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2024-06-19 01:16:11
12945文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

地獄の釜の蓋が開く時・下【追求編】

 シリーズ中第5話になります。注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

 このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいね、いつもありがとうございます。
もし、この間あげた夢小説の方も読んでいただいた方がいるのなら、そちらもありがとうございます。

 次回は、タイトル未定ですが『余光』の二文字が入ると思います。
たぶん次は3日後くらいになります。

 タイヤが半分埋まったやつに、五条先生が座るのエモくないですか?

 
 
 ※一応言っておきますが、このお話はフィクションです。この小説内に書いてあったような行動は危険なので、真似しちゃだめですよ。
 
 
 
【以下、本編を書いたときに思った独り言】

 一般的な日本人の宗教観として呪術廻戦の世界観をみると、クトゥルフ的な冒涜さを感じませんか。
もし呪いを神格化してみるのなら、自然崇拝というより、アニミズムという立ち位置になるんでしょう。
それでも少し衝撃的かもしれません。
自然やそれの精霊を崇めていたつもりが、人から生まれたものだと断言されるんですから。
 まぁ…それら自然になんらかの形を見出すのも人間ですから、生み出しているというのは変わっていないのかもしれませんね。



#オリ主 #五条悟 #夢術廻戦
2021年1月21日 18:26



 直径約3mほどある空間もちろん光源はない。
俺はサングラスを外し、五条さんの隣を歩いていた。
足元には水が流れているが、それに浸かることはなく、靴底がピタピタと波紋を広げているだけだ。

 中に入ってしばらくの間は抱えられたまま大人しくしていた。五条さんが歩けている理屈もわからなかったので。
彼から離れなければ、俺もこの状態が維持されるという話を聞いてからは、自らの足で歩いている。


 黙々と歩くのに飽きたのか、五条さんが話しかけてくる。

「よくこんなとこ子どもだけで歩いたもんだよね。遠くない?」

『こんなとこ』という点では同意する。
彼らが複数人だったから成し遂げてしまったんだろうが。

「田舎じゃ登校に1時間とかザラだからな」

「マジで?ヤバいね~」

軽く返してくる五条さんだが、気づいてるんだろうか。
その1時間の距離を目指して、今歩いてるんだぞ




 暗いので時間感覚が麻痺しているだろうが、それでもかなりの距離を歩いたはずだ。
そう感じていたとき、視界の先に建造物が見えた。
丸いトンネル状の空間を抜けたどり着いたのは、四角く作られた広い空間だった。


 中央には神社のような建物が、水面より高い位置に出た礎石の上に建っている。
おそらく木造のそれは、柱などが湿気で黒く濡れ腐り、注連縄は千切れ、そこに紙垂が解けて絡まりあっていた。
古びた木とカビの臭いがする。

 これが神社だとするなら、賽銭箱はなく、鈴やそれについた鈴緒は見当たらない。
本殿には外陣と内陣という二つの扉があるはずだがそのどちらもが開いているのだろう。最奥に当たる部分までが晒されている。
子どもたちがここから石を取ったのか。
話をしてくれた子も言っていたが、確かにこれは罰当たりだ。

 本当に御神体を返さないのだろうか。
そう思って五条さんを見上げた。
彼はこちらの視線に気がついて、俺を見た。

「怖い?」

子どもってすげーことするよな。とは思う」

もし自分が同じことやるとしたらと考えると怖いが。

「じゃあ中覗こうか」

彼はウィンドウショッピングしてた人みたいに誘ってくる。
マジ?




 段を上がり、腐った木の上に足を乗せる。
水の上に居たときと同じようにしてくれていないと、踏み抜きそうだ。
ミシリとも、ジュクリとも言えるような音がしている。鳥肌が立った。
 五条さんは頭をぶつけないように中へ入っていく。
俺もそれに続いた。


 御神体が祀られている本殿の、その前にある空間拝殿にあたるところには、長方形の大きな石の塊が置いてあった。
その石の塊は拝殿のほとんどのスペースを使って置かれていて、その中身は外側に合わせてくり抜いてある。
そばにはそれを閉めていたのだろう、蓋らしき石板もあった。

 それを見た五条さんは、あちゃ~と困ったような声を出しながら頭に手をやった。

「本命はこっちか参ったな」

彼の言っている意味がわからなくて、俺は困惑顔で彼を見上げた。
それに気づいた彼は、よく見てごらん。と石の塊を指差しながら言った。

「ただ見るんじゃなくて、集中して呪いを見るときのように」

俺は言われた通り、集中し神経を尖らせて注視した。
すると、ぼんやりと何かモヤのようなものが見えた。禍々しいような、おどろおどろしい気配がする。
そして蓋のような石板には、そのモヤのようなもので文字が浮かび上がっている。

