はるの
2022-08-08 22:20:44
50253文字
Public スタートレック
 

ハロー、いとしの異星人

全年齢|AOS spirk|2021.3.12|5年探査前、ヴァルカン人のデレ期によってジムがひどい目に遭うシリーズ。



生死を分かつ思い込み / Fancy May Kill or Cure


 ――ちょっと寄るとこあるから下で待っといて。
 という、カークらしい雑なメッセージを受け取って、スポックはおとなしく艦隊本部のエントランスへ足を進めた。ちょうど日勤の終わった時刻である、リフトは混雑していて、1階フロアでは多くの人が一路外を目指していた。人波に乗って玄関まで歩きながら、スポックはこんこんと考える。
 下で、という指示は、どう遂行するのが最適だろうか。
 つまり、具体的にどこで待っていれば最も効果的に彼を捕まえられるか、ということに、その優秀な頭脳をフル回転させていた。結果として、スポックは正面ゲートのど真ん中、何枚かある外への扉の隙間に立って、帰宅していく職員たちを対面で見送る作業を始めたのだが、職員たちの心境としては、一様にして「なにこいつ」である。監査か何かか? という疑問を付近にクラウド収集させているスポックは、けれどもちろん、一切構いはしなかった。カークがどの順路で1階にたどり着こうとも、ここには必ず来るはずである。つまり、至って合理的だ。
 そうしてしばらく待っている間に、再びメッセージが寄こされた。
 気づいて端末を見下ろせば、「右!」という、単語とエクスクラメーションマークだけのコメントが、カークから送信されている。
 右? と思いつつ、スポックは右を向いた。ちょうどすれ違っていった士官にぎょっとした顔をされたくらいで、特に何があるわけでもない。
 スポックは首を傾げる。と同時に、再び端末にメッセージが届いた。
 ――後ろ!
 後ろ?
 スポックは後ろを向いた。ちょうどすれ違っていった士官にぎょっとした顔をされたくらいで、特に何があるわけでもない。
 スポックは首を傾げ――、それから周囲を見渡した。なんとなく、思うところがあったのである。「なんとなく、思うところ」なんて、非論理極まりない謎の発想だが、非論理極まりない彼の行動パターンを順調に学習しているスポックだからこそ、実施可能な発想だった。ビッグデータ解析のようなものである。なるほど、これが勘というものなのかもしれない。
 ぐるりと鋭い視線を這わせ、意識を集中する。そして、少し先の柱の裏を、変な顔で眺めながらこちらに歩いてくる職員を見つけた。
 スポックは大股で歩いていって、その職員を追い越す。何やら怯えた顔をされたが、用があるのは彼ではない。
 柱の裏を覗き込むと、果たして、ジェームズ・T・カーク大佐その人が、何故か膝をつき、首を垂れ、両手と額を柱にくっつけていた。
 嘆きの壁、という単語が脳裏をよぎって消えていく。
「何をされているのですか?」
 最近、カークはこういう奇行に走ることが多かった。顔を覆ったり、倒れ伏したり、死にそうだと申告するのだ。そのたびに彼の体調を心配したものだし、今もなかなかにヒヤッとしたものを感じているが、彼はいつだって予想外に元気だった。感情的な暴言を同時に吐くこともある。だから、とりあえずスポックは、彼の行動を問いただすことにしたわけである。
 カークは、うう、と唸って、ずるずると床に丸まった。
「無防備すぎる……
「自己申告ですか? 今のあなたがそうであると断言せざるをえませんね」
 やはり、カークは元気そうだった。スポックは安堵し、顔を覆って床に突っ伏してしまった彼を助け起こすべく、かがんで脇に腕を差し込む。この「ジム・カークを引っ張る」という動作に関しては、出会った頃から彼にさんざん慣らされてきた接触だ。こうでもしないとなかなか話が進まない、という場面が、実に往々にしてありすぎたわけだった。
 よろよろと立ち上がったカークは、何故か涙目で、鼻の頭と丸い耳をほんのり赤く染めている。こういう表情も、最近の彼はよくしていた。それは決まってスポックと話しているときで――、いや、自分が見ていないときに彼がどんな顔をしているか、観測できない以上不確かだ。決まって、などと断じてしまうのはおかしい。
「だって君、ほいほい俺の言うとおりにするから」
「からかっていたのですか? 待ち合わせを指示したのはあなたです。到着したなら速やかに申し出るべきです」
「ごめんって。からかったわけじゃなくて。まあ、からかったわけだけど」
