enoki181
2023-12-02 21:52:57
18283文字
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【七不思議レポート】宿口友子と西田雪乃の場合【プレイログ】

ソロジャーナル「七不思議レポート」
https://talto.cc/projects/IiQj64HiYYIwQrR8drTPy



15日目

1d20+4+6 (1D20+4+6) > 15[15]+4+6 > 25
『ある人物の意外な秘密が明らかになった。調査値+1』
調査値:4→5

「ほら、忘れなかった。ここ最近毎日下級生の教室に来ている私だよ、健気だねってご褒美に昨日の話の続きをくれてもいいんじゃないかな」
「そこは忘れてなくても忘れてたよって言ってくれるものじゃないんですかぁ?」
 昨日の元気のなさはすっかりなりを潜め、相変わらずのほほんと後輩が言う。
「私がなんで七不思議を調べているか、ですね。それは、友達を七不思議の謎に近づけないためです。私はね、幽霊とか心霊現象とかが怖いのです。本当にね」
「怖がりなのに頑張るのはそれでかぁ。変に体を張るね」
「うふふ、では私にもご褒美をいただけますか? 体を張って頑張っている可愛い後輩ですよ?」
 後輩が軽やかに笑うが、瞳は笑っていない気がした。
「先輩は以前も七不思議の調査を手伝ったことがある。誰のお手伝いだったんでしょう? そして、その方は、事の顛末は、どうなったんですか?」
……いいよ、教えてあげる。その子はね、……亡くなったよ。私はね、調査中に、その子を死なせてしまったんだ」
「え……
「それも、私が殺したみたいなものなんだ。私はその子を助けられなかったのに、周りのみんなは口を揃えて『彼が自分から崖に落ちた』と言うのさ」
……
「小学生のときだった。夏休みの自由研究にするんだって……君と同じことを言って調査を始めたよ。彼は霊感がある子で、普段から幽霊がいるだのなんだの言う人だったんだ。みんないっつも信じていなくて、遊び感覚で私も着いて行って……
 拳を握り締める。
「だから君のことは放っておけなかったし、止めたかった。喧嘩をして遠ざけられるのは逆効果だってわかったからね、もうやめた。だけど、一人で行動するのはやめてね」
……はい」
 後輩は目を伏せてぽつりとつぶやく。あまりにらしくないから、私は笑ってしまった。
「ここで素直すぎる雪乃はちょっとキモチワルイ」
「なんなんですかもう」
 後輩の怒った顔、これはいい。ずっと私の方が振り回されてばかりだったので、してやったりという気分だ。ムッとされたけど一人で行動しない約束は取り付けられたし。満足した。
 そうだ、私はもう繰り返したりはしない。

16日目

1d20+5+6 (1D20+5+6) > 8[8]+5+6 > 19
『ライターかパートナーのどちらかが体調を崩す。 調査値+1or霊障値+1』
霊障値:6→7(ダイス目偶数)

 調査はまた明日から、と。そう言って別れて帰った次の日、私は熱を出して寝込んでいた。
「やってしまった……
 部屋で一人呟く。あの後輩が一人で突っ走らないかが心配だった。いや、ないとは思うのだけど……うーん……
 悩んでいると、スマホにメッセージの通知が届く。差出人は悩みの種からだった。「大丈夫ですか?」と心配の言葉がシンプルに送られてきたが、そこに他の感情、例えば苛立ちがのっているのかはわからない。
 また数分悩んでいると、メッセージが続く。ポンポンと連続するものだから慌ててしまった。
……ふふ」
 気分が落ち着くと頬が緩み、笑い声が漏れた。「先輩が来ないと調査が進まないんですからね」との文句は言いつけをまもっている証だ。
 そんな後輩の可愛らしさに癒しを得て、早く調子を戻そうと誓うのだった。

17日目

1d20+5+7 (1D20+5+7) > 2[2]+5+7 > 14
『神社にお参りに行き、2人でのんびり過ごした。霊障値−1』
霊障値:7→6

 幸いにも熱は一日で下がった。
「調査前にまた神社にお参りに行かない?」
 断られるかと思ったが、意外にも雪乃は文句を言わなかった。
 二人で神社に向かう。七不思議の調査を始めたすぐの頃にお参りしたことのある神社だ。
「作法はもうばっちりですね」
 お参りする私を見て雪乃が笑う。
「前教わったから。そんなに前じゃないでしょ。……そういえば、お稲荷さん作ってきてくれてた。また食べたくなったかも」
「あらあら。でも今日はないんです。前もって言っておいてくださいよ、先輩」
 帰り道、二人できつねうどんを食べた。お稲荷さん欲はぼちぼち満たされたし、いっかあ……
 またの機会に作って貰えばいいや、って。この時はそう思ってしまった。
 また、がこないことも知らずに。

