星に願いを

「流れ星に何を願いますか」から始まる各カプの流れ星話
1.ウィルアデ/2.セイカレ/3.アンリュー/4.ジルフリ/5.ユルマル



「流れ星に何を願いますか」
「星?」

 怪訝な目で隣を振り返る。涼みに出てきたバルコニーでの唐突な第一声。夜空を見上げていたフリアはゆるりと澄まし顔を向けてきた。

「もし叶うとすればの話です。ジルヴェンドさまは何を願われますか」
……ないな」
「ない、」

 フリアが小首を傾げる。眉根を少し寄せた彼女の顔は困っているふうではない。が、真意を計りかねているのもまた事実。
 腕をついていた手すりを今度は背もたれに、私はくるりと身体を反転させた。

「運任せで叶えたい望みなどない。成功は自らの手で掴み取るものだ。目標に向かって道筋をつけ、周到に準備をし、挑む。確実に実現させる」

 上向けた手のひらを握りこみ拳を作ってみせる。
 しばしの沈黙のあと、くすりと小さな笑い声が耳朶じだを打った。暗がりの中、フリアの唇は間違いなく弧を描いていた。「可笑おかしいか」と問えば彼女は「いえ、」と首を横に振る。

「ご容赦くださいませ。ジルヴェンドさまのお話を聞いて同じだと、嬉しくなりました。昔、弟に言われたのです。私は夢がないと」
「願いの次は夢か」
「最善も尽くさず、ただ願うばかりでは叶うものも叶いません。必ず叶えるためには手立てをより具体的に考えること、行動に移すこと。そう話したところ、溜息をつかれました」
「叶わないから夢なのだ」

 フリアが目を瞬かせた。その視線を絡め取ったまま、星明かりに照らされた白磁の頬を包みこむ。

「望みは手に落ちた瞬間現実となる。落とす気のない不明瞭な夢ならばそんなものはなくていい」
――では、よき未来を手繰り寄せるお手伝いを、私にもさせていただきたく存じます」
「できるか」

 添えていた手の甲にたおやかな手指が重なった。微笑を浮かべ、フリアはゆるやかに天を仰ぐ。

「星に誓って」

 双眸に映りこむ星月夜。その真ん中を割くように、ひときわ明るい金の光は静かに強かに流れていった。



***
「流れ星に何を願いますか」で始まる物語。
〈ジルフリ……2020年7月8日〉


 <目次> 1≫ウィルアデ 2≫セイカレ 3≫アンリュー 5≫ユルマル