 そんな要領を得ないことをもごもごと言いながら、カークはこちらの腕をほどいた。ぱんぱんと自分の膝を払って、むにむにと唇を動かす。なんとも形容しがたい表情で、彼は目を伏せたまま、自分の頬をごしごしとこすった。
「君が俺を待ってる、っていうのが。ちょっと我慢ならなくて。思わず」
「よく、分かりませんが」
「分かられたら俺が憤死すると思うから君はそのままでいてくれ。俺の命を助けると思って」
「あなたの生命維持活動になることですか?」
「まあ、そう……、いや、そうじゃない。でもたぶんそう」
「どれですか」
「君がシリアスに考えることじゃないのは確かだ」
 言葉のあやみたいなもんだから。その、彼が多用する便利なキーワードを放って、カークはにっこりと笑う。こんなふうに、まだ頬が赤いまま目を細めるようなときは、最近ちょっとだけ、眉が困ったように尻下がりになった。そのなだらかな角度はやたらと柔らかく見えて、指でなぞってみたらどうだろう、と頭の奥が変な計算を始めようとしてしまうのが、スポックの「最近ちょっとだけ、困った」ことである。どうも何も、短い毛が密集して生えている感触と、彼のぬるく穏やかな体温を感じるだけだろう。それをつまびらかにする必要はない。
 カークはぽんぽんと腕を叩くと、促すように歩き出した。スポックは従順に、彼と肩を並べる。
「今日は何食おっかな~」
「寿司と言っていませんでしたか?」
「そういや言ってたな。お前頭良いな」
「今頃気づいたのですか」
「んっふふ。待って君そういう冗談言う? かわいいな」
 言葉の端々からふいにこぼれてしまった、というように、かわいい、と言われることも多くなった。地球人の感覚が不思議すぎると思うのだが、この「かわいい」をマッコイはまったく理解できないようなので、おそらくこの謎の感情も、地球人のというより、ジム・カーク文明の特色なのだろう。まったくうちの船長は、神秘で奇怪で不可解で、素敵な文明をお持ちなことである。



 寿司、と言いながら、彼が入ったのはジャパニーズ・レストランだった。このところ、やたらと夕食に誘われるのだが、彼は基本、常にイートインである。一度、家にレプリケーターはないのかと訊いてみたのだが、あるけどほとんど使わない、が彼の答えだった。何故かは不明である。彼のそのときの説明はというと、「なんかそのほうがいいから」だった。ジム・カーク文明である。
 精進料理を頼むと、カークは「わかる~!」と言って実に嬉しそうにした。こちらとしてはその情動こそよく分からないのだが、逐一追及することはとうの昔にやめている。彼が楽しそうであれば、スポックとしてはそれでよかった。
 今日はボーンズがどうだった、誰それに会って何をした、エンタープライズ修復の進捗がこうだった、カークの話す内容は、おおむねそんなところである。彼は突飛に話題を繰り出して、奔放に終話した。気ままに黙っていると思ったら、悪い笑みでいたずらを仕掛けてきたりもする。たとえばこんなふうに、こちらの皿から勝手に花形に切られたにんじんをつまむような悪ふざけだ。よほどのことでなければ、スポックは指摘しない。そうしていると、カークが嬉しそうにするからだ。
 こういったやり取りの中で、どこまでなら許されるかと思って、と彼はつぶやいたことがある。つまり彼は、こんな小さな子供のやんちゃみたいな振る舞いを使って、おっかなびっくり、線を越えては、許されるかどうかを試しているらしいのだ。捉えどころのないカークのことである、もしかしたら違うのかもしれないが、スポックはそう思うことにしていた。
 だから、彼を好きにさせている。
 自分が決して許さないのは、彼が死ぬこと、ただひとつで、あとは程度問題だからだ。
「そういえば、ピュタゴラスも菜食主義なんだって」
「そういえば?」
「ふと思い浮かんだだけ。賢者で天才だけど極度の秘密主義で、数への崇拝のために犠牲を払うらしい」
「親近感がありますね」
「だったらその眉を定位置に戻したほうがいいぞ。実に情熱的だな?」
 にやにやとこましゃくれた笑みを浮かべて、カークは器に箸を差し入れた。器用にうどんをつまんで息を吹きかけ、口いっぱいに頬張ってぬるぬると吸い上げる。熱いからか、濡れた唇がうんと赤くて、湯気にあてられた顔も赤くなっていた。ちゅる、とかすかな音を立てて、彼は立派な頬袋を作る。
 太いヌードル、というものが初めてだったので、まじまじとそんなカークの食べっぷりを見つめてしまった。彼はもぐもぐと口を動かしながら、きょとりと無邪気に首を傾げる。