『水神と共に鎮め その御許で眠るべし。
 その水の流れで 穢れを禊 祓い給え。』

くずし字で書かれていて読みにくかったが、きっとそう表している。
人柱の供養塔に書いてあったはずの文言と同じ。
 俺はハッとして、五条さんの方を向いた。

「これ、石櫃か!人柱が入れられたっていう

入ってたのは人じゃない、呪霊だよ。それも元特級レベルの」


 五条さんは、俺に一から説明を始めた。

「『特級仮想怨霊』って呼ばれる、人の共通認識によって産まれ、恐れられる呪霊の分類がある。簡単にいうと、妖怪などの形をとった呪霊のことだ」

呪いは負の感情妖怪が実在してなくても、それに対する恐怖などが集約されて、呪霊へと成り上がる。
人の意識と感情が、妖怪を作り上げたとしたらそういったものを特級仮想怨霊と呼ぶ。

ということらしい。
俺は話についていくので必死だった。

「ここではおそらく、その逆を行うことでその呪霊の力を削ごうとしていたんだ」

人から忘れられ、認識も歪められ、どこに存在しているのかも伝えられず。
あわよくば、封印する力にも負けさせて消滅させるつもりだった。
そう五条さんは考えを語った。

 なんとなく、理解できる話だった。有名な小説や漫画にも使われる理屈とでも言おうか
妖精はいないというたびに妖精が一人消え、信仰する者がいない神は消える考えとしては、そういうことだろう。

 そして郷土誌には『生きたまま石櫃にいれて川の社に捧げた』と書いてあったが
そこにこめられた本当の意味は、『祓っていない呪霊』を『石櫃にいれて』この『川の中にある社』に『封印した』ってことだったのか。

「じゃあ今アンタが持ってる御神体はなんなんだ?まさか

御神体がその呪霊なんじゃと俺が続きを言う前に、彼は違う違う。と否定する。

「これはそれとはまた違うよ。まとめてこの場所に封印されてたか、単純に置く場所が一緒だったんじゃないかな」

やっぱ御神体のこと封印対象って言ってるよな。
そう思った俺だったが、息を吐くだけに留めた。

「なぁやっぱ御神体は返そう。本人?本霊?も、帰せって言ってたし」

呪物に触れてたときに聞いたの?」

その質問に俺は頷き、「社に帰せ」という言葉を聞いたことを話した。


 五条さんは御神体を戻すことに難色を示したが、最終的にお互いの折り合いのつくところを探って決めた。
それは、一回だけ置いてみて、何もなくても何かあっても回収。危なくなったら即祓うといった内容だ。

 俺たちは石櫃の脇を抜け、拝殿から本殿へと歩を進めた。

 本殿は拝殿よりも狭く、俺と五条さんが横並びになってギリギリ入るといった感じだ。
奥行きもあまりなく、その大半は胸の高さほどのある台座によって埋められている。
その台座の上には、年月を経てくたびれた布だったものがあり、今では千々に裂けかかっていた。
おそらくここが祭壇で、御神体はここに置かれていたのだろう。
 俺が五条さんに目配せをすると、彼も頷いてみせた。
そして、御神体を置いた。


 何も起こらないそう思ったとき、俺は耳鳴りがし始めて眉根を寄せた。
その耳鳴りはどんどん大きくなり、ささめく音が近づいてくる。  
これが耳鳴りなのかの自信もなくなってきて、俺は五条さんを見上げた。
彼は祭壇を見つめたまま、じっと黙ったままでいる。
それを見た俺も黙ったまま、頭に響く音に耐えた。

その音が、もうそれ以上は大きくならないでくれと思うほどになった時。
シンと静まり返った。


 ザバァと建物の壁をすり抜けてきた奔流が、俺たちを飲み込んだ。
俺は思わず目をつぶったが、何の衝撃も感じない
不思議に思い目を開けると、俺たちの周りにだけ空気があった。
上下左右すべてが激しい水の流れの中、俺と五条さんの周りを球状に、水が避けて通っていく

 来たときと同様に、その奔流は突然終わった。
ザパリと後ろに流れ切っていった水は立ち消え、俺たちはいつの間にか見知らぬ神社の前にいた。
いや見知らぬ、ではない。
俺たちが先ほどまで居たはずの建物が、黒く腐りきる前ならきっとこんな感じだったのだろう。
そう思わせる、真新しく美しい姿の神社が、澄んだ水の上に建っていた。