18日目/5つ目の七不思議

1d20+5+6 (1D20+5+6) > 12[12]+5+6 > 23
『★七不思議に遭遇! 怖ろしい事態が起き、誰かが傷ついた。霊障値+2』
霊障値:6→8
★:4→5
場所:図書室

 今日から本格的に七不思議調査の再開である。改めて振り返り、五番目の七不思議ということに驚いた。随分調査を進めたものだ。
「後半に入ったし、残りはぱーっと片付けてしまいたいな」
「うまくいくといいですよねー」
 なんて、後輩はほんわかと返事をしてくる。
「それで、五番目は図書館で起こるんだって? 詳細が曖昧なんだよなぁ」
「隠されている感じがしますよね……ということで、習うより慣れろ、です」
 そう、すでに二人で図書室にいるのだった。
 放課後の図書館で何かが起きる、という情報しかない。二人で本棚の間を縫って歩く。
「隠されている、ってわけじゃなくてさ。語る口が無かったりしないかな?」
 巡らせるうち降ってきた思考を口に出す。きょとんとしている後輩に意図は伝わらなかったらしい。
「つまり、死人に口なし、ってことだよ」
「こ、こわいこと言わないでください。まるでこれから恐ろしいことが起きるみたいじゃないですか」
 やれやれ。こんなことを言いながら、七不思議調査を始めたのは雪乃のほうだというのにね。しかも止めないって強情だったんだから。最近は怖がりを隠さなくなってきたな。
 辞典コーナーの中に一冊だけ違う本が挟まっていた。明らかに薄くて、国語辞典や英和辞典なんかに挟まれると肩身が狭そうだった。
「図書委員が間違えて片付けるには変だね」
 戻しておくべきかと抜きとろうとする。指をかけたとき、背筋に寒気が走った。
「先輩! 危ない!」
 雪乃の悲痛な叫びにハッとしたとき、本棚が倒れてきた。重い辞書たちが床にぶつかる鈍い音が響く。
「大丈夫ですか!?」
……うん、まあね。それより、あの本は?」
 一瞬の出来事で、頭を守るだけで精一杯だった。腕がじんじんと痺れている。本を抜き取ることはできたはずだけど手元には残っていない。まあ、辞書に紛れてもすぐ見つかるはずだろう。なんたって厚みが全然違うのだから。
 そう思ったのに、本が見つからない。音を聞いて駆け付けた司書の先生とも探したうえでこれだ。そういえば、背表紙にタイトルの記載がなかったかもしれない。どうやっても思い出すことができないのだ。
「図書館の本が消える? 存在しないはずの本がある? それに手を出そうとすると怪我をする? ……うーん、これはなんというか。噂が曖昧になってしまうのもわかる気がします」
 ぴったりと隙間なく片付けられた本棚を見ながら、後輩が不思議そうに言った。

 ――このとき口にしてしまったことを、私はとても後悔している。言霊というのは本当にあるのかもしれない。

19日目/6つ目の七不思議

1d20+5+8 (1D20+5+8) > 16[16]+5+8 > 29
『★七不思議のせいで、ライターあるいはパートナーが傷つく。霊障値+2』
霊障値:8→10
★:5→6
場所:音楽室、ピアノの前