 数あるメニューの中から彼が選んだのは、素うどんだった。この船長はいつだって、軽々と予想を上回ってくれる。肉や揚げ物の乗った種類を選ばなくてもいいのかと訊いたら、カークは笑ってこう言ったのだ。「今日はなんかそんな気分だから」。
 この、まるで流れ星のような、量子の揺らぎのような、ひゅんと飛んでぱっと消える、そんな運動を持つ魂に、スポックはいつだって興味深く見入ってしまう。
「美味しいですか?」
 飾りっ気のない、小麦粉をこねただけの麺をすするカークに、そう尋ねてみる。
 彼はしばしば、あまり美味しそうには見えないものを、とても美味しそうに食べるから。そう問いかけたくなるのだ。
 そしてその後に返される答えを、スポックはとても気に入っている。
「美味しいよ」
 まるで満ち足りたような、幸福でいっぱいの、優しい眼差しで。
 カークはいつだってそう答えるから、スポックは非常に満足する。



 カークと別れて帰る道すがら、スポックは考えた。
 うどんを頬張るカークを思い返して、美味しいと微笑む彼を反芻して。
 もっといろんなものを食べさせてみたい、と思う。
 彼はなんでも美味しいと言うが、苦手なものはあるのだろうか。アレルギーは? 聞いたことがない。どんな質素なものでも、一般的に不出来とされる料理でも、彼は美味しいと、あの顔をするのだろうか。
 そもそも、こんなにも自分を夕食に誘うということは、食べること自体が彼にとっては保養である可能性が高い。地球人的な娯楽を嗜まない友人相手に、遊びの代わりとして食事を提案しているのであれば、十分に考えうることである。
 スポックはその考えに至った時点で、自室へたどり着いた。
 そのままスムーズに、ワークデスクへ腰かける。
 そして無言でコンソールを起動し、一心に画面を操作し始めた。



 顔が怖い、とウフーラに言われて押し黙る。
 あれから、寝る間も惜しんでコンソールに向かっているおかげか、据わった目でもしてしまったのだろう。寝不足でガードが下がっていると思われ、スポックは、そのこと自体は素直に恥じた。
 昼間のリフレッシュルームである。メッセージのやり取りで時間を合わせ、やってきたウフーラにスポックは居住まいを正した。
「何事? 何か問題でも?」
「いえ。ただ、少し寝不足です」
「珍しい。問題じゃないのに?」
「はい。レプリケーターのプログラムを作っています」
「ふうん。何作ってるの?」
「ごはんです」
……うん?」
「ごはんです。ジムは自宅のレプリケーターをまったく使っていないようなので、食べさせなければならないと判断しました」
 鈍い回転の頭を無理にひねりながら、スポックはそう答える。
 やや心配した表情だったウフーラは、それを聞いて目を見開き、ものすごい勢いでこちらを向いた。
「ニヨータ?」
「ついに母性が……
「ぼせい?」
「いえ、いいの。いいのよスポック。うわーっ、今すぐジムに報告しなきゃ」
「いえ。いえ、ニヨータ」
 と思ったら、よく分からないことを口走り、彼女は目をきらめかせてポニーテールをさらりと揺らす。今にもコミュニケーターを取り出しそうなその様子に、スポックは少し慌てて彼女を止めた。
「なに?」
「あの」
……まさか」
「まさか? いえ、その。ジムに報告する必要はありません」
……うん」
「私が勝手にやっていることで」
「うん」
「まだ完成していないので」
「うん」
「その、まだ……
「分かった。こっそり作ってサプライズでプレゼントして、ジムを喜ばせてあげたいのね」
……それはあまりにうがった解釈では」
「いいえ、あなたのその『まだ……』はそれそのものよ」
 何故かひどく得意げな顔で、ウフーラはまるで心得たように深く頷く。どうも誤解を受けているような気がしないでもなかったが、彼女が胸に手を当てて、何かに感動している様子を見れば、スポックとしては強く出ることができなかった。
「今のすごくかわいかったから、もう1回やらない? 録画してジムに送るわ」
「しません」
 とはいえ、スポックはNOと言えるヴァルカン人である。不可解な要求を跳ねのければ、ウフーラは分かっていたのだろう、愉快そうに吹き出して笑った。
 カークとウフーラはときどき、こんなふうに不思議な連帯を見せてくることがある。主に、ヴァルカン人の情緒を伸ばす、という観点においてである。ごめんこうむりたいという強い意志はあるのだが、自分でも特に弱いという自覚のあるふたりに揃って期待のこもった眼差しを向けられてしまうと、いっそ好きにしてくれ、という投げやりな感情に一生懸命蓋をする羽目になる。今もそうだ。
「ま、分かったわ。そういう無茶ならやらなきゃね」
「無茶はしていない」
「そう? あの船長にしてこの副長ありって感じよ」
