MN*B
2024-06-20 01:21:06
9704文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

人生一年生、身体測定に挑む。

シリーズ中第8話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいね、いつもありがとうございます。

 
伊地知さんに「よーいどん」言ってほしいだけです。
ぶっちゃけタイトル詐欺に近い気がします。

そして想像以上に、青嶺衛の設定がヤバイことになったと、書き手からしても思ってます。
夜蛾学長がここまで悩むだろうか?とも思いました。
だって意外とあっさり虎杖のこと受け入れてる感じしましたしね。
でもここだとまず時系列が逆なので、青嶺衛がいたから両面宿儺の器でも、早い段階で受け入れることができたと考えられるな…と思いまして。
あと夏油傑は地雷かも…とも思ったんですけど、0巻での対応が割り切りすぎぃ…。

そして口調あってるかが不安ですね。
家入さんって学長に対して敬語使ってそうなんでそうしましたけど…。
ここではそういうことでお願いします。

2021.8.15 獣鉤手について、ほんのちょっとだけ言葉を変えました。描写不足だと思ったので…。



#オリ主 #家入硝子 #伊地知潔高 #夜蛾正道 #夢術廻戦
2021年2月9日 22:53



 夜蛾正道は青嶺衛についての資料を見終わり、顔を上げた。

「今は身体の制御ができるようになるため、ひたすら走る練習をさせてます」

監視は伊地知が。と、硝子は付け加えた。

「このままでも日常生活に支障はありませんが、戦いの際に活用できた方が彼のためでもありますから」

そうだなと、小さく頷いて同意する。
そして重々しく、口を開いた。

「悟にも困ったものだな確か彼は最初に、自分が怪我をしていたことを悟に伝えていたはずだ」

だからこそ、彼が反転術式が使えるかもしれないという報告があったはず。
呪霊になりかけの可能性もあるのは変わらないが。

「ええ。刺さったままだったことも話したけど、そのときは軽く流されたと聞きました」

二人とも、適当な態度で話を流す悟を想像をして、ため息をついた。
脳内の悟が、まさか取り込んでるとは思わなくなーい?と言ってくる気がした。
そのイメージを振り払い、話を再開する。

「悟にはこのことを連絡したか?」

「あ起きてることもまだしてません」

ついうっかりといった態度の硝子。
彼の状態について、あいつにも連絡はしないわけにはいかないだろう。

「そうか

思わず、含みを持たせた声を出してしまった。
それを聞いた硝子は、スッと表情を硬くする。

「何か気になることでも?」

「硝子お前も薄々気がついているだろう。彼の体質は、まるで」

私の言葉を引き継ぐように、彼女は言った。

「夏油傑と伏黒甚爾その両方の性質を持っている」

彼はおそらく、呪霊が取り込んでしまった呪具を、さらに取り込んでいる。


 呪霊に取り込まれた時点で、変質してしまった可能性が高い呪具それはもはや呪具ではなく、呪霊の一部と化していたはずだ。
それを取り込んだとなると彼は、呪霊を取り込める可能性がある。
もしかすれば、今後も呪具あるいは呪霊を取り込むことが可能かもしれない
 そして、高い身体能力と呪力ゼロの組合せ。
呪力を感知されないというのは、呪術師に対する高いアドバンテージだ。

呪霊を取り込むことができる術式。
天与呪縛により呪力がゼロの代わりの、圧倒的な身体能力。
その二つは、本来なら両立できるわけがない性質。
青嶺衛は術師でありながら、呪力ゼロの状態でいることができ、その身に呪具を隠し持てる。
もし、彼が敵に回るようなことがあれば


 その懸念を否定するように、硝子は青嶺衛に関する考察を述べる。

「ですが彼は、伏黒甚爾ほどの身体能力はおそらく持っていません。取り込んだのも、呪霊としてではなく呪具としてだと考えられます」

「そうだとしても、上に知られれば間違いなく処理されるだろう。最悪の呪詛師と術師殺しの重ね合わせだなんて」

「夜蛾先生」

言葉を遮るようにそう呼ばれ、我に返る。

すまない。時間が欲しいのは、私の方だな」

青嶺衛が彼らと似たようなことができるからといって、同じようになるとは限らない。
だが、思わず重ねて見てしまいそうだった。ああなる前に殺すべきだなんて上と同じではないか。
 硝子は私を心配するような顔をしそれでも、きっぱりと自らの考えを述べ続けた。

