吾妻
2024-01-23 15:28:53
14522文字
Public GOD EATER
 

Two of a Kind

■弊アナグラのGE無印~GERまでの間にあった出来事のまとめです。
第一部隊配属後、リンドウやサクヤとの研修期間中の幻覚。
いつもの弊第一部隊、弊リーダー♀ですが、ほぼ絡みはありません。
本編で書かれていないことを都合よく補完しているのでご注意ください。


4.

 慣れ親しんだ輸送ヘリの揺れを感じながら、雨宮リンドウは今日何度目かの溜息をついた。
 向かい側では、額や腕の裂傷に応急処置を施された少女が、座席に沈み込んで静かな寝息を立てている。
 あれほどの大立ち回りを演じたあとだというのに、着席するなり糸が切れたように寝入ってしまった。疲労の蓄積や怪我がもたらす倦怠感のせいだとしても、あまりにも見事な入眠だった。
「やっぱ、〝らしくない〟んだよなァ……
 いつ何時 なんどきでも、即座に意識を落として休息に入れる。それは、戦士の資質だ。
 戦場の興奮や、死のふちを覗き込んだ恐怖をどこかに追いやって、次の稼働までの体力回復に務めることができる。簡単なようで、熟練の神機使いでも身につけている者は少ない資質だ。
 まったく、新人らしくない。
 これまでリンドウが研修を担当した誰とも似ていない。
 ただ肝が据わっている、もしくは度胸があるだけならいいのだが、彼女――月城ルイの振る舞いは、どうにも理屈や鍛錬によってもたらされたものには見えなかった。
 もっと、動物が己の身を守るための、本能的な何かとでも言えばいいのか。
 それに――
(お前は何にそんなに怒ってるんだ?)
 愛想のいい笑顔の奥に見え隠れする、煮え滾る怒りの気配。
 優秀で扱いやすい新人だと周囲は褒めそやすが、本当にそうか? どこか いびつで、危なっかしい。
「こら」
 横合いから、ぺちりと手をはたかれて我に返る。
「禁煙よ」
「あ? ああ、悪い」
 無意識にコートの内側から煙草を取り出していたらしい。苦笑を浮かべつつ、リンドウは煙草のパッケージをしまい直して、隣に座るサクヤに詫びた。
「本当に、もう少し控えたらどう? 癖になっちゃってるじゃない。ツバキさんも気にしてたわよ」
「へいへい」
「返事ばっかり。――何か気になるの? 彼女のこと」
 表情から呆れを消して、サクヤが熟睡する少女を見遣る。
「まぁ、な。お前はどう思う?」
「どう、って……。第一部隊ってどうしてこう、無鉄砲ばっかり集まっちゃうのかな、って感じかしら。ソーマといい、あなたといい……
「おいおい、俺までガキ扱いか?」
「そりゃそうよ。今日のことだって、私は怒ってるんだからね」
 キッと横目でリンドウを睨み、幼馴染にホールドアップをさせた後で、サクヤは再びルイの寝顔に視線を戻した。
……あの子、あなたとよく似てるわ」
「そうかぁ?」
「似てるわよ。全部一人でやっちゃおうとするところとか、そっくり。だから心配なの。あなたもあの子も、いつか大変な目に遭うんじゃないかって……
「これまでだって上手くやってきただろ。どうとでもなるさ」
……
 楽観的なリンドウの言葉に、サクヤは沈黙を返した。
 適当なフリをするのが上手い幼馴染は、その実、頑強な意思を飼っている。大口を叩いているように見せかけて、それ以上のことをこっそりとやり遂げてしまう。
 そんな彼の生き方を誰よりも傍で見てきたからこそ、サクヤはリンドウを強く信じることができるのだ。
 だが、ここ最近、リンドウは以前にも増して単独行動が増えた。第八バイブ周辺には、より強力なアラガミが出現するようになり、エイジスの建設が進むごとに周囲は慌ただしくなっていく。

 何かが変わり始めている。
 確証もない、ただの予感でしかないが、サクヤにはそう思えてならなかった。

 

【終わり】