MN*B
2024-06-20 01:21:06
9704文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

人生一年生、身体測定に挑む。

シリーズ中第8話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいね、いつもありがとうございます。

 
伊地知さんに「よーいどん」言ってほしいだけです。
ぶっちゃけタイトル詐欺に近い気がします。

そして想像以上に、青嶺衛の設定がヤバイことになったと、書き手からしても思ってます。
夜蛾学長がここまで悩むだろうか?とも思いました。
だって意外とあっさり虎杖のこと受け入れてる感じしましたしね。
でもここだとまず時系列が逆なので、青嶺衛がいたから両面宿儺の器でも、早い段階で受け入れることができたと考えられるな…と思いまして。
あと夏油傑は地雷かも…とも思ったんですけど、0巻での対応が割り切りすぎぃ…。

そして口調あってるかが不安ですね。
家入さんって学長に対して敬語使ってそうなんでそうしましたけど…。
ここではそういうことでお願いします。

2021.8.15 獣鉤手について、ほんのちょっとだけ言葉を変えました。描写不足だと思ったので…。



#オリ主 #家入硝子 #伊地知潔高 #夜蛾正道 #夢術廻戦
2021年2月9日 22:53



 俺はもしかしたら呪霊を目の前にしたときよりも、恐怖を感じている。

 今いるのは、殺風景なタイル張りの広い部屋おそらく遺体安置所だ。
解剖室のようでもあるそこには、人一人が横たわれる大きさの金属製の台がいくつか並んでいる。
 そこで家入さんと二人俺の身体検査のようなことをしていた。
午前中は、医務室でごく当たり障りのない検査を行っていたのだが

呪具が身体と一体化しながら、それでいて身体と別物として識別されている。呪物の受肉とはまた違った現象だ」

台の上に差し出している俺の腕を眺めながら、彼女家入さんは、何事かを呟いていた。
その視線はどこか、マッドなサイエンティストじみたものを感じる。

「蠱毒の影響か、それか元からの体質の可能性も

今彼女が観察している俺の片腕には、拳から肘にかけてまで、這うように金属が浮かび上がっていた。
そしてその拳の先からは、四枚の刃が鉤爪のように伸びている。少し違うが、まるでヒイラギさんのような感じだ。

少し採取してみても構わないか?」

「え採取、ですか?」

「ああ。先端と中間辺りを、少しだけだ金属部分だけ痛くならないようにしよう。場合によっては麻酔を

そう言いながら、彼女は器具をあさり始めるメスはまだしも糸鋸とかトンカチも見えた気がする。
俺が冷や汗を流しながら固まっていると、生えていた刃たちはスルリと俺の中へ隠れていった。

「ん?意識していないと出し続けるのは難しいか。でもそれはそれで確かめたいことはあるしな」

家入さんは、また俺の腕をしげしげと観察した。

「表皮から出ているのか、それとも内部からすでに発生しているものなのか断面が見れないと難しいが」

「レントゲンを撮るか、もしくは

彼女が見るのは、物騒な医療器具の並べられた棚
俺は腕をさらけ出したまま、小刻みに震えていた。

 その時、この部屋の自動ドアが開いた。

「すみません家入さん!少し別件で遅れが出まして!」

慌てたように駆け込んできたのは、前に見たことがある人物確か名前は

「気にするな、伊地知。なんならもう少し遅れても良かったよ」

「は、はい?」

家入さんの言葉に疑問符を浮かべるスーツ姿の男性伊地知さんだ。
彼は俺の方を見て、うわと声をもらした。

「彼、寒がってませんか?ここって冬場はちょっと寒いですから

寒いっていうか、背筋が凍ってるんだが。
震える俺に対してその感想は、結構肝座ってる気がする。

「いや、少しからかいすぎただけだ。解剖はしないし、採取も許可は貰ってないからしないさ」

家入さんは、こちらを見てそう安心させるように話した。
許可貰いに行ったりしないよな?
俺は彼女の方を窺いながら、腕をそっとしまった。
それを見ていた彼女は、機会があるならしたいけど。と付け加えて言った。
 俺は背筋をビクッと伸ばして、そっとその場を離れると伊地知さんを盾にして、その視線から逃れた。