 どう考えても褒めていない文脈に思えて、スポックはひっそりと眉を寄せた。じろりと彼女を見やれば、ウフーラはにこにこと笑ってスポックの寝不足な頭をよしよしと軽く撫でる。
「喜んでくれるといいね」
……はい」
「喜びすぎて卒倒したらちゃんと助けてあげるのよ、悪いのはあなたなんだから」
……はい?」
 素直な彼女には素直に答えたものの、なにやら不穏なことを言い放たれてスポックは向き直った。けれどウフーラはというと、ただ愉快そうに笑うだけだった。



 ともかくも、カークの家にはダイニングテーブルがない。
 けれどキッチンに、備え付けのカウンターはあった。ならばとスポックは、あのインテリアになじみそうなデザインの、おしゃれな丸椅子を2脚注文した。文句は言わせないつもりである。
 そうして準備万端にして、半休で一度家に帰ったスポックは、カークを夕食に誘った。「飯行こ」といつも気軽なメッセージを送ってくれる彼に倣って、「飯行こ」と彼に送信する。なんだか愉快なエモーションアイコンがたくさん返ってきたが、断られなかったので安堵した。
 荷物を持って本部の出口で待っていると、前回以上に人目を引いたが仕方ない。
 どうせ、こちらを見つけたカークが、ぱっと明るい笑顔を弾けさせて、一目散に走ってくるような様子を見てしまえば、あらゆることが些末になるのだ。
「お前さああ~!」
 カークはそんなことを大喜びで言いながら、突然体当たりをしてきた。彼の駆け寄ってくる姿から推察して、念のため身構えていたのでふらつきはしない。
「『飯行こ』ってなんだよ、『飯行こ』って!」
「あなたのいつもの言い回しですが?」
「それは分かってるよ! つーか分かってるからこそだろもおお!」
 狙ってやってんのか、だとしたら相当な手練れだなヴァルカン人のくせに! という、よく分からない非難を浴びせながら、カークはたしたしとこちらの胸を叩いて、ぴかぴかの嬉しさを体現した。彼がこんなにも喜んで自分の誘いに乗ってきている、ということに、すでに満足したような心境になったが、今日の本題はそれではない。
 彼を促して歩き出すと、カークはまるでまとわりつくように、跳ねる足取りでついてきた。
 十全に満足しそうだ、と再び思って、内心で気を引き締める。満足するにはあまりに早い。
「つーか、なんか大荷物だな?」
 丸椅子が折りたたんで梱包されている箱を指差して、カークは不思議そうにした。スポックは構わず、車を捕まえる。
「はい。今日はあなたの家で夕食をと思いまして」
――あなたの家」
「あなたの家です」
……チェステーブルで懲りたんじゃ?」
「懲りました」
「なのに、俺の家?」
「はい。そのためのダイニングチェアです」
 前回、スポックは彼の家を訪問する際に、謎の理由で渋られていた。だから今回もおそらく、謎の理由で渋ってくるだろう。そう算段して、カークがぽかんとしている間に、スポックは荷物と一緒に彼を車に詰め込んだ。実にスマートである。
……うん?」
「これはダイニングチェアです。あなたと私の」
――あなたと」
「私の。ふたりいるから当然でしょう。どうしましたか? 何か」
………
「ああ、あなたが懸念されている問題は解決済みです」
「は?!」
「インテリアコーディネートの基本ルールに沿った家具選びをしました」
……うん、そういうんじゃねーんだよな」
「そういうのではない?」
「そういうんじゃねーんだよな~~~~!!」
 突然叫び出したカークに驚いていると、行き先を催促されて、スポックは素早く彼の住所を告げた。車が動き出すと同時、カークはくにゃくにゃになってシートに身を投げてしまう。軟体動物がこういう動きをする、とスポックは思った。
 カークは前腕部で顔を覆ったまま、何もしゃべらない。呼吸をしているかさえ定かではないくらいに静まり返っているが、胸は上下しているから問題はないだろう。
 しばらく、その状態が続いた。
 あまりの静まりように、スポックはやがて懸念を覚える。できれば、彼には先ほどのような、ポップコーンができるときを想起させるような様子で笑っていてほしいのだ。まるで能天気に、元気でいてほしかった。けれど今の彼は、さすがに落ち込んでいるように見える。
 使われていないキッチンカウンターを、使えるようにするということは、彼にとっても合理的だと考えていたのだが。
 ジム・カークという人間が、ひどく繊細で複雑にできていることを、スポックは知っている。もしかしたら、何か気を悪くするようなことがあったのかもしれない。
「ジム」
