最後の倉庫へ目指すため、バツたちは怪物討伐隊のキャンピングカー・サンゴジュナス号に乗っていた。
――バツたちは頭を抱えていた、車内のテーブルに乗っている大きなプレゼント箱に。
それは、この国に入ったばかりの時、いつもはバツたちの目の前に達憚る松海が持ってきたものである。「皇帝サマの勅命だからな
……」と、バツ顔とは言え彼女から呆れの感情がにじみ出る様子に、バツたちはちょっと同情したくなった。
――肝心の中身は宿敵であるニクラウスからの「大遅刻のバレンタインデーの義理チョコ」と称した何か。そのまま溶かして銀カップに流してアラザン、カラースプレーをぶちまけて固めた、手作り感満載のチョコレート。丁寧なことに手紙も添えられていた。
親愛なるバツと愉快な仲間へ
バレンタインデーが過ぎ、
スーパーで大安売りしていたチョコを
買い集めて溶かして作りました。
味はまぁまぁ保証する。みんなで仲良く食べてね。
P.S.:そのお人形もあげます。大切に飾ってね。
セントールより愛を込めて ニクラウス
「なんであいつからチョコ貰わんきゃいけねえんだよ!義理すらねえだろ!」
と、溜息を吐くバツ。
「だよな
……毒入りの可能性もある」
マルはチョコの1つを取り出して、凝視する。見た感じはただのチョコだ。しかし、仮にこれが皇帝からの罠で毒入りだとしたら、無駄に不死身のバツ以外は全員倒れてしまう。
……一応、今は回復魔法をより習得しているディアの魔法か、ユーニスの薬で何とか処置してもらえばいいのだが。
「そういえば、今2月の終わりごろか。セントールでは丁度製菓用のチョコが投げ売りされてるんだったかな。それにしたって
……」
バツと同じく頭を抱えるばつ美は、「悪い皇帝Tシャツ」を着たニクラウスがスーパーで「大特価!」と乱暴にワゴンに積まれたチョコを大量にカートに入れる姿が、頭にちらついて離れない。
「それより、これ、どうする~
……?」
ディアはプレゼントボックスの中に入っていた、細長い箱を取り出した。恐らく添えられた手紙に書いてあった「お人形」とはこれのことだろう、中には、腕と足がクネクネ曲げられる、ニクラウスの針金人形が入っていた。彼女は人形を取り出してよく見た。
――クネクネ曲げられる腕と脚、無地の赤い丸型の胴体パーツとホットパンツにしか見えない下半身パーツ、明らかに女物にしか見えない形をした無塗装の靴パーツ、そして、微妙に離れている上、丸い頭に焦点が合わない目と黒くべったり塗っただけの口、落書きのような眉毛と鼻
……どう考えても、あのセントール皇帝を模したものにしてはお粗末過ぎた。
「なにこれぇ
……このお人形、なんか怖いよ」
「どれどれ
――うわ」
さんかくも、ディアから人形を手にするが、一目見るや否やすぐにテーブルの上に置いた。次に手に取ったのはバツだった。
「これ、ひょっとして
……『ニクラウス・そうめん人形』じゃねえよな
……?」
「ニクラウス・そうめん?」
その場にいる全員がバツに顔を向ける。
「なんか結構昔、なんかの記念でどっかのおもちゃ会社がニクラウスに献上した記念品、ってのは聞いたことがあって、他にも100体配布するつもりが造形がアレで、当時のお偉いさんが全力で止めてお蔵入りになった
……話らしいが、まぁ、うん
……」
「封印するのも納得だな。乱暴に扱ったら呪われそう」
と言いながら、マルはバツから人形を取り、それぞれのパーツをバラバラにし始める。パーツ全てが分解され、テーブルの上は手作りチョコレートと、ニクラウス・そうめん人形のバラバラ死体が転がった。その様にばつ美は驚き、ニー姫は突っ込んだ。
「ぎゃー!!」
「『呪われそう』って言っておきながら、バラすんかーい!」
と、マルは今度は人形を組み立てる。そして組み立て終えると、それでバツをつんつん突っついてみた。
「ヤァ、オレハニクラウスダヨ。ソウカイソウカイ、ソンナンジャオレヲタオセナイヨ」
「ぐえ」
「なにやってんの、マル?」
普通の顔だったら丁度半目になっているような声色でさんかくは言うが、マルはそれに構わずに器用に人形でチョコレートを掴んでみせた。
「オレガツクッタチョコダヨ」
「じゃあ、あんたが食えよ」
と、ばつ美がチョコレートを人形の腕から取って、顔にぐりぐり押し付けた。
「グワー」
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.