「えっ、なんで私の影に隠れるんですか!?」

今まで出会った高専関係者の中で、一番一般人っぽいからだ。

そんな俺らを見て、家入さんは含み笑いをしていた。




 場所は変わって、高専の敷地内にある運動場。
そこに俺と家入さん、そして伊地知さんはやってきていた。

「最初に確認しておくけど、君はその身体の状態で走ったことはある?」

……たぶん?全力で何メートルもってことはねぇけど

よく考えてみると、まともに走った覚えがない。
あの夜はいつから身体が変化していたかも自覚がないし、走ったのは精々乗り遅れそうになった駅でしかも手を引かれていたし、途中から抱えられたし。
 そんな俺の様子を見た家入さんは、持っているバインダーに挟んだ用紙をめくった。

「歩くのは問題なさそうだが少し気をつけた方がいい。君は、元の身体から10cmは縮んでいるからな」

「10cm!?」

伊地知さんと俺の声がダブった。
そして俺よりも、そばで話を聞いていた伊地知さんの方が反応がデカい。
彼を家入さんと二人で、チラッと見た彼は恐縮したように小声で、すみませんと言った。
 視線を戻した俺たちは、話を再開する。

「体重や骨格、筋肉のつき方からして、君は中学生くらいの肉体をしている。まぁギリギリ高校生に入るくらいかな」

「これから急速に身長が伸びる可能性もあるし、全く成長しない可能性もある君の今の肉体は未知数だ」

まぁ、本来なら成長期は終わってるしな。
性別変わったりしてる時点で、ここからどうなるか予想なんてできない。
俺が話を聞いているのを、一つ頷いて確認した家入さんは、これからのことを説明する。

「今から君には50m走をやってもらう。その他にも測定する予定で、それらの補助として伊地知が来ているわけだ」

どうもと、頭を下げる伊地知さん。
俺もそれにつられて、頭を少し下げる。
家入さんは、始めるよ。と俺たちに声をかけて急かし、さらに俺に対して言った。

「最悪、まともに走れないかもしれないが、気にしないでいい。これだけ身体が変化しているのに、歩けているだけマシだから」



 スタートラインに伊地知さんが旗を持って立ち、家入さんがゴールでストップウォッチを構えている。
俺は片足を引いて、走りだす準備をする。

「よーい、ドン!」

その言葉と共に、伊地知さんは旗を振った。
俺はそれを聞いて走りだす。

……普通に走れるな。
そう思いながら、ゴールを通り過ぎて、走り終えた。

家入さんはタイムを確認して、用紙に書き込んでいる。
俺は彼女のそばに近寄り、指示を待った。

彼女は書き終えこちらを見ると、悩んだ様子をみせる。
何かおかしなところでもあっただろうか?

「君全力で走った?」

「そのつもりですけど」

よくわからないが、めちゃくちゃ遅かったとかそういうことか?
俺の訝しげな視線を受けて、彼女は口を開いた。

「タイムは肉体年齢の平均レベルなんだけど息も乱れてないし、心拍も上昇してなさそうに見えたからな」

確かに?歩いていた時とあまり変わらないような気がしなくもない。
でも50mだしなと、俺は首を傾げた。

「もう一度走ってくれ。今度はそうだな。ゴールに嫌いなやつがいて、それにタックルするくらいの勢いで頼む」

なんだその例え
困惑する俺に対して、相手は悟でもいいぞ。と彼女は助言のようなことを言った。

 俺はスタートラインに戻り、もう一度走ることを伊地知さんに伝える。
そして走る構えを取りながら、俺は家入さんに言われたことを考える。
 嫌なやつタックル五条さん……やべぇ、学長のジュガイにタックルされたのと、五条さんに腹パンされたのを思い出した。
理由はあるんだが、理不尽な暴力って感じがするすっげぇ腹立ってきた。

「よーい、ドン!」

合図と共に、俺は先ほどより力強く足を踏み出した。


ズベシャァと砂埃を立てながら、俺は地面にすっ転がっていた


俺は空を見上げながら、目を瞬かせる。
は?

