【健全】首輪なき犬達の家【小説】

621の性別は読者選択式。
解放者√後
スッラ(普通に元気)がウォルター(肉体的にも精神的にも無事じゃない)&621のお家に居つく話
ほのぼの生存・共存ルート

第一話『お前んち、燃えなかったぞ』

 ――ピンポン。
 猛吹雪の最中。誰も知らぬはずの、隠れ家の入り口に設置されたインターホン。錆びついてしまいそうなソレを、律儀に押す人が現れました。
「どなたですか」
「お前に殺された男だ」
 それは恐ろしい。言葉通りであれば、幽霊です。
「そうでしたか。けれどすみません、どこで殺した人でしょう。沢山、色々と、撃ち落としたもので。見当がつきません」
「ウォッチポイント。そうだな、エンタングルと言えば分かるか? 犬」
 そういえば、その特徴的な喋り方には聞き覚えがある気がします。
「エンタングル……パルスぷくぷくのバズーカ・キックマン……? ああ、なるほど。とても強かった、あのAC。とても上手な、操縦の、あれ。そうでしたか。ええ、あの時はどうも。殺されるかと思いました」
「それは嫌味か」
「称賛です」
「褒めたところで何も出ないぞ」
「手ぶらですものね」
 吹雪の中、どのような手段でここまでやって来たのでしょう。なんにせよ、身体が丈夫なようで羨ましい限りです。
「それで? ここにいるんだろう。ハンドラー・ウォルターは」
「ええ、まあ」
「顔を見に来た」
 ウォルターさんの生存は、誰にも知られていないはずの情報なのですが。随分と鼻が効くようです。
「では鍵を開けます。どうぞ、お入りになって」
「警戒心のカケラもないな」
「だって、無意味でしょうに」
「ならば遠慮はしない」
「する気には見えません」
 監視カメラから、ゆっくりと入口をくぐるあの人を見守ります。
……レイヴン、危険では』
「まあ、そうだね」
 エアちゃんは心配しているようでした。
 けれど、すでに居場所は突き止められているのです。きっと、閉ざされた扉の開け方だって知っている。知性溢るる猛獣相手に籠城して何になりましょう。
 ならばせめて、機嫌を損ねぬよう歓迎するしかないのです。
 私の敬愛する飼い主であったウォルターさんを守る手段は、それしかないのですから。