【ダン飯】美味しいおそばに罪はない

わちゃっとした元迷宮の主組に悪食王を添えてなお話。その2。
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「っんとに、あんたって人はっ。俺の目を盗んでまでそんなに食べたかったんですか」
「もちろんっ! このそばにはセンシと俺、それにミスルンと一緒に下処理をした新種の魔物の内臓が使われていて一体どんな味がするのかすっごく気になって仕方なかったんだっ! 試食会はまだかまだかと指折り数えて待っていたくらいにっ!!」
「・・・。これ魔物の素材入っているんです?」

「その弾力があって白く透き通ったやつだ」

「ああ。これ、ね……
「下処理した時に内臓自体の味も良かったが、野菜と肉に麺、特に濃厚であっさりしたスープと合わさるとまた違った味わいが出、」
「ちょっと黙っていてください」

「不味いか?」

「何も疑わず食べた際、とても美味しかったのが余計に拍車をかけ複雑な感情を受け止めきれずにいます」
「そうか、食べて駄目だったら無理しない方がいい。変わりに俺が、」
「食べます」

「めちゃくちゃ顔が虚無になってんじゃん」
「しっ。シスル言っちゃ駄目」

「おかわりもある」





「前々から思っていた事があるんだが聞いてもいいかな。勿論、不快な思いをするなら無理に話さなくていい」
「なーに? 改まっちゃって。何が聞きたいのか話してみてよ」
「それじゃあ、マルシルとシスル、それにミスルン君たち三人は迷宮の主になった事があるだろう。迷宮を作るのにあたって魔物の配置や生成について知りたい。法則性や制限とか」

「それか」
……

「(実にライオスらしい。スープ飽きが来なくて美味いな)」

「んー、私の時はシスルが形成した迷宮をちょっとだけいじった位で法則性とか制限とかよく分かんないまま主やってたし。あと、殆ど翼獅子が”こうがいいんじゃないか”とか”こうした方が君のためになる”とか。今思えば都合よく誘導されてやってたかも」
「つまり頭頂部に花が咲いていた歩き茸や花柄のコアトルも翼獅子が──」
「え? そっちの方が可愛くない?」
「・・・」
「ちょっと、その同意はし兼ねるなあって顔で黙るのやめてくれない!?」
「シ、シスルはどうなんだ?」
「話をそらすなっ」

「ぼくはあの本を手にした瞬間、迷宮の知識が流れ込んできたのはいいが、一番目指したかった迷宮には結局出来なかった」

「と、いうと?」

「迷宮の構造が似たり寄ったりになるのはそれが一番理に適っているって事。迷宮入り口を最強の門番に守らせても燃費が悪かったり、他にも手間が掛からなさとか、魔物を運用するのにあたり工夫や試行錯誤した結果、一階に歩き茸やスライムを徘徊させた方が楽って気付いた瞬間色んなのを妥協した。本当はもっとかっこいい魔術を使用した魔法生物を配置したかったのに……

「階層ごとの魔物の配置は?」

「下層まで侵入を許すって事は相手もそれなりに強いだろ? そこら辺は手間とコスパ度外視で配置、力で撃退出来ないなら搦め手を使う魔物を意図的に増やしてた。あとは、ぼくの場合”目”を使っての監視も併用して”お前ら”みたいに厄介な侵入者を直接排除、国民たちが変な企てをしていないか見守っていた」

「あっ! あれっ! 私、主になりたての頃、頭の中に映像が一気に流れ込んで大変だったー。よく全部監視出来たわね」

「──伊達に一千年間迷宮の主をやっていないって事だろ。もうなりたいなんて思わない」

「そう、だね……
「で、ミスルンは?」

「(マルシルとシスルの顔色が暗くなってるのに続けるのか、この野菜しんなりしても美味いな……)」

「私はシスルと違い迷宮が狂っていく速度が速かった。安定して維持する点ではシスルの方が上だ。魔物の配置や種類も外部からの侵入者を排除するばかりに気を取られ特に意識していない。迷宮の広さや主となった者の性格にも左右されるのだろう」

「そうなのか」

「望むもの全てを悪魔は叶え甘美なる夢を私に魅せた。だが、それははじめだけだ。緩やかで急速に崩壊する光景は今でも色濃く覚えている。綺麗で穏やかだった迷宮内は荒廃し、テーブルを囲んでいた仲間は消え、想い人の姿は魔物になり果て、私は悪魔に喰い散らかされ放り出された」

「質問いいかな」

「なんだ」

「人が魔物になるのか? ファリンみたいなものか?」

「それは違う」
「ぼくもそう思う。ファリンの場合、ぼくは彼女の肉体と魂、竜の亡骸と混ぜてあの姿にした。対して、こいつの場合は恐らく記憶の中を覗かれて魔物か幻影かで形成されたもの。だから迷宮の主の精神が崩れればそれに引っ張られて形が保てなくなる」

「へー」
「そういうものなのか」

「(何かに使えそうな内容だ。あとで書き記しておこう、この内臓の味も慣れてきた……)」



「いや~、食べた食べた」
「しっかり休憩したんですから、その分残っている公務気を引き締めてやって下さいよ」

「──はっ!?」
「どうした」
「そういえばシスルって迷宮作成や維持に魔力循環や魔物の食物連鎖、他にも沢、」
「待て。この先お前が言いたい事なんとなく分かるぞ」
「私たちで迷宮創らない!?」
「言うと思った。創らない。そもそもあれは悪魔の力もあって作成維持できた代物だ。もう一度あの規模とクオリティで創れったって無理。それに……

「私が許可しない」

「ほら」
「ああーっ」