 ゆっくりと呼吸をしたあと、静かにそう呼んでみると、カークはぴくりと反応した。
 どう話を切り出そうか、思案して、結局素直な言葉を伝えることにする。
「だめ、でしたでしょうか」
 途端、カークはうーっと唸った。思わず目を見張ってしまうと、彼はもう一度うーっと言ってから、そっと腕を顔から離す。
「だめ、じゃないから、困ってんだろ」
 お前は本当にまじでいい加減にしなさいよ、といわれのない中傷を、どこか切実に語るカークの頬の色を、スポックはゆっくりと目でたどった。こういう軟体動物がいる、と思う。茹でたらこういう色になる。
……聞いてんのかおい」
「はい、聞いています。ですが、あなたが困る必要はありません」
「うーん伝わってる気がしなーい」
「だめじゃないなら、許していただければよいことです」
 なるほど、許しを試すとはこういうことなのかもしれない、とスポックは納得した。ちょっかいをかけて相手を窺うカークのしぐさは、もしかしたらこのような、素直な気持ちでできているのかもしれない。
 うん、とひとり頷くスポックを見て、カークは再び後ろに倒れ込んだ。



「ちょっとあまりのスポックに呆然としちまってたけど、飯がないぞスポック。おいスポックこのやろう」
「言葉の装飾が過剰すぎます。それに、夕食ならあります」
「デリバリーするの?」
 彼の家に到着して、まるでぐずるようにするカークを車から引っ張り出し、なんとか部屋に収容して。
 手早く梱包を解いて椅子を組むスポックの様子を眺めながら、カークは不満そうにそう言った。その割には近くまで寄ってきて、物珍しそうにこちらの手元を覗き込むので、やはりインテリアは気になるのだろう。
 あっという間に組み上がった丸椅子を渡せば、カークはまじまじとそれを見つめ、恐る恐る木の部分に触れて、そのままつるりと撫で上げた。
「いかがですか?」
「いかが……、まあ、かわいい椅子だな」
「かわいい?」
「かわいい」
「かわいい……
 つくりはシックなものを選んだつもりだったので、予想外の感想をスポックは無為に繰り返してしまう。するとそんな様子を見たカークは、くすぐったそうに破顔した。
「不満そうだな?」
「いえ、思わぬ感想でしたので」
「俺も思わぬ感想だよこれは」
「気に入りませんか?」
「気に入らないものに、かわいいなんて言わないだろ?」
 調子が戻ってきたのか、カークはそう言ってばちんとウィンクを寄こしてくる。そうして組み立てた2脚を抱えると、がら空きだったカウンターまで持っていって並べて置いた。想定どおりの調和が生まれ、スポックはその景観に満足する。
「いいね」
 カークも満足そうだった。ぽんぽんと座部を撫でて、ゆっくりと優しい笑みを向ける。それからちゃんと、スポックに向き直った。
「これからはここで飯食うよ。キッチンで立ったまま、とかじゃなくてさ。ありがとう、スポック」
「どういたしまして、ジム」
 彼のこういう、ここぞというときには必ず誠実に努めようとする姿は、スポックが尊敬してやまない彼の長所である。キッチンで立ったまま? と問い返したい気持ちも十分にあったが、こういうときはこちらも誠実に返答することが肝要だと学んでいる。
 にこにこと、お互いに良い雰囲気だった。
 だから、スポックは良いタイミングだと、穏やかに申し出る。
「あなたのレプリケーターを使用してもよろしいでしょうか」
「レプリケーター? いいけど、ほぼ初期設定だぞ。飯これで作るのか?」
「はい。プログラムを持ってきましたので」
「へ? 飯の?」
「はい。好きなものを選んでください」
 ぱちくり、とまばたきしているカークに頷いて、スポックは端末を取り出すと、彼のレプリケーターにそれをつないだ。どれどれ、とまた好奇心旺盛に近くまでやってくる彼は、遠慮なくこちらの手元に鼻先を近づける。無防備、という言葉が浮かんだが、スポックは努めて冷静にメニューを取り出した。
 スクロールして、スクロールして、スクロールしたあたりで、カークはつばを飲み込む。
……多くない?」
「抜けはないかと」
「抜けは、って、えっ」
「はい。作りました」
「な、多くない?! なんで」
「料理を調べながら、芋づる式に次々とピックアップしましたので」
「いやだからHOWじゃなくて! 俺がいつだって問いただしたいのはWHYだよ!」
「ああ。ただ、あなたに食べてほしかったのです」
「だからなんで!」
「何故。そうですね、あなたはなんでも美味しそうに食べるので。私が作ったものを、その口の中に入れてみたくなり」
「言い方~~~!!!」
「ました。ちょっと、ジム」
