鹿
2023-11-12 00:05:26
6088文字
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ちいさくてかわいいやつに影響されたやつ

煮付けきっかけで書き始めたのに煮付け要素が入れられなかったやつ

 この村の伝説? ええまあ、あるにはありますが。そうは言っても、口伝えで出所も定かでない、いい加減なものでございますよ。どこかの土地の有名な話を聞いたものが、適当に伝えるうちに、この土地の話ということになったのではないかと村の者は……それでも話してほしい? 変わったお方でいらっしゃいますね……
 人魚の肉の話です。ご存知でしょう? 食べると不老不死になるという……昔々、この村の男がその肉を食べた、という話です。
 男は実に勇ましく、近隣の村との諍いで大層手柄をあげていたそうです。しかしながら、危険を顧みないその性格が災いし、瀕死の傷を負ってこの海岸に倒れていたのだとか。そこに現れたのが人魚というわけです。
 男は見目も大変麗しかったとも言われますな。まあこれはこの後の話とともに、後から加えられたものだと、私なんかは思っておりますがね。恋物語にした方が受けがいいと……ああすみません、話が逸れましたな。
 人魚は男を助けたいと思い、自らその肉を切り取って捧げたのです。男の傷はみるみるうちに癒え、人魚は喜びました。
 しかしながら、男は傷が治った途端、村に戻ると言い出したのです。まだ戦いは終わっていないはずだ、自分は戻って戦わねばならないと。人魚は悲しみました、どうしてあんなひどい傷を負うようなことをまたするのかと。
 そしてまあ、この後の話がまた村の中でもまちまちで、いい加減でしてなあ……
 曰く、結局男は戦いに戻った。人魚の肉のおかげで不死の肉体を手に入れた彼を、誰も傷つけることはかなわず、男は隣村を滅ぼした後は何処にか消えた。
 曰く、男だって人魚を愛していた。村が平和になったら嫁として迎えるつもりだったが、その時には人魚はもう何処にか消えており、ひどく悔やんだ。
 曰く、人魚は愛しさが転じて男を憎んだ。もう戦えぬようにと念入りにその身体を串刺しにし、岩に貼り付けた。
 曰く、人魚の愛を失った男はその肉体に呪いがかかり、男の身体は不死のまま「できそこない」になった。なんでしょうね、このできそこないというのは。私もこの話を聞いた時は気になったのですが……結局、わかりませんでした。
 まあこのように、話の落ちすらあいまいなものでしてね。そう面白いものでも……
 
「いやあ、ずいぶん面白かったですよ。そんな話になってたとはねえ」