんだけど、どっちも好きで決めきれないとかそういう、天秤がどっちかに傾ききってない状態だと思ってる。
ぶっちゃけどうでもいいよって感じは否めないが相手は決め手を求めてるんだろう。買い物は納得して買うのが一番だからな。

 俺は釘崎と、彼女が持っている服たちを見比べた。
そこから、なんとなくの感覚で答える。

色味的にはコッチだが釘崎的にはもう片方のほうが好きだろ、たぶん

「そうだけどちょっといつもの雰囲気とズレるじゃない?」

「そうか?一回、試着してみればいいんじゃねぇか」

俺の言葉に頷いた彼女は、それらを持って試着室へ向かう。
その途中で足を止め、別の商品も手に取っていったのはご愛嬌か。



 結局あのあと、彼女はどちらも買っていた。ついでに途中で気になっていたものも買っていたわけだが。
次はあっちのコスメだと、意気揚々と歩き出した彼女の後ろを、俺も買い物袋を持ってついていった。


 並べられた化粧品を前に、彼女は軽やかにそれらを手に取っていく。
それを何気なく眺めていれば店員さんが接客している声が耳に入る。

もう秋物になるんだな」

服もそうだったが
そんな呟きをこぼせば、彼女は口紅の色を確かめる片手間で返事をする。

「8月に入ればそうなるわよ。そんなもんでしょ」

「そうか。そうだな」

緩く頷きながら、目を閉じた。
その辺を気にしない奴と、する奴の記憶が入り混じる。

柔らかく、溶け、馴染み、甘く、香る。
あれ、なんで。こんなの持ってな_

深く息を沈め、記憶を振り払う。
目の前を見た。

うまそうな匂いするな」

「香りだけね。フレーバー付いてんの別に美味しくないわよ」

こんなに匂いすんのに。まぁ結局は化粧品か。

「アンタって意外と甘いもん好きなのね」

その言葉に呆気にとられ、思わず彼女のほうを見た。

「えなんでそう思うんだ?」

「わからいでか。自室にあんだけ菓子あって、匂いにも釣られてるじゃない」

「それは

俺が弁明をする前に、彼女は言葉を続けた。

「可愛い系男子ってヤツ?キャラメル好きとかちょっと狙いすぎね」

キャラメル
その思考が口からも出ていたらしく、彼女は試供していた商品説明を見せつけてくる。

キャラメルの香り。

スンスンと、改めて匂いを確かめる。キャラメルの匂いだな、これ。

今さっきなんて言った?うまそうとか言ったか?
そこまで考えたところで、すっと思考を止める。

「なに茫然としてんのよ。もしかして自覚なかったの?バカね~」

彼女はそう言いながら、俺の脇腹を小突いた。
その様子は半笑いで、どこか楽しげだ
狙いすぎと言ったり、バカと言ったりどっちにしたって罵られてないか?





 男物のブランドが置いてあるテナントを通りがかったとき、釘崎はふとした感じで足を止めた。小物なんかが並んでいる棚をジッと見ている。

「どうした?」

「アンタって、サングラスはその手のしか持ってない感じ?」

「まぁそうだな」

考えるように質問をしてきた釘崎に、俺は戸惑いつつも返事をした。
それを聞いた彼女は、スタスタと店舗のなかへ入っていく。ついて行けば彼女が見ているのは、サングラスなんかが陳列してある棚だ。

「休日用とかでオシャレなの持っといたら?あっ、これとかいいわね」

そう言って選んで見せてくるのは、色の薄いカラーレンズのものだ。
確かにオシャレじゃあるが
どぎまぎしながら今かけているサングラスを外し、彼女が差し出してきたものを試着してみる。

「悪くないわ」

屋内ならギリギリ大丈夫くらいか。何もかけてないよりマシって感じだ。
ちょっと感心したように頷いている釘崎に、俺は反応に困りつつ尋ねる。

「いつものじゃダメなのか?」

「実用的すぎるじゃない。見た目の割に、そこだけ厳ついわよ」

恵たちと買いに行ったときのデザインだが以前よりスタイリッシュだし、別に構わないと思うんだがな
そうこうしているうちに、彼女はあれこれと勧めてくる。無碍にすることもできず、それらを手に取っていく。

しばらくして俺はその中のいくつかを選び、レジに持っていくことにした。
そんな俺を見て、釘崎がぎこちなく尋ねてくる。

「そんなに買うの?」

勧めてきたのはそっちだろ
それに、場合によって変えたほうがいいときも出てくるかもしれない。今の俺は、パッと見の印象がいいとは言えねぇし。

「あって困るもんじゃねぇから」

「そう?」

ないのが一番困るからな