軍服をごてごてと飾り付けたような衣装を身に纏う妹が、自身の機体の前でポスターのための撮影をしている。気のない表情でそれを眺めながら、アンタレスはパイロットスーツの上から羽織ったフライトジャケットのポケットに両手を押し込んだ。
アストライア・オラクルがケーニヒスベルクの軍基地でライヴをするというニュースは軍基地内の話題を攫った。とりわけ、あのアストライア・オラクルが、軍人である自分の妹であると知らなかった人間達が騒いでいる。救いなのは、それを知ったからといってわざわざ声をかけてくるような軽薄な人物が、今のところ現れていないことだ。ただでさえ他人の相手など面倒臭いことは好かないというのに、面識のない人間から声をかけられるなど冗談ではない。
と、そんなことを考えながらも、セシアが持ってきていたドリンクを口へ運びかけた時だった。撮影を終えたらしいアストライアがマネージャーからなにかを受け取り、こちらへ歩いてくるのが見え、アンタレスはため息とともに踵を返そうとしたが、それよりも速くアストライアの右手が腕を引っ掴んだ。
「……仕事があるんだ」
「いいから、来れたらでいい」
言いながらフライトジャケットのポケットに2枚のチケットを押し込むアストライアにため息をつき、アンタレスは続けて言い返す。
「いつだって来れない。おれにこれを渡しても、席が無駄になる」
「なら誰かにあげてよ。転売はしないで、これは私が自分で買ったの。自分のライブだからって、なんのイカサマもしてないわ」
少し怒ったような口調で言うアストライア。いつものことながら、この手のことを言い出すと決して退くことのない妹に、それ以上言い返すのが億劫になったアンタレスは目を伏せ、ため息をついて「わかった」とだけ口にした。
「……またね、兄貴。ステージで待ってる」
アンタレスが逸した視線に、アストライアもまた少しだけ視線を落として言った。
いつからか、こちらを真っ直ぐに見ることのなくなった妹のこの目が苦手だった。まるで、懸ける願いを必死に押し殺すように伏せられた、自分と同じ色の目が。踵を返してマネージャーの元へ戻っていく後ろ姿に視線を戻した時、機体を片付けるよう声を掛けられた。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.