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いまち
2021-11-25 23:27:42
9821文字
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お得意さんと茨の谷の女の子(途中かも
れこさんからいただいたネタ。お見合いおばちゃんと♣
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あれからハドソンさんは茨の谷の話をよくするようになった。マレウスやリリア、茨の谷に知り合いがいる身としてはなかなかに興味深い。とはいえ、話は文通相手の道具屋の女の子の話がほとんどだった。あまりにも頻繁に話を聞かせてもらえるものだから、聞いているうちに会ったこともない子にやたらと詳しくなってしまった。
両親のいない女の子だけど、近所からは可愛がられているようで、寂しそうにしている様子はなく、それがとても健気に見えること、道具屋を営んでいて経営はその子一人でしているらしいこと、かわいらしく料理上手でとても働き者のいいお嫁さんになりそうだということ
……
聞けば聞くほど、できすぎたフィクションの話みたいだ。そんな女の子がいるのか? ハドソンさんは相当その子に入れ込んでいるようだから、欲目もあるのかもしれない。
……
などと考えていたら、妖精族は長命種で、見た目以上の年齢であることがままあることを思い出した。もしかしたら、その女の子も若く見えるだけで、ハドソンさんの何倍もの歳なのかもしれない。そう思えば納得がいく。
そんな調子で過ごしていたある日、ハドソンさんがいやに興奮気味な様子で店に来た。なんでも、例の女の子が薔薇の王国に来るとのことだった。
「良かったですね」
「そうなのよ! 来月なんだけどね、今から待ちきれないわ。それでね、トレイ君に相談したいんだけど」
「俺で力になれるのなら
……
なんでしょうか?」
その子とのティーパーティー用のお菓子かなにかだろうか? ハドソンさんは社交的な肩だ、よく出かければ、逆に人を招くことも多い、十分あり得る。とても気に入っているという茨の谷のご友人、その特別な日にふさわしいお菓子となるとどういうのがいいだろうか。考えていると一層目を輝かせたハドソンさんが話を続ける。
「トレイ君にもね、その子に会ってほしいの」
「
……
。はい?」
「だから、トレイ君にもあの子を紹介したいのよ。この日なんだけど、空いているかしら?」
提示された日は店の定休日だ。その日は特に用事も予定もない。空いているといえば空いている。
しかし俺に紹介したいというのはどういうことだろうか。そのご友人は俺のお菓子を気に入っているらしいという話は聞いてはいるが、アレか「シェフを呼んでくれ」みたいなことなんだろうか。
「トレイ君、恋人いないでしょう?」
「
……
えぇ、まぁ」
「いつまでも独り身ってのももったいない気がしてねぇ」
「はは
……
」
だからそのご友人とやらとの見合い話を持ってきてくれたということか。余計なお世話だ。そうは思うも、ハドソンさんも悪気があってこんな事を言っているのではないことは重々承知している。それでも、あまり気乗りしない。
「だからね、会ってみるだけでもどうかしら?」
正直断りたいところではある。けれど、近所付き合いがある手前、断るのも憚れる。どうやって断ろうか。
……
そもそも、ハドソンさんは妖精族と人間との間にそんな話が成立すると思っているんだろうか?
そして思い直した。妖精族であれば、人間の男になんてそうそう興味は持たないだろう。人間に惚れこんで結婚にまで至った妖精族の話こそ聞いたことこそあったけれど、やはり稀な例だそうだから、俺自身そういう事になるとは考えづらい。なら無理に断る必要はないのではないか。と。
それに、ここしばらくその子の話を聞かされ続けたものだから、少なからず興味があるのも事実だ。せっかくの機会だ、ハドソンさんの言う通り会うだけでも会ってみよう。
「そこまで仰るのなら」
「よかったわぁ! それじゃあ、この日にこの時間で予約してるから。ちゃんとした格好で来てちょうだいね」
とても嬉しそうなハドソンさんから日時の書かれたショップカードを受け取る。大通りのちょっと高いホテルのレストランだ。結婚式の引き出物用のお菓子を納品するのに何度か行ったことがあるから行く分には問題ない。
「とっても可愛らしい子だから、トレイ君も気に入るわ」
そう言ってハドソンさんは「お祝い」と小さなケーキを一つ買って帰った。
それから店じまいをし、両親にお見合いらしき話をもらったと告げると、やたら嬉しそうにしてくれた。断られるのを前提とした話ということは伏せておこう。喜んでいる両親を見ると、そろそろそういう事も考えた方がいいのかもしれない、と、どこか遠くに思った。
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