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豆炭々炬燵
8588文字
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アンデッドアンラック
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【フィル風】カルガモ
【アンデッドアンラック】でフィル=ホーキンス×出雲風子
ループ後の世界で組織内の名物化する風子さんとフィルくんなお話。
※これ書いている人1~18巻読破並びにwj44以降読み始めた為19巻~wj43の間がすっぽり抜けているので設定とか諸々何か違くね?という点からそっと目を逸らして頂けると大変ありがたいです。
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どうやら知らぬ間に一人自室で思考に耽り籠っていたと思っていたら無意識に組織内を徘徊する変な癖がついてしまったらしい。
ニコさん達に相談して解決するのとは別の、自問自答に近い頭の中に浮かぶ考えをカチカチ嵌めては組み立て直すをくり返す。
考えに没頭している時は視界に映る情報は自分に決して当たらぬよう避けるに特化して、誰かに軽く声を掛けられても自分は生返事をしている様子。でも、それがまた全くもって記憶に残っていない。
流石に強めに声を掛けられたり、肩をポンと叩かれたりしたら意識が現実世界に引き戻されるけど、熟考していると捉えられているようであまりそういう事はない。
ただ同じフレーズを何回も耳が拾っていれば意識は其方に引き寄せられる。
──カルガモ
それは微笑ましいような、そのままを口走ったような、色んな人の感情と声色が籠ったフレーズだった。
思考の海に沈んでいた意識が浮上すると共に歩んでいた足が止まる。止まったことで視界に映る自室ではない組織内の廊下の光景にニット帽子越しに後頭部を掻いた。
「またやっちゃった」
脳内に「あんまり根詰めすぎんな」というニコさんの幻聴が聞こえる。それがまた一言一句綺麗に再生される位には何度も言わせてしまっている事実に乾いた笑い声が漏れた。
丁度自室の外に出たんだ。次の行き先について相談しに行こうか、なんて思っていた矢先のこと。
くい、と。上着を引っ張られた。反射的に上半身を捻り振り返る。目に映る光景は無機質な組織の廊下が奥までずっと伸びていた。
「(気の所為
…
?)」
顎下に軽く握った右手を添え首を捻る前に、もう一度上着を引っ張られたので今度は意識と視線を少々下に向けた。
「フィルくん」
静かな新緑色の大きな瞳がじぃっと此方を仰ぎ見詰めている。
視線の高さを合わせるためしゃがめばフィルくんが上着を掴んでいた手を離した。
ひと時も逸らさず向けられ続ける眼差しに問いかける。
「ごめんね気付くのが遅れて。私に何か用かな?」
瞬きせず交差する視線に乗る意図を読み取るべく窺い見るが、テラーさんと違い表情や纏う雰囲気から得られる情報が少なすぎて如何にも会話は必然と問いかけ形式になってしまう。
「もしかして、次の課題のこと?えっとねフィルくんはって、違う?」
此方を見詰める眼差しを逸らさず首を横に振うフィルくんに軽く悩み、ポンと浮かんだ考えと同時に左掌の上にに右拳を置いた。
「分かったっ。お母さんのこと探してる、でしょ?」
我ながらこれだと導き出した問いの答え合わせの結果は如何に──。
しばし無言のまま見詰め合えば、静かな新緑色の大きな瞳が虚空を見遣ったあと小さく頷いたのでホッと胸をなでおろす。
そうと決まれば即行動。膝を叩きつつ腰を上げ、手袋に包まれた手を差し伸ばす。
差し出された手と顔を交互に見てからフィルくんは私の手を掴んだ。
「行こっか」
繋いだ手を離さず一緒に歩き出す。ぎゅっと握る手に応えたくてやわく握り返しながら他愛のない、ある意味一方的な話をフィルくんは目を逸らさず、ずっと聞いていてくれた。
組織も大所帯になって広くなったから迷っちゃうよね、とか。ご飯美味しい?私は美味しすぎて食べ過ぎないようにしてるんだよ、とか。何か欲しいものがあったらどんどん言って資金面には自信があるから、とか。そうだお母さんと一緒に地球観光でもいいかもね、とか。色々、と。
そうしたらフィルくんが立ち止まるのでつられ立ち止まる。すると、彼は繋いでいない方の手で私を指差し、そのまま人差し指で自身の口端をクイっと持ち上げた。
「フィルくんとお話するのが楽しくて、って私が勝手に喋ってんだけど」
照れ臭くて笑えば、フィルくんは自身の口元から指先を離して今度は両手で手を掴んでくれた。何処までも混じり気のない澄み切った新緑色の瞳に映り込む無邪気な自分の姿にまた照れ臭くて笑った。
その後、目星を付けていた場所に向かえば無事にフィルくんのお母さんと合流できた。
フィルくんを抱き締めながら柔和な笑みを浮かべお辞儀をするフィルくんのお母さん。滲み出る優しさに溢れたお母さんに抱き締められたフィルくんが此方に向かって手を振るので振り返した。
そんな二人の姿に心の奥がぽかぽかする。不感で感情を失ってしまったけれど、私の目に映るフィルくんはとても嬉しそうに幸せそうに見えた。
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