「えぇっ!?大丈夫ですかァ!?」

そう叫びながら、伊地知さんが駆け寄ってくる。
身体を起こして周りを見渡すと、位置としてはスタートとゴールの中間辺りのようだった。
サングラスもなんとか無事で、外れたり割れたりしてたら失明の危機だったかもしれない。
家入さんも近寄ってきて、怪我の有無を確認してくる。

「頭を打ったりしてないか?目立った傷はないな」

立ち上がって身体を確認してみるが、特に変わったところもなさそうだった。
正直、驚きの方が大きいし、一瞬過ぎて転がったときに痛みを感じる余裕もなかった。

「大丈夫、です」

家入さんは俺の確認が済むと、伊地知さんの方にも確認をとる。

「伊地知、呪力は?」

「はいいえ。彼からはそういった動きは、何も

ジュリョクがあると、あんなことが起こる可能性があるのか?
でも違うみたい、だな。
俺はイマイチわかっていないまま、二人を見た。

「素の身体能力か。意識しなければ引き出せないし、その意識がついていけてないか」

素の身体能力
俺と伊地知さんは、家入さんの動向を見守った。
それに気がついた彼女は、俺らへ指示を出す。

「一応いくつかやっていくがあまり意味はなさそうだな」

彼女は少し呆れたような声で言った。


 立ち幅跳び砂場を飛び越えて、思わず数歩先に進んで計測不可。
 ハンドボール投げ手が滑りかけて力を入れたら、刃が出てボールが破裂。計測する以前の問題。

この二つをやった時点で、なんかもうどうしよって空気が漂っていた。
ちなみに、俺の手から生えた刃がボールを引き裂いたところで、伊地知さんとの距離が少し開いた。

 そんな俺の様子を見て考えていた家入さんは、一つ頷いて言った。

もう、ひたすら走ってもらってた方が良さそうだな」

匙を投げられた!?
確かに測定が測定になってないけれども
俺がどうすればいいか分からずにいると、彼女は困ったように話す。

「まずはその身体のポテンシャルを引き出して、扱いこなせるようにならないと測定してもね

それはそうだな。
自分でも、この身体能力を持て余しているというか、扱い方がわからない。
全力疾走しようとするとコケるとか、ギャグかよ。

「なんなら午前中に測定していた握力も、記録が変わるかもしれないな平均より下だったが、正しく測定できていたか微妙

俺はそれを聞いて、思わず顔をしかめた。
握力測り直すとしたら、それも壊しそうでちょっと嫌だ
一度出せるようになったら、なぜか頻繁に出るようになったあの刃に、俺も引き気味だった。

「全力でトラックを一周走れるようになるのが、とりあえずの目標かな。まずは直線を走れるようにならないといけないけど」

少しずつ走りだしのスピードを上げて、身体を慣らしていってね。と家入さんから指示を受ける。
俺は頷いて了解を示した。
彼女はそれを確認すると、伊地知さんの方を向いて言った。

「それじゃ、私はこのことを学長に報告してくるから伊地知、監督よろしく」

「わ、私がですか!?一人で!?」

伊地知さんにとって予想外だったのか、驚きの声と全身でそれを表現している。
そこまで露骨に拒否らなくてもいいだろ。気持ちはわかるが。
そんな伊地知さんに対し、家入さんは冷めた目をして俺らを見た。

「走ってるのを見てるだけ、楽な仕事だろ。私としては、脱水するかどうかも確認したいが

なかなかエグい発想だと思うんだが。え、この流れだと俺、水分摂っちゃダメか?
俺は思わず意見を仰ぐように、伊地知さんのことを見た。
彼はこちらをチラッと見て、すぐに視線を逸らし困ったような顔をした。

わかりました。私が彼のことを見ておきます」

「そうか。他に頼める人間もいないしねちなみに、さっきのは冗談だ」

もっとわかりやすい冗談にしてくれ。
家入さんは俺らに手を振って、この場を後にした。

 黙ったまま、気まずい俺たちだけが残る。
そろっと彼のことを見れば目線があった
どちらともなく向き直ると、お互いとも「よろしくお願いします」と小声で頭を下げ合った。