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君とワルツを 2

幼いヒースクリフの記録を取る囚人たち。もう少し続きます。
メインストーリー6章の内容を含みますのでご注意ください。


 
 
 
  ロージャの記録
 
 
 
 今ちっちゃいヒースが隣で寝てるよ~。せっかくだし、こっそり記録つけちゃうね。

 ちっちゃなヒースはすごくぶっきらぼうで口も悪いけど、イシュの言うように大人しいって印象。でもおしゃべりが好きじゃないって言うより、まだ警戒心がとけてないって感じ。なんだか拾われたての捨て猫みたいでいじらしい。朝のあれだって、お腹が空いててもあんなふうになるまで我慢してたなんて……本当、想像しただけで胸が痛いよ。

 それに、出自のわりに美味しいものを食べ慣れていないみたい。私が食べてたチップスを分けてあげたら、もうすっかり懐いちゃった。美味しい? って訊いたら何度も頷いてて、もうすっごくかわいいの。小さくなってもやっぱりヒースなんだね。
 続けて魚も食べさせてみたら、両方のほっぺが膨らむまで頬張ってたの……すっごく喜んでて、見てるこっちも嬉しくなっちゃった。私の分は無くなっちゃったから、あとで買ってきてよね、ダンテ!

 あんまりがっつくから、まあ分かると思うけど、食べてる途中でヒースが一度大きくむせちゃってね。大丈夫? って背中をトントンしてあげたの。……私、こういうときに気付いちゃうタイプなのよね。そのときヒースが痛がる様子を見せたんだ。

 もちろんバシバシ叩いたわけじゃないよ! ただおかしいな~と思って、ヒースと一緒にキッチンへ向かうふりをして浴室へ連れて行ったの。それからごめんねってシャツを脱がせてみたら……ヒースの背中、痣や傷でいっぱいだった。刃物とかじゃなくて、紐みたいな……きっと鞭の痕だと思うんだけど。まだ新しい傷もあったみたいで、ところどころ血も滲んでた。痣の方は……書かなくても分かるでしょ?
 痛かったよね、なんでもっと早く気が付かなかったんだろうって悲しくなっちゃって……傷にさわらないように思いっきりハグしたんだ。

 そうしてたら急に浴室のドアがノックされて、慌ててヒースの背中を隠してたんだけど……入ってきたのはなんとびっくり、救急箱を持った良秀だったの。でも結構すぐに合点がいってね。ほら、良秀はチーフバトラーの人格があるでしょう? だからピンときたのかなって。
 それで「せめてシャツで擦れても痛くないように」って傷口にガーゼをあてて、その上から包帯を巻くことにしたの。手当されてるときのヒースは大人しいどころか全然痛がってる素振りを見せなくて、なんだか不安になっちゃった。あんなに傷だらけなんだもん。良秀が消毒液を容赦なくぶっかけたときだって、きっとものすごく痛かったはずなのに……。どうしてこんなことをする人がいる家に帰りたいと思うの?

 良秀に手当されながら、ヒースは自分が傷付けられたときのことを思い返していたみたい。これはお屋敷で一緒に暮らしてた女の子とおしゃべりをした罰だったんだって。どういうこと? って思ってたらそれがヒースにも伝わっちゃったみたいで、それからそのキャシーって子のことを教えてくれた。

 キャシー――キャサリンちゃんはその時間お勉強をする約束だったみたいなんだけど、それをすっぽかしてヒースと過ごしてたんだって。その子はただ遊びたかっただけで、ヒースのことはたまたま目に留まっただけらしいの。でも、そんなヒースが罰を受けるのは嫌だって泣いてたみたい。
 だからこのままいなくなったままだとキャシーが不安がるってヒースは言ってたけど、うーん……私が引っ掛かったのはそこじゃなくて……あのお屋敷に、ヒースと同い年くらいの女の子なんていたっけ?