 カークの今度の奇行は、キッチンカウンターに突っ伏すものだった。ぱん、と音を立てて両手で顔を覆い、だん、と音を立てて強く両肘をつき、小さくなってしまう。今のは相当痛かったのではないか、と危惧したが、カークは肩を怒らせて、短く息を吐くだけだった。
「ジム?」
 はあ、とあえぐような声を上げる彼を、直立不動のまま注意深く観察する。素うどんを食べていたときみたいに、唇が濡れていて赤かった。噛んで舐めたりしたのだろうか。その口の中に自分が作ったものを詰め込んで、彼が美味しいと笑うところが見たいと思う。
「ジム」
 3回目でやっと、カークはそっと顔から手を離した。ゆっくりと見上げてくる青の双眸は、何故かわずかにうるんでいる。
――OK。分かった。お前がそういう火炎放射器であたり一面を焼け野原にしたいっていうなら、俺にも考えがある」
「焼け野原? 私に攻撃の意図はありません」
「君はつまり、俺にものを食わせたくて、こんなにしこたま料理を作ってきたわけだ」
「はい。リストはあなたの好むものと考えます。好きに選んでください」
「普通に店で飯を食うんじゃなくて、自分が手ずから作ったもので。手ずから自分が用意した、君と俺だけの椅子に座らせて?」
「はい。……いえ、何か言い回しに誤謬を含ませていませんか? そのような自己顕示欲による行動ではなく、ただ私は」
「君は?」
「私は……、そうしたほうが」
 ――よいから。
 なんかそういうふうにしたほうが、一番いいと思ったから。
 ふと、そのような動機が浮かんで、スポックは息をのんだ。それは、彼の、得意技だ。恣意的で、感覚的で、根拠のない、けれどもこの世で最も明晰な何か。ジム・カーク文明が誇る、最高の価値を持つジム理論。自分の手に負えるものではない。
 そう思い至った、瞬間、すさまじいほどの羞恥がスポックの背筋を直撃した。思わずよろめいてしまいそうな衝撃に、思わず口元を手で覆う。思わず、の時点で相当だ。まあ彼といると、思いがけないことばかり起こるのだが――、ではなく。
 感情の制御ができない、と四苦八苦することは、スポックにとっては人生の困難と同義である。それはしばしば起こることであり、生まれたときから肩を並べて共に歩んできた連れ合いのように、常に自覚して隣に置いているものだ。
 ――けれどこんな、無自覚に、このような。
 こちらを見上げているカークを、スポックは呆然と見つめた。
 カークはややきょとんとした表情から、じんわりと、浮かび上がるように、唇をきれいな孤形へ湾曲させる。まるでチェシャ猫か何かのようだった。あべこべでめちゃくちゃな、不思議の国へいざなわれてしまいそう。
「お前が俺にどんなひどいことをしているか、分かったか?」
 愉快そうに繰り出される言葉は、辛らつだった。スポックは奥歯を噛み、足を揃えて背筋を伸ばす。
「ヴァルカン人として、ありえない所業でした。はしたないところをお見せして申し訳ありません」
「はっ?」
「あなたが不快に思うのも無理はありません。不可解で不条理でしたでしょう――、今回の件はなかったことに、後ほど正式に謝罪を」
「いや待って待って! いつの間にかドシリアスになってる! まだコメディ、コメディだぞ!」
 顎を引いてまっすぐに彼を見つめれば、カークは何故か素っ頓狂な声を上げて跳び上がった。慌てたようにそんなことを言いながら、こちらの胸に手を置いて、窺うような上目遣いを寄こしてくる。彼が懇願するときに、よく行うしぐさだった。なんでも許してやりたくなるような、そんな心証にさせるのがうまい。心からそう思う。
「違うんだスポック、俺が言いたいのは、君の好意の伝え方が逐一でけぇ1歩だっつうか、コミュニケーションどへたくそがときどき間違う距離感だっつうか」
……距離感」
「その不思議そうな顔やめて。ああもう!」
「ジム、けれど私は今、ひどく感情的でした」
「いいんだよそんなことは! だから、もう! こっぱずかしいんだよ俺は! それだけだよ!!」
「よくありません。非論理的であることは」
「そこ?! いや君の中でこだわりはいろいろあるだろうから特別どうしろとは言わないけど! 俺は君がどれだけ感情的になろうが、泣こうが吠えようがどうでもいいよ!」
「どうでもいい……
「あーまた変な誤解するだろ、だから俺がこんなことになってんだぞ、くっそこのヴァルカン人め……!」
「ジム、主張の意図が不明です。侮辱ですか?」
「俺はスポックがいてくれればそれでいいんだよ! 君がどうでも俺はいい! 言わせんな恥ずかしい! あーもう恥ずかしいいい!!」
 あーもーやだやだ、これだからヴァルカン人は、も~~やだ!
