不破
2024-06-17 21:08:30
5687文字
Public 空戦
 

#20




 手にしている銃を構え、躊躇いなく引き金トリガーを引き込む。銃声とともに敵兵の心臓目掛けて一直線に弾丸が放たれるも、それは球状に展開されたエーテルのシールドに阻まれ、弾けた。

「ちっ……

 第3世代以降のサテライトに標準装備された魔導シールド。サテライトに搭載されたセンサーが感知した攻撃に対して自動で発動する防御手段であり、戦闘機のミサイル程度ならば難なく防ぎ切ることが出来る代物だ。戦闘機が飛び交うような戦場を空兵が生身で飛び回ることの出来る理由でもある。
突破するにはエーテルを用いた攻撃でシールドのエーテルを相殺する必要があるため、手にしている武器にエーテルを通して直接攻撃するしかない。リベルタリアの軍人は皆、基礎的な身体能力の強化や、手にしている武器へのエーテル付与といった基礎魔術を軍学校で習得するが、弾丸や矢は放たれた瞬間に兵士の手を離れるため、基礎魔術でのエーテル付与が不可能なのだ。

「仕方ねぇな……

 故に、自分が手にしている銃であれを破るには固有の魔術を用いる必要がある。
 それぞれの手に握る銃を正面に構え、エーテルを集中させて引き金を引く。雷鳴のような銃声を響かせて放たれた弾丸が雷光を帯びて駆け抜け、魔導シールドごと数多の敵兵を撃ち抜いた。爆炎を上げて落下していくサテライト。それとともに空中に投げ出される者、弾丸に胴を抉られる者、そのすべてが等しく空へと落ちていく。

『ベガ2! ベガ3を頼むよ!』

 HUDで展開した端末から響いてくるエヴゲーニヤの声にワインレッドの目を細め、不愉快だと言いたげな表情を浮かべるも、わざわざ上官に楯突くような真似はすまいと、ベガ3のマーカーが表示されている4時の方角へ目を向けた。
 ベガ3。ソニア・ハーディという、まだあどけなさを残した新兵が手槍を振り上げ、敵兵を前にする恐怖を顔に貼り付けて飛び掛かるのが見えた。初陣とは誰しもがああなのかも知れないが、敵兵に恐怖を見せてしまっては付け入られる隙にしかならないだろうに。
ロウは嘆息しながらも銃をそちらへ向け、引き金を引く。再び響いた雷鳴のような銃声が空を裂き、ソニアの背後に迫っていた敵兵を撃ち抜いた。

『あ!? ベ、ベガ2!?』

「びびり過ぎだ」

 うんざりした声で言いながら左手の銃を構え、引き金を引く。雷鳴のような銃声が再び響き、ソニアの周囲に居る敵兵を撃ち抜く。
 両の手にそれぞれ携えた銃、シルバーのダン・ウェッソン・リボルバーと黒いS&W PC356が次々に雷鳴を轟かせ、敵兵を次々に撃ち抜いていく。

『す、すみません……!』

 通信を介して響いてくるソニアの声に舌打ちをしながらも引き金を引く。
 なぜこんな新兵を少数の隊に割り当てたのか人事部を問い詰めたい気分だが、自分のような末端の兵士が物申したところでなにも変わりはしないだろう。その事実に不快感を覚えながら、苛立ちのまま引き金を引き続けた。