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黒竹
2022-05-30 21:58:48
23046文字
Public
少女☆歌劇レヴュースタァライト
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#6 花盗人
【少女☆歌劇レヴュースタァライト】【ふたかお】【春に咲き匂う】
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クロディーヌが玄関で靴を履こうとしているところに、天堂真矢と星見純那がやって来て、少し遅れて大場ななも顔を出した。真矢は満足そうな顔で口元をハンカチで押さえている。どうせななに餌付けされていたのだろうと当たりをつけて、クロディーヌは「おはよ」とだけ言った。
「双葉たち、もう行っちゃったわよ。私たちも急いだほうがいいんじゃない?」
「まあまだ遅刻するほどではないけれど、いつもよりはちょっと遅いわね」
純那がスマートフォンで時間を確認する。軽く朝食をとっていたようだが、それにしても遅いような。
ローファーを履き終えたクロディーヌが立ち上がり、三人の方へ振り返る。
「クロちゃんも双葉ちゃんたちと会ったの? ならちょうどいいわ。桔梗の花言葉って知ってる?」
「キキョウ? なんで?」
「石動さんがつけていた練り香水ですよ。先ほどその話をしていたのですが、どうも話が噛み合わなくて」
話がまったく読めない。「どういうこと?」訝しげに眉を寄せながら重ねて尋ねる。つまり、と純那が話し始めた。
「石動さんが花柳さんから贈られた桔梗の練り香水をつけていたんだけど、みんな石動さんらしいとは思いつつ、それぞれ感想は違っていたの」
「はあ」
「西條さん、桔梗の花言葉は?」
「知らない」
「なるほど」
では私から、と純那が人差し指を立てる。
「誠実」
次に真矢が胸に手を当て、歌うように言う。
「従順」
最後にななが一歩前に出て、純那と揃えるように指を立てた。
「永遠の愛」
クロディーヌは顎に手を当ててふんふんと頷く。やっとみんなの言いたいことが分かった。
「なるほど、全部双葉っぽいわね。香子がどれのつもりであげたのかは知らないけど」
「クロちゃんはどれだと思う?」
ななの茶目っ気のある問いかけに、クロディーヌは手のひらを上に向けた姿勢で肩をすくめた。
「さあ? どれでも知ったことじゃないし、あの香り、双葉によく似合ってたわ。それでいいんじゃない?」
その言葉に、三人は順繰りにそれぞれ目を見合わせて、それから一斉にクロディーヌに注目した。
いきなり見つめられてクロディーヌがかすかに身構える。
「
……
たぶん、西條さんが正解だわ」
「ですね」
「そうだね」
正解したところで賞品があるわけでもないが、天堂真矢まで褒めてきたので悪い気はしない。
たぶん少し前まで、石動双葉を一番理解していたのは西條クロディーヌで、理解しすぎたせいで彼女たちを哀れんでもいたのだけれど。
今はそんな重苦しさもなくなって、ただ単純に、あの二人はよく似合うと思う。
不安定な足場でお互いに支え合っていた頃は、足元が崩れてしまわないか、そうなったらもろとも壊れてしまうのではないかと危ぶんでいたものだが、今はそれぞれ独立して、それでもそばにいる。
似合うというのは、ひとつとひとつだということだ。別々のものが寄り添っている美しい姿だ。
西條クロディーヌは、その姿をいとおしいと思う。
傍観者として得られたおまけみたいな正解に、クロディーヌはふふりと笑って、花ひと枝をくわえて高い空を飛び回る、小さな鳥を幻視した。
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