「流れ星に何を願いますか」
「星?」
怪訝な目で隣を振り返る。涼みに出てきたバルコニーでの唐突な第一声。夜空を見上げていたフリアはゆるりと澄まし顔を向けてきた。
「もし叶うとすればの話です。ジルヴェンドさまは何を願われますか」
「
……ないな」
「ない、」
フリアが小首を傾げる。眉根を少し寄せた彼女の顔は困っているふうではない。が、真意を計りかねているのもまた事実。
腕をついていた手すりを今度は背もたれに、私はくるりと身体を反転させた。
「運任せで叶えたい望みなどない。成功は自らの手で掴み取るものだ。目標に向かって道筋をつけ、周到に準備をし、挑む。確実に実現させる」
上向けた手のひらを握りこみ拳を作ってみせる。
しばしの沈黙のあと、くすりと小さな笑い声が
耳朶を打った。暗がりの中、フリアの唇は間違いなく弧を描いていた。「
可笑しいか」と問えば彼女は「いえ、」と首を横に振る。
「ご容赦くださいませ。ジルヴェンドさまのお話を聞いて同じだと、嬉しくなりました。昔、弟に言われたのです。私は夢がないと」
「願いの次は夢か」
「最善も尽くさず、ただ願うばかりでは叶うものも叶いません。必ず叶えるためには手立てをより具体的に考えること、行動に移すこと。そう話したところ、溜息をつかれました」
「叶わないから夢なのだ」
フリアが目を瞬かせた。その視線を絡め取ったまま、星明かりに照らされた白磁の頬を包みこむ。
「望みは手に落ちた瞬間現実となる。落とす気のない不明瞭な夢ならばそんなものはなくていい」
「
――では、よき未来を手繰り寄せるお手伝いを、私にもさせていただきたく存じます」
「できるか」
添えていた手の甲にたおやかな手指が重なった。微笑を浮かべ、フリアはゆるやかに天を仰ぐ。
「星に誓って」
双眸に映りこむ星月夜。その真ん中を割くように、ひときわ明るい金の光は静かに強かに流れていった。
***
「流れ星に何を願いますか」で始まる物語。
〈ジルフリ
……2020年7月8日〉
<目次> 1≫ウィルアデ
2≫セイカレ
3≫アンリュー
5≫ユルマル
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