「昨日の怪我はまだ痛みますか?」
 雪乃が不安そうに聞いてくる。重い辞書が当たった衝撃で痣ができてはいるけど、日常生活に支障はない程度だ。だから「大丈夫」と伝えた。
「それより、今日は音楽室の七不思議? どんなもの?」
「ええとですね。『音楽室に訪れるとひとりでにピアノが鳴る』というものですよ」
「あー、よくある話だ」
「よくあるんですか」
 雪乃がおそるおそる聞いてきた。この手の噂を信じて怖がる様子は面白い。からかってしまいたくなる。
「実際は生徒の自作自演なことが多いよねー」
「あ、そうなんですか! びっくりしました」
 くすくすと笑っていたのも束の間、すぐに空気が変わった。数歩先の音楽室からピアノの旋律が流れ始めたからだ。
……ほら、ただ先生か生徒が弾いてるだけかもしれない。開けて確かめてしまおうよ」
 扉は閉まっていて、部屋の中は見えない。だから怖がる必要などないはずなのに、ぞっと足元から震える気がする。どうしてだろう。振り払うように、私は扉に手を掛ける。防音の効いた音楽室の扉は重くて、開けるのに力が必要みたいだ。
「あの、先輩、やっぱり開けるのはやめませんか。まるで、私たちが来るのを待っていたみたいに音が鳴りだしたじゃないですか……不気味で……
 雪乃が怯えている。確かにタイミングが良すぎるかもしれない。それに、なんだか音が少しずつ大きくなっているような気もする。まるで、中にいる誰かが私たちに聴かせるために演奏しているみたいに。
……そう、だね。演奏の邪魔をするのは悪いよね」
 怪異なんて存在しないのだ、あくまで人間の仕業なのだ。七そう信じて力を抜く。
「なんでもないことが七不思議だなんて騒がれることもある、きっと今回はそういうことだね。私たちの足音だって聞こえたのかもしれない。それで、驚かせてやろうなんて、いたずらに思ったりだとかさ」
 笑いながら音楽室に背を向ける。階段を降りようとしたそのとき、鍵盤が叩かれる音が誰かの歌声に変わった。雪乃の目が驚きに見開かれたとき、足が止まり――彼女は滑り落ちた。
「雪乃!」
 慌てて駆け降りて寄っていく。
「噓……なんで……
 尻もちをついた雪乃が呆然と呟く。
 聞こえてくるそれは、有名な賛美歌の旋律だった。神を讃える美しい調べが、まるで私たちの訪れを待っていたかの如く響き渡っている。その音はだんだんと強まり、扉越しにでも聞こえていた音色に私たちの思考は支配された。
 雪乃が吸い寄せられるように、階段の上――まるで音楽室の方へと――目を向けた瞬間、私は彼女の手を掴んだ。
「帰ろう」
 あれに応えてはいけないきがした。応えたくて堪らなくなっていたけれど、だからこそ。
 ハッとした雪乃が頷く。立ち上がろうとして眉間に皺を寄せた。
「足、挫いちゃった……
 溜め息を吐いて肩を貸すことにした。

19日目・続

1d20+5+10 (1D20+5+10) > 5[5]+5+10 > 20
『調査後、学園内を歩いている時に何かにつけられているような気配がする。霊障値+1』
霊障値:10→11

 ……後ろから何かがついているような気がする。そっと窓ガラス越しに伺っても何も見えない。肩を貸す雪乃には言わず意識して歩くうち、下駄箱に着いた。

19日目・続続/7つ目の七不思議

1d20+5+11 (1D20+5+11) > 17[17]+5+11 > 33
『★七不思議によって死者が出る。霊障値+3』
霊障値:11→14
★:6→7
場所:グラウンド、プレハブ

 靴を履き、二人で外に出る。帰るにはグラウンドを横切らなくてはならない。このまま家まで送った方がいいのだろうかと考えていたときだ。
「そういえば、此処なんですよ。次の、最後の七不思議の場所」
 雪乃がぽつりと言う。え、と間抜けな声を出して足を止めてしまった。
 そういえば、今日のグラウンドは随分静かだ。部活動がないのだろうか。……いくつもの運動部が一斉に?
……何かおかしい、帰ろうよ」
「逆に、誰にも邪魔されずに調査できるチャンスだとも捉えられます」
 さっきまで怖がっていたくせに変に頑固だな、この後輩は。
「七番目はですね、こんな話なんです。『放課後、人気のない廊下で人ではない何かに手を引かれて、気がつくと誰もいない部屋に一人きり。部屋の外には「お前はいらない子」という張り紙が貼られていた』」
「グラウンドで起きる話じゃなかったの?」
「これから出てくるんです。これの続きはですね、」
そう言って一歩、足を進めていく。ちらりと薄暗い中に目をやると、職員用の駐車場にも人の気配がないように見えた。妙な不気味さを感じる。
 諦めて校舎の方を見ると、渡り廊下が目に入る。どくん、と心臓が跳ねるように跳ねて、息をするのを忘れた。誰もいない廊下にずらりと貼られた何かが白く発光している。

