ななき
2023-07-07 16:56:27
10699文字
Public 吸死
 

可哀想な同居人

(ドラロナ)フッたくせに手を離せない吸血鬼と、恋人と別れた日は甘やかしてもらえると学習した退治人の話。どっちにも若干クズ要素あり。年齢制限はなくてもいいくらいの性描写あり。(補完ページに進まない場合は)この二人はずっとディスコミュニケーションのセフレのままです。エロの練習でもありましたが、エロむずかしい。
### みつからなかったハピエンを無理やり見つけて3ページ目に追加しました。もやっとした終わりが気になる方だけどうぞ。ジョンは最強なので。 ###
(2023.8.30 加筆修正)



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いつものノリのハピエンオチページです。
前頁までで完結済みです。続きはいらないな、と思ったらBack。
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 その日の依頼人は、吸血鬼と人間のカップルさんだった。古い一軒家を借りたものの、庭に吸血虫が沸いて困っていると。その退治の依頼だ。
 俺がせっせと下等吸血鬼叩きを振り回し、駆除剤を撒いている間、相棒は使い魔を抱えてカップルと一緒に縁側でお茶していた。

 漏れ聞こえる話では、田舎から駆け落ち同然に新横浜にきたばかりらしい。俺に依頼したのもネットで見つけやすかったからだと。地元ではそもそも高等吸血鬼が少なく、異種族のパートナーは好奇の目で見られて遠巻きにされていたとポツポツと語る依頼人さん。
「今時、吸血鬼と人間だからと気にすることではないだろう。特にこの新横浜ではね。大丈夫、ポンチな変態は多いが、ほら、そこのゴリラとその仲間に頼ればいい」
 だから安心して幸せにおなりなさい、と古い吸血鬼の顔で言う声には嘘もごまかしもなく、年若い相手を気遣う響きだけがあった。

 丁寧にお礼を言ってくれたふたりの女性。この街で幸せになってほしいと、俺も思う。

 ◇

 新横浜の道は熟知している。ぼうっとしてたって考え事をしていたってグルグル回る言葉を我慢していたって家路は迷わない。

 パタンとドアが閉まれば我が家だ。

 吸血鬼が飯の話だとか手を洗えだとか言っているのが、どこか遠くのテレビのように聞こえている。
 帰り道、ずっとずっと考えていた。もう閉じこめておけなかった。いつかのあの明け方のように。
「あのふたりを祝福できて、俺とお前じゃ駄目な理由は何」
 空気が凍る。
 何が、とは聞き返してこなかった。
「そういう対象として見られないってわけじゃねぇよな」
……
「答えろ」
 吸血鬼は何かを言おうと口を開いては閉じてを繰り返している。結局、そこから出てきたのは諦めたような溜め息だった。
「かわいそうだろう。一時の気の迷いだろう言葉で、太陽の下で幸せになれる男を夜につなぐのは。彼女達は、お互いにその覚悟ができた強い人達だと思うがね」
 なんだそれ。
「は、勝手にかわいそがって、勝手に気の迷い扱いか。そのくせ誘いを断りもしねぇ」
 さすがに癇に障ったか。一瞬、赤い目がギラリとしたように見えた。
……居もしない恋人と別れる芝居をやめなかったのは誰だね、先日29回目の失恋をしたロナルド君」
「腰抜け吸血鬼にチャンスやっただけだろうが。あとごまかすな、お前が知ってる分でも一回足りてねぇぞ」
 お前にフられた分が。
 睨み合いにはならない。ドラルクはこちらを見ていない。コイツは煽りもおふざけもない本気の口論はギリギリまで避けたがる。いまだって、きっかけがあればこの場から逃げ出して有耶無耶を企むだろう。

 このまま珍しくも口をきかない喧嘩に突入か、という時。
 物言いは、玄関横から入った。

「待て。お前たち、とっくの昔に恋仲ではなかったのか」
 事務所イチ、常識のある金魚の困惑した声。その水槽の足下ではジョンがあんぐり大きなお口を開けている。

……え?」
 ……そう、だった。今、この部屋には俺たちだけでは……
……ふぁっ」
 間抜けな声を残してクソザコが砂山になる。それを目の前に俺は動けない。青くなるべきか赤くなるべきかで忙しいので。あ、正解は紫色かも。
「あの不自然な小芝居、我が輩らへのヘッタクソな気遣いかと」
「小芝居?」
「誰が歌えないし演技も出来ない大根な方の私じゃ!」
「何の話をしとるんだ」
 テレビ横からも声が飛んでくる。
「ええ? じゃあ、師匠達、付き合ってもいないのにあんなにイッチャイチャかましてたんですか」
「いちゃっ……
「嫌な予感がするけど念のためそれも何の話……? やっぱりいい、やめて」
 ねぇ、そのジョンさんとのアイコンタクトは何ですかキンデメさん。
「同居人と出来上がってしまったのは言い出しにくかろう、自分達から話してくれるのを待ってやりたいと使い魔が言うので放っておいたが」
「ヌン……
 わあ、怒りのオーラって目にみえるんだな……。思わず後退りする。
 世界一の丸。最弱の吸血鬼の唯一にして最強の騎士が激怒していた。

 ジョンはその小さい足で立ち、小さい腕を組んで、『激怒』の文字を背負い、愚かな俺たちに申し渡す。

ヌヌヌヌヌヌ ドラルク様
……はい」
ヌヌヌヌヌン ロナルドくん
「は、はい」
ヌイヌ 正座


 ……かつてその身をもって対話の重要さを吸血鬼に示し愛を証明した使い魔によるお説教は大変身に染みた。それはそれは大変な迫力で、一個一個、問い詰められ理詰めで諭され気づいたらドラルクときちんとお付き合いすることになっていた。

 今更、ちゃんとお付き合いってどうしたらいいんだよ!? 手ぇ繋いだこともないんだけど!?