 そんなことをぶつぶつと唱えながら、カークは端末をひったくって、渾身の作であるメニュー表を自由に繰り始めた。お前これ、全部レプリケーターには入んねぇぞ。ぴかぴかの好奇心にきらめく美しい双眸が、小刻みに上下してすべての情報を舐めていく。
「では、好きなものを選んで、持っていってください」
 冷静な意見を述べた自分の声が、何故か少し遠くに感じた。あらゆる感覚が、少しだけ遠ざかっている。
 不安になって、片足の裏をこすり、自分が無事に接地しているかどうかを確かめた。問題なさそうである。こんなにも、小さな星に降り立ったような、ふわふわした体感がするのに。
「なあスポック、これ肉料理ばっかじゃね?」
 カークは大げさに顔をしかめて、カウンターからこちらを見上げる。
「あなたが、好きかと」
 問題なく答えたつもりだったが、彼は見事に目を見開いた。瞠目して、口をぽかんと開けて、すでに赤みをはらんでいた頬を、もう一段階赤くする。不思議なほどに採光能力の高い彼の瞳。
「ダーリン」
「ダーリン?」
 謎の言い回しをするカークを、いつもどおりに聞きとがめる。
 いつもどおりである、と思う。たぶん。
「君が今感じているそれが、こっぱずかしい、のすべてだ」
……あなたはずっとこのような思いを?」
「ひとつ学習し、体得したな。良かったなスポック、人生とは常にディスカバリーの連続だ」
 カークは、もう耐えきれない、というように、嬉しくて嬉しくてたまらないような笑みを浮かべると、立ち上がってこちらに手を伸ばした。そのまま頭をわしわしと撫でられて、血圧の上がった脳が攪拌される。ふらついたスポックを覗いてまた破顔すると、彼はカウンターをぐるりと回ってキッチンへ向かった。
「君、自分の飯のこと忘れてるな」
……それは、レプリケーターに」
「君が食えそうなのはなかったぞ。君が俺を完全な肉食だと思っていることは分かった」
「いつも野菜に文句を言うではないですか」
「だから、君の今日の飯は俺が作るから」
――は?」
「その間に、君はそれに君の好きなものを登録しろよ」
 ばたん、と棚から大きな鍋を取り出してきて、カークはそんなことを言う。
 一瞬、言っている意味が理解できなかった。
「あなたが、作る?」
「うん」
「何故です?」
「何故かは君が自分で言った」
「私が?」
「俺と君だけの椅子に座らせて、自分が手ずから作ったものを、君の口に突っ込みたい」
 カークは勢いよく鍋に湯を注ぐ。ふわ、と湯気が彼の伏せられた顔を包んで、表情はよく見えない。
「それなら、私の好物を今ここに登録する意味は」
「いちいち確認することじゃねーの、そういうことは!」
 ――つまり、次に来たときのためだ。次は、ふたりの椅子に座って、ふたりの好きな料理を作るのだ。
 スポックは小さく息を吐いて、彼に与えた椅子のひとつに腰かける。そして端末を手に取った。
 こっぱずかしい、という気持ちがこれで、彼がこのような思いを常日頃から抱いているというのなら。
 カークはずっと、自分とのやりとりで、こんなにもふわふわした、多幸感のようなものに浸されていたのだろうか。
 それは、なんだか、とてつもなく――
 スポックが薄緑色の顔をしたまま、居心地悪そうにもじもじとしていたからだろう、カークは突然大声で、ロックをかける、と言い放った。



 カークがメニュー表の中から注文したのは、シカゴ風ピザ、だった。意外なところが来たな、とスポックは思ったが、取り立てて言葉にはしない。カークはカウンターの向こうで、乾麺のパスタを取り出して湯に放っていた。
 ピザをレプリケーターにセットして、スポックは淡々と端末を操作する。ここから引用できる情報で、かつ、自分の好むもの、と考え、いくつかピックアップした。
 ノイジーなロックがガンガンにかかる部屋は、うるさいと感じているはずなのにどこか穏やかだ。やることがなくなったらしいカークは、鼻でメロディをなぞりながらトングをカチカチと打ち鳴らしている。
「あなたはものぐさなところがありますから、手作業で料理を作るというのは新鮮です」
 やることがなくなったスポックも、端末から顔を上げた。ごく実直な所感だったのだが、からかわれたと思ったのだろう、カークはにやりと底意地の悪そうな顔をする。
「意外性の男だからな」
「ええ、それは存じています」
 とはいえ、得意げに宣言された情報は既知のものだった。こういうときの彼は大抵、おちょくってくるものなのだが。スポックが首を傾げると、カークは変な顔をした。
 カウンター越しに見つめ合っていると、ふいに彼は肩をすくめて表情を緩め、鍋の火を止めてフライパンを握る。
「つっても、ガキが作れる程度のもんだ。文句言うなよスポック」
 レプリケーターを見れば、ピザの出来は9割だ。家庭用にしてもやや遅い動きだが、このスペックならば妥当だろう。スポックは手元を見下ろしてから、自分のお気に入りとしている飲料のデータを軽やかにスライドした。



「わ~! 土~! お前元気だったか~!」
「私のお茶を土と呼ぶのはやめてください」
「分かった。じゃあ、掘り起こされた芝~!」
 彼のこういった、人をからかうためなら無限に回る頭の良さは、確実にもう少し別の場所で活用されるべきだろう。溜息をつきそうになりながら、スポックは戻ってきたカークを見やった。レプリケーターで作ったお茶を覗き込んで、この元気な喜びようである。
