MN*B
2024-06-20 21:59:41
23350文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.4 秘密は曲者

シリーズ中第18話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
お待たせしました。

このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいねを、どうもありがとうございます。コメントも頂けており嬉しいです…。

 
今回主に、SAN値ピンチ回&過去編になりました。
しかも文字数。今までで最長になってます。予想より前半部分が長くなってしまったのが原因です…。
あと呪法の見た目について、描写ミスというか言葉足らずだったなと思い、ちょい補足みたいな一言が唐突に入ってる感じになりました。未熟で申し訳ないです…。

次回、オリジナル回になります。
1週間から2週間以内を目処にあげる予定です。

間が空いていたときにあげてた番外編あります→ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14973758
五条さんと青嶺が重い話をしながら休日してるだけの話です。

 
入れたいとこまで書いたらすごいことになりました。長い長い…。
日数かけるとそれだけ迷いっぱなしって感じじゃあります。

今回の東堂が話していたミケランジェロについては諸説あるというか…わかりやすいように言葉を短めていたりするので…まぁ雰囲気で読んでください。書き手もそんな詳しくないんで…。
個人的に東堂が勝手に喋り出すんでちょい恐怖感じましたね…ミケランジェロのくだりとかマジで唐突に思い浮かんで、書いてる側としても困惑ですよ。
まぁ意味不明さが東堂っぽいんで好きな場面ですけど…。



#オリ主 #夢術廻戦 #五条悟 #虎杖悠仁 #東堂葵
2021年4月8日 05:58



 廊下を進み、角を曲がったところで、俺は左半身を壁に預けるようにして佇む。ほかのところよりも薄暗いそこで、目を閉じゆっくりと呼吸をした。
壁に擦るようにしながら左腕を上げ、サングラスごと前髪をかきあげた状態で留める。額にじんわりと汗が滲んでいた。

 医務室に行くなんてことは、あの場を離れるための口実でしかなかった。
今の俺にはあれ以上、あの場にいる余裕がない。それが頭でわかったから、何事もないフリをした。


 また意識がグラつくなか、自分の記憶が思い浮かぶ。

記憶_夜蛾学長との面談。
「君が死ぬだけならマシだ。だが周りの人間が、その一瞬の間で呪いに殺されるそういう世界だ」

わかったつもりで、わかっていなかった。
俺が呪法を扱えないのは、俺の私情であり、利己的とも言える事情だ。
それが何を招くか連鎖するか。


 代わりに使おうとした右手。閉じていた目を開け、視線をそちらに向ける。
何事もなく変わり映えのしない一見して、何の変哲もない腕がそこにある。

あのとき、痛みこそ感じる暇がなかったのはそうだ。だが、あの呪霊の意図握られた感覚
衝撃もあり、一時的に忘れていた。むしろ、思い出さないようにしていたのかもしれない。
俺だって恐怖を感じないわけではない。ただそれをコントロールする すべを知っているだけだ。
それ以上考えないように、感覚と感情に蓋をする。思考を逸らし、気がつかないフリをして……知りたくないことは、知らないままでいたい。

 そう思いながらも、俺の視線は剥き出しのままの右腕にいく。
意識すれば、スルリと這い出てくる鋼腕と共に失われることのなかった、ナニカ。
左手を頭から離し、サングラスだけを手に取る。自然と前髪が、顔の前へ垂れ下がってくる。あれから半年この髪は、長さが変わったか?


 意識的に呼吸をし、精神を保つ。

答えなんて分かりきっていて、同時に俺はそれを持ち得ていない。
俺は一体、どうなっているんだ。

「衛」

俺は身体を跳ね上げて、後ろを振り向いた。
一気に感覚が引き戻されたような気分だった。

「袖忘れてるし、僕の気配に気がつかないし。悠仁の一件でもそうだったけど、衛ってマトモだよね」

俺の制服の袖をヒラヒラと振りながら、そんなことを言う五条さんだ。
すぐ目の前に彼の姿があり、動揺して言葉もでない。声をかけられるまで気がつかなかった。

「こういうことは顔に出したほうが良いんじゃない?」

俺は言うほど顔に出るタイプなのか?」

苦し紛れに、眉を寄せながら喋れば、意地張らないの。と額をつつかれる。

「さっきはさ、悠仁の前だったから気ぃ遣ってた?でもあんまり余裕ないでしょ」

俺は目を閉じて、ため息をつく。
さすがに意識しないでいるのにも限度がある。気がついてしまえば、余裕なんてなくなる。
かといって人前それも未成年の前で取り乱すのも、どうかと思っているだけだ。この間はなぜか、やらかしてしまったが。
そう思いながら、口を開いた。

「当然だろ。知人に銃口向けてるわ、腕が生えるわしかもそこから、何事もなかったかのように刃物が生えてれば。呪術師ってこうなるもんか?」

「んー呪具はともかく、前二つはあるかな。言ったでしょ、呪術師にはある程度のイカレ具合が必要だって」

嫌な話だった。
先ほど彼は俺のことをマトモと称したが俺はそこそこイカレてるほうだと思う。とはいえ、必要とされているものが違う気がするのも確かだ。

目を閉じて下を向いたまま、俺は壁に背中を預けた。

なぁ、五条さん」

「何?」

「俺は……

一体なんなのか、どうなっているのか。未だ人間か、呪いか。
他人に訊ねるのは簡単だ。
しかし訊ねたところで、意味のある問答とは思えなかった。
結局のところ、自分が何者かを定めるのは、己のみだ。あのとき、彼が俺に対し尋ねたときと同じ何も変わらない。
だから、言うことを変えた。

「俺は、話す許可があっても、まだ難しい。強くなるのも、時間がかかると思う

俺の事情のことは、すでに説明することの許可は下りている。呪いに成りかけのことも含めて。あの少年院へ赴く、もっと前から。
それでなお、俺は話せず口を噤んでいる。
自分でもわかっているその理由すら、言葉を硬くして覆い隠し、難しくしているだけだ。
本当はもっとシンプルな答えを、理性で奥深くへ沈める。いや、それこそすでに理性ではなく

それを直視する強さが、今の俺にはない。
人としても、呪術師としても、弱い俺にはまだ時間が必要そうだった。


 閉じていた目を開けて、彼のほうを見る。壁に預けていた身体を起こし、自分の脚で立った。
何を言うか言葉を整えて口を開く。

「俺は俺なりにやってみるが、あんまり期待するな」

それを聞いた彼は、俺の顔を見たまま、言葉を発しなかった。
しばらくして息を細長く吐きながら、呆れたように表情を緩める。

「そこは期待してろって言うとこじゃない?」

かっこ悪~!と笑いながら、俺の肩に腕を回し体重をかけてくる。
俺はその手にある、制服の袖を奪い取りながら、口を引き結んで歪めた。

俺という存在は意地汚く生きることを選んだ時点で、格好良さとは程遠い位置にある。

そんな考えを思考の奥へ押し込んで、減らず口を叩いた。

「重てぇから離れろ」

「これは期待の重みです」

しれっとした態度をして、そんなことを言ってくる五条さん。何言ってんだ。
何キロだアンタと思わず呟けば、え?気になる?とニヤケ面して絡まれた。

うぜぇ


 重さをかけられたわりに、軽くなったものがあるのは皮肉だった。