 ――お前はいらない子。

 しっかり見ようとしなければわからないぐらい薄れて小さい文字だが、見えても見えなくても不気味だ。その紙を目線だけでざっと数えてみると、壁の端から端まで紙が隙間なく並んでいた。
「続きはこうです。『グラウンドから見える廊下にその張り紙を確認できたとき、誰かが部屋に連れていかれている。発見できるのは見つけた者のみだ』」
 雪乃が私から離れて歩き出す。怖がりのはずが、落ち着いて淡々と行動しているように見えた。足を挫いた後輩を捨て置けず、私もそれに続いた。
 渡り廊下から校舎内へ入る扉は施錠されていない。外靴のまま上がる。遠目で見た通りの張り紙が窓を覆いつくしていた。教室がいくつか並んでいて、そのひとつひとつを開けていく。
「私は、さっきのピアノと歌に呼ばれた気がしました。先輩がいてくれたからそちらには行きませんでしたが……学校を出るまでもずっと、機会を窺われていたような。もし別の誰かが連れていかれてしまったのなら、もしかして、私を呼べなかったから代わりになってしまったのではないか。それなら、助けなくちゃいけないんじゃないか……そう思わずにはいられないんです」
 ぽつりぽつりと囁きながら扉を開けていく雪乃を、私は止めることができなかった。
 最後の教室の扉を開けると、そこは他の部屋と違っていた。白い紙の上に寝転ぶ人影。紙は原型を止めないくらいに赤黒く染まって、その赤い液体のもともとの持ち主だったのだろう人影は、冷たくなっていた。
……まに、あわなかった……
 雪乃の呆然とした声が響いた。

終幕

1d10+14(1D10+14)>8[8]+14>22
『ライターかパートナーのどちらかが死ぬ。』

 私も呆然としてしまって、その場に立ち尽くすしかできなかった。そのうちに教師がやって来て、あっという間に騒然となった。
 学校にいる者はすぐ帰るようアナウンスがあり、まだこの校舎にこんなに生徒が残っていたのかと驚いた。運動部も普通に活動していた。あのタイミングで誰もグラウンドにいなかったのはたまたまだったという。
 私たちは警察の事情聴取を受け、それぞれ家に帰された。

 それから学校はしばらく休校。生徒が死んだらしい、という話はすぐに広まった。しかし、その詳細は出てこない。意図的に情報が隠されていると感じた。
 休校が開ける前、私も教師と警察から詳細の口止めをされた。あの張り紙からいじめを苦にしての自殺だと考えているらしい。しかし、証拠が何も出てこなくて困惑している様子だ。死亡した生徒の親からもそんな訴えはない。第一発見者の私たちも接点がなさすぎて容疑者とは疑われなかった。

 あれから、雪乃は七不思議調査に誘いにこなくなった。
 七つ見つけたのだからこれでいいんだろう。怖がりだったのに無理をしていたんだから、これでよかったんだ。私も付き合わされて大変だった。
 ただ、あのお稲荷さんはもう一度食べたいかもしれない。結局使わなかった除霊グッズの話を聞いてもいいかもしれない。自由研究だって冗談を言っていたけど上手くまとまったのかってからかってもいいかもしれない。

 ――西田雪乃の死を知ったのは、卒業する頃の話だった。

 私が考えていたことは、すべて「かもしれない」で終わってしまった。あっけなかった。
 詳しい話は知らされなかった。なるほど、第一発見者じゃない一般生徒はこういう扱いを受ける物なんだ。二度も同行者を死なせてしまった私には逆にはじめての経験だった。学校側も大きな話にはしたくないよな。一年間の間に生徒が二人も死ぬなんて困るだろう。
 僅かな情報だけは漏れて聞こえてくる。学校で亡くなった、不思議な状況だった、そんな噂が耳に入った。もしかしたら、はっきりと呼ばれてしまったのだろうか。音楽室から聞こえた音を怖がった雪乃の姿を思い出して、…………、どうもしない。短い間しか一緒にいなかった、ひと時しか人生が交差しなかった相手だ。話をした時間なんて一ヶ月にも満たない。
 それなのに、一生忘れられなくなってしまったじゃないか。どうしてくれるんだ。

 ……とかなんだか言葉にしたものの、別に忘れる。忘れて私は三年生になる。高校最後の年なんだ、大変なんだぞ。構っていられるか。

 大学でも学生らしく勉学に励んでいたある日のこと。一人の後輩から呼び出された。

「あの、噂で聞いたんですけど。宿口先輩は昔七不思議を調べてたことがあるって、本当ですか?」

 人の噂に戸は立てられないものである。彼女に声をかけられるまで、私はそのことをすっかり忘れていたのだ。