【フィル風】たまの甘えた膝の上

中々おねがショタに甘えてくれないので、ご都合主義猫化したおねがショタに甘えてもらうお話。
フィル風編。※アン風前提のフィル→風。

突如艶やかな黒髪の間からひょっこり現れた三毛柄の耳、ズボンに押し込められ窮屈から解放された三毛柄の尻尾が持ち主の感情に合わせ揺れ動いてしまう。
「フィルくん、楽しい?」
幼い指先が新たに生えた猫耳の輪郭をなぞる感触が意識に関係なくぴるると震え、短い毛に覆われた尻尾を撫でられれば本来ない場所から何ともこそばゆい感覚が臀部を経て脊髄に伝わる。
「(一日、一日耐えれば大丈夫、のはず……)」
風子は自身の首元に付けられた首輪を指で触れ盛大な溜息を吐いた。



事の始まりは至って単純なものだった。

課題達成やメンバー集め等々、各国を周り訪れるのに合わせ風子は曰くつきの物──古代遺物収集を今の今まで欠かさず行っていた。半ば数百年の間に擦りこまれた癖と言っても過言ではない。僅かばかりの時間を見つけては現地での実しやかな噂を頼りに譲り受けたり、時には財力に物を言わせ買い取っていたりしていた。役に立つ立たないは二の次。大抵のものは一般人にとって手に余る危険性があり大きな被害が起きる前に回収していたともいえる。
最近は専ら否定能力を持っていない組織の調査員達が総出でかき集めているものの、風子は長年しみ込んだ動きで古代遺物収集につい勤しんでしまう。
このあと件の問題を起こす古代遺物も真っ当な流通経路から外れた品が法外な値段で売買される闇市で見付けたものだった。
外套の帽子を目深に被り店先を注視していた風子の視線が古びた首輪に止まる。年季の入った木箱に収められた首輪から発せられる古代遺物特有の肌がヒリつく様な気配に風子は確信した。
そして、店主にとっては然したる価値がないにもかかわらず、風子を現地民じゃないと分かるや法外な値段を吹っかけてきたが、この手のやり取りは慣れに慣れていた彼女は逆に店主を手玉に取り殆どタダに近い値段まで値切り倒したのだった。

その後の任務も順調に終わり、自室に戻って一息吐いた風子は今日回収した古代遺物を解析班に渡し損ねたのを思い出した。日々の習慣化された動きは全くもって侮れない。知らず知らずのうちにテーブルの上に置かれてしまっている木箱を風子の手がそっと持ち上げる。
とても味わい深い木箱の蓋を開ければ、木箱に負けず劣らず非常に趣深い首輪が風子を仰ぎ見ていた。くすみ切った首輪の色は元が何色だったのか面影すら残っていない。室内灯の下、やや青み掛かっている気もしなくはないものの、角度によって別の色が次々に顔を覗かせ安定しない。シャボン玉の膜のように移ろうくすんだ色が風子の瞳に映り込む。
「(……明日朝一で持っていけばいっか)」
幾通りにも見える色の特定を止め木箱の蓋を閉めテーブルに再び置き、就寝前に熟す一通りのことをし終えた風子は早々にベッドに潜り込んだ。