 「生得領域……術式は、付与されてない」

五条さんがポツリと呟いた。言葉の意味を聞く前に、

「来たか。青嶺の うれよ」

声が聞こえた。
俺はそれがどこから聞こえるのかわからずに、視線を彷徨わせた。

目を閉じるのをやめても、この姿は見えぬか。我の力も地に落ちたものだ」  

性別がわからない、揺らぎのある声。
その声は、俺が丸石を水から探し出したときに聞いた「社に帰せ」と言っていた声だ。

どこを見ているのか、じっと一点を見つめたままの五条さんに、俺は恐る恐る声をかけた。

「なぁ、この声。俺が聞こえたって言ってたのと同じ声なんだが

「え?声なんてしないけど君、よくこれ見てて平然としてるね」

彼は少しの嫌悪感をにじませて言った。
俺はそんな彼の反応にいぶかしみながら、返事を返す。

「は?確かにあの水には驚いたけど、今はそうでも」

ただの社だし。と付け加えた俺に、五条さんはえぇ?と困惑した声を出した。

 何だか話が噛み合っていないと感じて、お互い横目で視線を合わせる。
困惑していると、またあの声が話し始めた。

「そこのああ。その眼なら見えておるだろうに、聞こえぬのか。ままならぬものよ」  

「何もする気はない。そんな力も残ってはおらぬからな」  

疲れ切ったような、寂寥感をにじませた声はそう言うと、また静かになった。

 俺と五条さんは、とうとう顔を見合わせてお互いがお互いに質問をする。

「聞いたか?」「見えてる?」

そして、お互いともが首を振った。



 五条さんには、あの社の中に居る何かが見えていて、その声は聞こえず。
俺には社しか見えず、その声は聞こえる。
とりあえず俺たちは、あの声が言っていたことも含めて考えるとそうなるのだろうと、考えをまとめた。

 そして、本人?本霊?が何もしないと言っていたし会話ができるのなら、少し話でも聞いてみるか。ということになった。
質問をするのは五条さん、相手の言葉を聞いて声に出すのが俺だ。

「ちょっと質問したいんだけどいいかな~?」

その話しかけ方でいいのか
俺はちょっと焦ったが、相手は特に気にしなかったらしく応じてくれる。

「なんだ

「君は封印されてた側?してた側?」

「どちらとも言える。彼奴を封印するために、我も隠され力も衰えた」

「へー。よくそんなこと許したね」



黙っちゃったよ
俺には相手が見えないから、声が聞こえないとどういう反応してるのかもわからない。
最初から突っ込んだこと聞いてたけど、これは相手も怒ったのでは?
そう思った俺は、社と五条さんを交互に見た。

 五条さんは何を思ったのか、俺の頭に手を置く。
そしてそのままぐしゃぐしゃに撫で回す何やってんだこの人。
彼は口角を上げて、意地の悪い笑みを浮かべている。

話、続けてもらっていいスか?」

俺が呆れた声で言うと、五条さんはごめんごめん。とニヤけながら手を離した。

「ご要望により話を続けさせてもらうけどあの石櫃の中に居たのは、一体何で今どこにいる?」

「人は鬼と呼んでおったわ。あれは名ばかりの人柱我こそ捧げてきた身なり」

声は独り言のように、話続けた。

「この地、この水我の力を利用し、隠れ潜んでおる。しばし待てば、それも終わる」

「蓋はもう開いてしまった。あとは、どうとでもするがよい」  

それきり言葉は続かず、また静寂が訪れた。


 五条さんはしばらく考えるように黙っていたが、それが終わったのか俺に話しかけてくる。

「そんじゃ、帰ろうか」

帰ろうって帰れるのか。本人が言うんだから帰れるんだろうが。
もう質問はいいのかと聞けば、もう時間だよ。と返される。

「そうでしょ?」

同意を求めるように、虚空へ話しかける五条さん。


「青嶺の一枝 いっしが死んでから、我の力も削がれた。知る者はもうおらぬのだろう」  

もう話は終わりだというように、その声はどんどん遠くなっていく。  
それに伴って、空間にヒビが走る。割れる音が響く。
俺がその現象に、一歩後ずさりそうになった時。

「その名も届かぬ地に居ろうとも、あの指は禊など受け入れぬ。五条に伝え

奴も死んでおるか。ままならぬな……青嶺」


そんな声を最後に、その空間は砕け散った。




 俺たちは気づけば、黒く腐れた社に戻ってきていた。
目の前の祭壇には、割れ砕けてしまった丸石の名残だけがあった。