Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
黒竹
2022-05-30 22:37:11
23840文字
Public
プロセカ
Clear cache
#1 Dear my teacher
【プロセカ】【みのはる】【花里先生パロ】
1
2
3
4
「遥ちゃんの成績ならこのへんかなあ。こっちは専攻次第だけど機材が充実してるし、候補に入れておいてもいいかも」
「ここはちょっとうちから遠いかな
……
私立でもいいって言ってくれてるけど、できれば国立を狙いたいし、とするとこことか?」
タブレットで主要大学一覧を眺めつつ、ふたりでああでもないこうでもないと話し合う。まだ大学の希望を出すには早い時期だけれど、考えておく分には損はない。
遥が先日、友人たちとフェニックスワンダーランドへ遊びに行ったそうで、お土産にマスコットのぬいぐるみを持ってきてくれた。知らなかったが、遥はマスコットのフェニーくんが好きなのだそうだ。両手に余るくらいの大きさのぬいぐるみは、みのりへのお土産のはずなのに、今は遥の手でもふもふされている。さっきちょっと触ったが、確かに手触りが良い。ついついそうしてしまう気持ちも分かったので、みのりは何も言わずに遥の好きにさせていた。
「おうちから通えるところがいいの?」
「うん、一応そのつもりで考えてる」
「そうなんだ。料理の練習してたりするし、てっきり大学からはどこか部屋を借りるのかと思ってた」
「
…………
」
遥がなぜか口をへの字に曲げて横目でこっちを見てきた。「?」どうしたんだろうと不思議がっていると、「
鈍
どん
」と呟かれて軽く頬をつつかれた。
「みのりさん、なんで私が料理の勉強してるか分かってない」
「え? 前に聞いたよ? 栄養バランスの取れたご飯を作りたいから、って
……
」
言いながら気づいた。あの話、てっきり遥自身の生活のことだと思っていたが、よくよく思い返せば意味が違っていたことが分かる。
ゆらりと遥から顔を背けた。
「
……
わたしに、ってことだったんだ」
「正解」
だからみのりさんから離れるわけにいかないんです。淡い微笑でそう続けられて、みのりはタブレットで顔を隠した。
「画面見えないよ」「無理
……
」なんだろうこの子、どうやったらこんな素敵なお嬢さんに育つんだろう。桐谷さん家の教育方針とか聞いてみたい。
くい、と指先でタブレットを引っ張られる。調べ物をしているのに画面を隠しては意味がない。諦めてタブレットを膝に下ろし、次のリストへスライドさせた。
「でも、そんなことで大学絞っちゃうのはもったいないよ。こっちなんかはちょっと遠いけど、新しい分野の研究が盛んでおすすめだし、ここはキャンパスの施設がリニューアルされてすごく綺麗なんだよ」
「んー、でもほら、近くの大学にもいいところたくさんあるし、そこまで欲張らなくても」
「うう
……
先生としては遥ちゃんに最善の進路を選んでほしい」
そばにいたいと思ってくれるのはもちろん嬉しい。しかしそれと同じくらい、この優秀な生徒を最適な学び舎に送り出したいという使命感を覚えている。
遥は困ったように笑い、ソファの背もたれに身体を預けて小さく息をついた。
両手の中にあったフェニーくんを顔まで持ち上げて見つめ合い、それからチュッとくちばしにキスをする。
横目で見ながらいいなあと思っていたら、フェニーくんがゆっくり飛んできて、ふわりと唇に触れた。
「
…………
」
「今も、けっこう色々我慢してるんですけど? 花里先生」
「ここで先生は駄目でしょ
……
」
「今のもアウト?」
「セ
……
いやアウ
……
セウト
……
?」
「どっち?」
クスクスと遥が笑っている。
「ルール的にはギリギリセーフだけど、わたしの心臓にアウト
……
」
アウトというか、ノックアウトというか。
夏も進んで遥はすっかり薄着になっている。ゆるいラインの半袖カットソーは動くたびに広い襟元からちらりと肌が覗いた。夏は魔物だ。目を閉じて無心を得ようとする。
目を閉じているから何も見えないが、そこからさらに暗くなる。何か目の前に迫っている気配があった。
みのりの唇を柔らかくて生暖かい風が撫でていく。
「それはアウトです!」
「くっついてなくても駄目?」
「駄目です」
どうしよう、動けない。目を開けたらたぶん心臓が止まるし、目を閉じたままではいつ決定的なことが起きてしまうかと冷や汗が止まらないし、これはまさに前門の虎、後門の狼。絶体絶命だ。
「今はお隣さん枠ってことにならないかな?」
「ならないよ
……
」
吐息に撫でられ続けながら、手探りで遥の肩を押し返す。
「あのね、遥ちゃん」
「なに?」
「実は、そのうち部屋を借りようと思ってて」
「え?」
やや不安げな反応だった。みのりはようやく目を開けて、遥の目を
……
見ようとしたが挫けて額のあたりに視線を定めた。
元々、いつまでも実家にいるつもりではなかった。両親についてはこまめに連絡を取ったり帰ったりすると伝えたら割合簡単に承諾してくれたし、それに、今すぐという話でもない。
「
……
卒業までいい子にしてたら、連れてってあげます」
遥はきょとんとして、それからこちらの意図を汲んでくれたらしく、瞳が三倍くらい輝いた。危なかった、直視していたら目が潰れたに違いない。
不意打ちで抱きしめられた。そのままソファに押し倒される。
「ちょちょちょ、遥ちゃん、わたしの言ってること聞いてた!?」
「聞いてた。ごめん、ちょっと嬉しすぎて」
遥が起き上がり、それはそれは可愛らしく、まるで天使がごとき笑みを浮かべた。
「約束?」
「うん。約束」
「
……
分かった」
見下ろしてくる遥の小指が差し出されて、そっとそれに自身の小指を絡めた。
「
卒業まで
﹅﹅﹅﹅
、ちゃんといい子にしてるね。花里先生」
その笑顔と言葉に、思わず喉の奥で唸る。
花里みのりは現代文の先生なので、文脈を読むのが得意だった。
卒業まではいい子でいると約束してくれた彼女。
では、卒業したら?
いったいどんなことになるのかドキドキして、しかしその動悸の理由は果たして不安なのか期待なのか、さて、どうにもはっきりしなかった。
1
2
3
4
広告非表示プランのご案内