無窓居室
2024-03-17 14:01:16
6552文字
Public
 

Pixiv Sweet Valentine 2024

Pixivの2024年バレンタイン企画に応募した😈👹です。
タイッツーのフォロワーさんから「🍦ちゃんに嫉妬する😈」というアイデアを頂きました。
元々はもっと😈が嫉妬で病んでる感じだったのですが、キャラが壊れ過ぎかなと思ってやめたら余計に偽物っぽい。
あと👦が不憫な役回りですみません。



 翳りゆく住宅街の道を、ブラックは助手と当てもなく歩いていた。アカネがしばしばトレーニングや撮影をしている、今日も来ているかもしれない公園はほど近い。行こうと思えばすぐなのにどうにも足が向かず、空を飛んで探し人の有無だけ確かめるのも気が進まないので、目的地を誤魔化すための散歩は終わりが見えない。
 このままでは夜になってしまう。何に対してか間を持たせるために、助手に向かって嘯いた。

「あの程度のことであんなに怒られるとはね、もう少し骨のある方だと思ってたんですが」

 てっきり、チョコレート絡みのことでからかってやれば自分を見返そうと奮起して、興味のないイベントにも参加してくるかと思っていた。早い話、期待していると伝えたつもりだったのだが。近頃ずいぶん曖昧になった距離感に足を取られて限度を見誤ったらしい。
 自分らしくもないしくじり方をしたものだと思いながら、手持ち無沙汰にさとしの部屋を虫だらけにしたり岩石を落としたり溶岩を沸かせてみたりしていたら、とうとう家から追い出されて町をぶらついていたというわけだ。

……怒らせたんじゃなくて、悲しませたんだろうって?大丈夫ですよ。アカネさんなら」

 意外なほどに厳しい助手の追及から逃れるためではなく、本心からそう思う。あれほど真っ直ぐに強くなった今のアカネの心に爪を立てるのは、悪魔であってもそれなりに苦労する。いつか自分は視聴者へのアピールとは別の意味で、アカネの気を引くために心を砕くのだろうかと想像するほどに。
 助手の親身な小言をのらりくらりと交わしていると、目の前に羽のある丸い輪が飛んで来た。見覚えのある形だ。

「バニラ様!見ツケマシタ、ブラック様デス!」

 バニラちゃんのドローンカメラ型アシスタント、ワッカちゃんが音声を発すると、曲がり角の向こうから何か手に持ったバニラちゃんが駆けて来た。

「ブラックさん!これ、受け取ってください〜!!」

 見ればバニラちゃんが手渡してきたのはチョコレートの箱らしい。それも箱の質感といい、微妙にズレたリボンといい、既製品という感じはしない。手作りのものだろう。

「これはこれは。バニラさんからチョコをいただけるなんて思いもしませんでした」
「違うです〜、これは私がアカネさんからもらったチョコなんです」
「はい?」

 ブラックは目の前のバニラちゃんを見つめ、それからアカネを思い浮かべた。意外な展開もあったものだと巡らせ始めた思考を幼い声が引き戻す。

「私がもらいましたけど、本当はアカネさん、ブラックさんに手作りチョコを食べて欲しいんだと思います。だからあげます……お腹空いてますけど」
「バニラ様ハ、ブラック様ヲ探ス間ニ撮影デ使ウハズダッタちょこれーとヲ全部食ベテシマッタンデスヨ。デモソノちょこダケハ我慢シタンデス。受ケ取ッテアゲテ下サイ」

 ワッカちゃんにそう言い添えられれば是非もない。バニラちゃんの身長に合わせて膝をつき、恭しく受け取るとバニラちゃんは嬉しそうに笑った。
 しかし箱から手が離れた瞬間、その天使の笑みが不意に貪欲な獣に変わる。

「安心したらお腹空きました〜!うがぁああぁぁぁあ!!」
「これをどうぞ」

 暴走状態に入りかけたバニラちゃんを足止めする土塁のように、山ほどのブラックライジングが降り注ぐ。正気に戻ったバニラちゃんが目を瞬かせた。

「このブラックライジング、美味しいです〜!ほっぺた落ちそうです〜」
「コレダケアレバばれんたいんでーノ企画ニモナリマスヨ、助カリマシタ!!」

 喜ぶ二人に別れを告げて、ブラックは何事かカメラちゃんと話し合いながら住宅街を後にした。