「大丈夫、今の俺は宇宙一芝を食いたい人間だから」
「あなたはそう言うと思いましたので、炭酸水を用意しています。これは私のです」
「え、なんで……
「なんで。ですから、お嫌いでしょう?」
「やだ。俺も一緒に土食う」
「まったく好んでいるようには聞こえないのですが……
 カークの不思議な熱意によって、結局もう1杯の『掘り起こされた芝』がケージ内に作成された。嬉しそうにそれを取り出すカークを見て、意外性の男でもあるが、本当に謎が尽きない男だ、とスポックは半ば感心してしまう。
 彼が調理したのは、シンプルなアーリオ・オーリオだった。
 並んでカウンターに座り、お互いの食事を手元に寄せて、目を合わせる。
 それから示し合わせたように、一斉に食べ始めた。直後、カークがうわーっと声を上げて、スポックは手を止める。隣を見れば、切り取ったピザの1ピースを持ち上げ、そのチーズが伸びて滝のようになっているさまを、彼はきらきらした眼差しで眺めていた。
 食べる前から、この満足そうな笑顔だ。
 スポックは目標が達成されたような心地で、静かに彼を見守った。カークはあんぐりと開けた口を寄せて、チーズを舌で器用に掬いながらかぶりつく。もぐもぐと動く唇も、指先も、好きなだけ油で汚して、それでも彼はこんなにも無垢だ。柔らかく細められた目尻、丸い頬袋。じっと見ているのが分かったのだろう、カークはちらっとこちらを見て、んまい、とくぐもった声を上げた。
「飲み込んでから話してください」
「んん」
 思ったことを告げれば、彼は顎を引いて顔をしかめ、唸るような声を出す。こんなときまで小言か? まるでそう言っているように聞こえて、スポックは不思議に思った。何ひとつ、意味のある音韻には聞こえなかったのに、そう解釈できる自分のシステムが、とても奇妙で興味深い。ジムリンガルにでもなったような心境である。
 スポックはパスタに向き直り、静かにフォークを差し入れた。からめとって、口に入れる。
 咀嚼していると、強い視線を感じた。ちらっと見れば、ピザを飲み込んだカークがじっとこちらを見つめている。
 なんだか愉快な気持ちだった。つい今しがたの自分の心境を、彼はほとんどトレースしているのではないかと思う。
 つまり、自分の作ったものを、彼がどのように消化するのか。気になって仕方ないのだろう。
 スポックはもうひとくち、口に入れて、丁寧に味わって飲み込んだ。
 それから、カークの視線を真正面で受け止める。
「美味しいです」
「お、いしい?」
「はい」
……そっか。うん。美味いのはいいことだな、うんうん。お前でも飯を美味いとか思うんだな」
「表明することは稀ですが、好みはあります」
「ふーん」
 そっかあ、とどこかふわふわしたような発言をして、カークはうろうろと視線を巡らせた。それからぐいっとお茶を飲んで、はあ、と丸い吐息をする。
 そうして気持ちを落ち着けてから、彼はにやっといたずらっぽい笑みを浮かべた。
「こんな油まぶしただけのパスタが好きだとは知らなかった」
「そうですね。作りとしては、あなたが先日食していた素うどんと同じ、質素にあたるものでしょう」
「嫌なら食うな」
「美味しいと言ったことをもうお忘れですか?」
 確かに、彼の言うとおり、簡単に言えば、小麦に油をかけたものだ。高品質なオリーブを使っているわけでもなく、麺のパッケージも量販物だった。絶賛に値する美味かと訊かれると、標準的に評価すれば普通、である。
 けれど、とスポックは考える。
 目の前の皿を見下ろして、それを楽しそうに作っていたカークの姿を思い出す。
「ですから、これはプラシーボです」
「プラシーボ?」
「思い込みによる薬効の発露、偽薬効果です」
「いや、プラシーボの意味は分かる。なんでこれがプラシーボ?」
 きょとん、と首を傾げるカークに、スポックも反対側へ首を傾げた。分からないのだろうか、それが不思議だ。
「あなたが私のために作ってくれたものですから、私にとっては特別に美味しいのです」
 カークはその後、まるでゾンビのような動きで椅子に座り直し、ピザを横にどけてカウンターに突っ伏した。
 ペペロンチーノ殺人事件、という謎の単語を放ちながら、うーうー唸ったり耳の先を赤くしたり、おそらく再び「こっぱずかしさ」に苛まれて身もだえしている。今回は、特におかしなことを言ったつもりはなかったので、スポックはそれを静かに黙殺し、もくもくとパスタを口に運んだ。せっかくのジム・カーク謹製である、冷めてしまってはもったいない。
「スポック」
 伏せていた自分の腕でもみくちゃにしたせいか、少しだけ顔を上げたカークの前髪はくしゃくしゃだった。その無防備な赤い顔が、まるで聞き分けのない子供に懇切言い聞かせるように、唇を尖らせる。
「思い込みは、人を殺しも生かしもする。覚えとけ」
 スポックは、率直に片眉を持ち上げた。誰も負傷などしていないのに、おかしなことを言うものである。






【ひとこと】
自分でもびっくりするんですが、付き合ってないんですよ、このふたり。好き合ってるだけです。
人を情報に解体して転送する技術があるなら、情報からものを生成する技術がなきゃ怠慢だぞ、と調べてレプリケーターが出てきたときの喜びたるや、リブロングアンドプロスパーでしたね。ロジックの勝利だよスポック!アルティメット3Dプリンターみたいな認識ですが、違ってたらごめんなさい。