無窓居室
2024-03-17 14:01:16
6552文字
Public
 

Pixiv Sweet Valentine 2024

Pixivの2024年バレンタイン企画に応募した😈👹です。
タイッツーのフォロワーさんから「🍦ちゃんに嫉妬する😈」というアイデアを頂きました。
元々はもっと😈が嫉妬で病んでる感じだったのですが、キャラが壊れ過ぎかなと思ってやめたら余計に偽物っぽい。
あと👦が不憫な役回りですみません。



 青鬼ちゃんも眠った深夜、アカネはブラックに呼び出されて公園へ来ていた。着信の名前を見て無視しようかと思い、結局できずに通話した相手の声はいつも通り考えを読ませない。
 読めないなりに先日の無礼を詫び、仲直りしたいと言ってくる口調には誠実なものを感じた。どのみちアカネにはブラックの本心など分からないのだから、もっと高飛車な口を利いても構わないはずなのに。

「なんだかんだ言って、本当はいい奴だからな……ブラックは」

 いつからかアカネの中に、それだけは動かぬ確信がある。だからブラックと仲違いをするたび、募るのは相手への憤りではなく自己嫌悪だ。

……なんでアタシなんかと仲直りしたいんだろ」

 考えれば辿り着くのはやはりブラックが良い奴だからという答えで、ブラックに単純な〝良い人〟以上の感情を抱いてしまったアカネを苦しめる。
 空は町の明かりを映して群青色に星を隠している。二月の夜気に実際以上の寒さを感じ、自分の肩を抱いて俯いていたアカネに、頭上からよく知った声が呼びかけた。

「お待たせしてしまいました、来てくれたんですね!」

 本当に急いで来たのだろう。かなりのスピードを出したまま空中で旋回し、音もなく着地する。背中の翼をたたむとそこにはもう人間の目には平凡な若い男にしか見えないだろう悪魔の姿があった。

「寒かったですか?屋内での待ち合わせにすればよかったですね、気が利かなくてすみません」
「いや、全然平気……って、それ

 実際、ブラックを前にしただけで鬼の体は寒さをまるで感じなくなってしまった。アカネの目は今はブラックが抱えて来た赤と黒二つの箱、正確にはそのうちの赤い方に釘付けになっている。ブラックは何もかも承知の上と言うように、黄色いリボンのかかったそれを公園の街灯へかざすように掲げた。

「はい。アカネさんが作ったチョコですよね、 バニラさんから渡されたんです。本当はオレちゃんのためのものだったんじゃないかって。嬉しくてつい受け取っちゃいました」
「そ、そんな……無理しなくていいよ!」

 軽くパニックになり箱を取り返そうとするアカネの手へ、ブラックは赤い箱を渡さないまま代わりに黒い箱を押し付ける。真っ黒なハート型に再生マークのついた箱を見て、アカネは困惑の表情を浮かべた。

「な、なんだこれ
「思ったより手間取って遅くなっちゃいました。チョコレート作りって大変なんですね。世の女の子さん達を尊敬しますよ」
「ブラックが作ったってこと!?」
「どうしても今日中にお渡ししたくて」

 素っ頓狂な声を上げるアカネにブラックは愉しげな笑みを深くした。傍では味見でチョコレートを食べ飽きたカメラちゃんが、昼間の青鬼ちゃんよろしくお腹をさすっている。二月十四日ももう間もなく終わりだ。

「バニラさんのご厚意でオレちゃんの手に渡ったチョコですが、アカネさんに無断で食べるわけにいきませんから。オレちゃんに受け取る資格があるかどうかお聞きしたかったんです。……それは、ま、賄賂だと思ってくれていいですよ」
「腹黒い悪魔の言いそうなことだな」

 チョコレートを受け取るための賄賂がチョコレートとは、ちぐはぐで自分達らしいかもしれない。手の中に収まった黒いハートを見てアカネは思わず笑ってしまい、ブラックが穏やかな目で見つめていることに気付いて肩を竦めた。

「ごめん」
「いいんです」
「受け取ってくれるのか?」
「許してくれるんですか?」
「ちゃんと食べろよ」
「アカネさんも」

 交換した箱を手にしたまま、どちらからともなくわだかまりの流れた視線を合わせる。

「ハッピーバレンタ……
「これが友チョコってやつか!これからもよろしくな、ブラック!!」

 気取った台詞を屈託のない声で遮られてブラックは苦笑した。アカネが気付かないので次の手を打つべく罠を張る。

「オレちゃんの家で一緒に食べませんか?とっておきのコーヒーを淹れますから」
「アタシ夕方以降にコーヒー飲むと眠れなくなっちゃうんだ。もう深夜だし」
「うーん、そう来ますか……
「何?」

 誘い文句の裏の意味など考えもせず不思議そうにしているアカネに、さしもの悪魔も目を閉じて考え込むそぶりを見せた。決してアカネにブラックに対する気がないわけではない。とにかくブラックと仲直りできたことが嬉しくてはしゃいでいるのだ。

「ま、いーです。アカネさんの明日のトレーニングに差し支えてもいけませんし、チョコの感想教えて下さいね」
「おう!必ずラウィンするからな。おやすみ、気をつけて帰れよ!!」

 るんるんと軽い足取りで公園を後にするアカネの背中を、ブラックは目を細めて見届けた。