「夜蛾学長が危惧するのは最もだと思います。もし彼と関わったのが悟以外であったなら彼は呪詛師側どころか、呪霊側についていてもおかしくなかった」

 悟からの報告だと、彼はどちら側に転んでもおかしくない思考と経験をしていた。
彼が初めて遭遇した呪術師は、透坂だ。
蠱毒を行い、彼のことを人扱いしていなかった呪詛師。
そして彼はその透坂を、呪霊に便乗して殺害しようとしている。どちらかと言えば、呪霊の手助けをする意思をみせていたという。
呪いや呪術界を知らなかったとはいえ、危うい精神だ。

悟以外の呪術師が、あの夜の彼に接触していたら、問答無用で殺そうとしただろう。
彼から発生する呪霊としての気配は3級程度らしいが、術式で呪力を隠せる以上、それが本当とは限らない。
もし仕留めきれず、彼が生き残れば術師殺しの呪詛師が生まれていた可能性があった。とんでもない綱渡りだった。

「悟は、彼に対して良い影響を与えたと思います。私たちにとって都合がいい、ともいえますが」

悟は、短い関わりの間に、その心をこちら側へ傾かせるに至っている。
悟が攻撃されたことに怒り、子どもをかばうことができる善性。遠坂を自分もろとも殺そうとしていたとは思えないほど、人間性が育っている。
青嶺衛は初め、呪霊の味方をしていた今では呪霊より人間の方へついている。

「面談のときの発言で彼は、呪霊より人間を選び取りました。彼の危険度が低いのは明らかです」

そうだな」

ありえていたかもしれない過去、ありえるかもしれない未来それらを憂えている暇はない。
私たちにできるのは、彼に生きる術を叩きこむことだ。


 それを念頭に置いて、これからの予定と計画を立てる。

「悟には彼の情報を伝えるがこれから二か月近く、悟には忙しくなってもらう。その間に、青嶺衛にはほかの人間とも関わらせる」

悟は彼に影響を与えているが、それが偏ってしまうのは双方にとっても良くないだろう。
やはり彼はしばらく様子を見ながら、医務室で過ごしてもらうのがいい。
そこなら人の目が届くし、関わる人間も増えるはずだ。

「彼の存在自体は隠す予定ではなかったしな。どうせ悟は、担当している生徒に何かしら話す」

それを聞いた硝子は少し考えてから、遠慮のない提案をする。

「なら少し日にちを置いてから、彼が起きたことと状態を伝えた方がいいです。そうすれば、悟は連絡をもらえなかったことを不満に思って、言いふらすでしょう」

彼の事情が秘匿なのであって、彼のことについて話すなとは言っていないのだから、悟は絶対に喋る。
ダメな方の信頼であった。
そうするかとそれに同意し、伊地知にも口止めをするように。と、念を押しておく。

「座学は硝子、お前に任せる彼の獣鉤手の指導は私がやる」

どうやって指導するかは、彼が自身の身体になれるまでの間に準備しておこう。
彼が任務に行けるようになるのは、正式に入学してからになるだろう。

「呪術師として育てると同時に彼を人として育てる。教育者としてだ」

彼は生きてみたいと言った。
それに応えると同時に、そのことを信じるしかない

 彼に関して危惧してしまう、もう一つの事柄。
それが頭によぎる。

「彼自身も言っていたが、知った人に傷ついてほしくないという思いそれを伸ばしてやるべきだろう。きっとそれが、彼が呪霊に堕ちずにいられる方法だ」


 彼には、あえて伏せている事実がある。
蠱毒は祀り上げなければ完成しない。それは本当だが、必須ではない。
強力な呪いとして成就させるには、それが必要だと言われている。
だが、呪いに転じるだけなら呪力が関わらない死因で十分なのだ。


今の彼が自死を選べば蠱毒になる。