吾妻
2024-01-23 15:28:53
14522文字
Public GOD EATER
 

Two of a Kind

■弊アナグラのGE無印~GERまでの間にあった出来事のまとめです。
第一部隊配属後、リンドウやサクヤとの研修期間中の幻覚。
いつもの弊第一部隊、弊リーダー♀ですが、ほぼ絡みはありません。
本編で書かれていないことを都合よく補完しているのでご注意ください。

1.

 吹雪で霞む視界に、突如白い影が滑り込んできた。
 前方の、死角から。宙を泳ぐようにするりと、音もなく。
 青白くぶよついた一糸まとわぬ女の上半身に、人魚の尾ひれにも似た下半身がつながっている。腕は半ばから翼の骨格じみた突起となって広がり、背には巨大な卵殻状の器官を背負う。卵の上部に開いた単眼の眼球が、ぎょろりと動いた後にこちらを捉えた。
 ザイゴート。分類は小型。単体での戦闘能力は高くない。落ち着いて対処すれば、問題なく討伐可能だ。
 だが――
(早いとこ始末しとかねぇと、後が面倒だな)
 神機使いとして極東支部第一部隊を預かる雨宮リンドウは、長年の相棒 ブラッドサージを握る手に力を込めた。
 アレが厄介さは、個々の脅威ではない。
 一匹にでも見つかろうものなら――
「あっ、コラ!」
 背後で同行者である橘サクヤが声を上げるのと、傍らから小柄な人影が飛び出したのは、ほぼ同時だった。
 路面に積もった雪を蹴散らして、真新しい得物を手に、数歩駆けたのち、一度身を沈めて次の瞬間高く跳んだ。
 身軽さがウリの短剣型 ショートブレードを腕の延長のように振りかぶり、落下の勢いごとザイゴートを真っ二つに斬り裂く。
 思わず口笛を吹きそうになるほど、迷いなく、鮮やかな襲撃だった――が。
「もう!」
 悪態をつきつつ、サクヤがスナイパーの照準を合わせ、引鉄を引く。
 危なげなく着地した若い女に、横合いから現れた“もう一匹”のザイゴートが牙を剥く。その卵殻部を、サクヤが放った一射が過たずに撃ち抜いた。
 ボトリと足元に落下し、霧散を始めるザイゴートの残骸を見つめ、まだ少女と呼べる年頃の娘はしばらく動かなかった。虚を突かれて動揺しているのか、それとも眼前まで迫った死の恐怖に慄いているのか。
「一匹見たら十匹いると思えって習ったでしょう? あの距離は、射撃で仕留めたほうが安全だって覚えておきなさい。貴方の神機には、ちゃんと銃もついてるんだから!」
 サクヤが指導教官顔負けの的確な助言を投げると、少女はやっと立ち上がり、こちらを振り返った。
 その顔には、驚きも恐怖もなく。
「ごめんなさい、ちょっと先走っちゃって!」
 つい先日、第一部隊に配属された新人。
 極東支部で最初の“新型神機使い”である月城ルイは、失敗を恥じる照れくさそうな笑顔を浮かべて、そう言った。