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豆炭々炬燵
10897文字
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星のカービィシリーズ
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【デデカビ】一番星に手を伸ばす【小説詰め合わせ】
※新作ゲームのネタバレ含みます※
またまた大体ふせったーの妄想集めてまとめた感じです。
1
2
3
4
◆明るい空でも光る星
ワドルディたちが気を利かせ作ったデデデ大王専用の特別仕様部屋の扉が荒々しく開け放たれた。逆光で見えにくいが、その表情は硬く微かな苛立ちを纏っている。カーテンの隙間から夕陽が差し込む部屋に入るや否や部屋の主であるデデデ大王がまた豪快に扉を閉め、そのまま大きなベッドの上に倒れ込む。
鈍く鳴るスプリング音が静かになるにつれ、上下に動いていたデデデ大王の体から力がゆるり抜けていった。
「くそっ、最悪だ
……
」
抱き寄せた枕に顔を埋め低く唸る。
思い出すはついさきほどまでの出来事。
新世界に飛ばされてきた当初とは比べ物にならないほど、穏やかで陽気な日々をそれなりに楽しんで過ごしてきた。何をするわけでもなくゴロリとコロシアム横で寝そべっていれば、飽きもせず今日も今日とて町中を元気に駆け回る春色が視界端に映る。
それを目で追うだけでも十分暇つぶしになる。転がり弾む春色を視線で追っていればどうやらこちらに向かってくる様子。
デデデ大王の前に着くなり元気よく挨拶する春色、カービィにデデデ大王が軽く右手を上げ挨拶を返した。
最近の日課になりつつある流れにデデデ大王は今回も挨拶をしたあと、カービィは自分のもとから去るものだと思っていたが如何やら違うらしい。
カービィの小さな手がデデデ大王の赤いガウンの袖を掴み引っ張る。さながら、これから遊びに行こうよと誘う仕草にデデデ大王が体を起こした。
ただデデデ大王が起き上がり座り直しただけでカービィは嬉しそうに笑い広場で燦々と輝くワープスターを指した。
元気になったのなら一緒にこの新世界を見に行こう。この町の外には楽しいものがたくさん溢れているんだよ。
興奮気味に説明するなりカービィは小さな体でデデデ大王の袖を引っ張りながらワープスターのもとへ連れていく。どうしても、この町の外に連れ出してもとい一緒に遊びに行きたい気持ちを隠すことなく駄々洩れなカービィ。半ば強引に半ば呆れながらもデデデ大王はその小さな手にひかれワープスターに乗り込んだ。
そして、デデデ大王はこの新世界に飛ばされた当初ろくに見ることが叶わなかった、まじまじと意識して楽しむことなど到底出来なかった新世界観光に連れ出されたのだった。
忙しなくカービィはあれやこれや体全体を使ってデデデ大王に説明する姿はどうしても彼にこの気持ちを分かち合いたかったのだと傍から見ても分かった。はじめて見たほおばりヘンケイに驚くデデデ大王を見てカービィはどんどん色んなほおばりヘンケイを披露する。ただはしゃぎ過ぎたカービィが勢いに任せジェットコースターほおばりやアーチほおばりをすれば、それに何とか振り落とされぬようしがみ付いていたデデデ大王にしこたま怒られしまった。
久方ぶりに感情が表に出ているなどと、頭の隅で思いながらデデデ大王は思う。
一応カービィもカービィなり気を使って今の今まで誘えなかったのだろう。実にらしくないカービィの気遣いを汲み取ったデデデ大王は、しょんぼりしているカービィの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「次はどこを案内してくれるんだ?」
その言葉を聞くなりカービィの瞳がキラキラ輝く。小さく丸い手がデデデ大王の手を取り、はやく次はこっちこっちと急かす。視線はすでに次の場所を見ているのか、デデデ大王を見ていない。春色の背中を見つめるデデデ大王の目は眇められ、やれやれといった具合に空返事する割には朗らかであった。
「ちったあ加減ってもんを知らんのか」
散々連れまわされ足が棒になってしまう。未だ先に進もうとするカービィを片手で掴み持ち上げるデデデ大王は彼に一時休憩を申し出た。
足をバタつかせていたカービィはそれを受け入れ元気よく返事する姿に本当に分かっているのかと一抹の不安を覚えたデデデ大王だが、手ごろなベンチに案内されホッと胸を撫で下ろす。
青い空に浮かぶ白い雲はプププランドのと然程変わりないな。
とくに喋りかけず、ボーっと眺めていたデデデ大王はふと視線を隣に座っていたカービィに向けた。
別に深い意味はない、ただなんとなくあの間抜けで暢気な横顔を見るだけの、つもりだった。
「!!」
隣に座っていた筈のカービィがいない。焦燥感に駆られたデデデ大王が周囲を見渡すも、どこにも見当たらない。いやな感覚が足元からぞわぞわと這い上がってくる。呼吸が浅く速くなり、上手く思考が纏まらない。
次第に揺れる視界の先、ぼんやりと春色のなにかが近付いてくるのが見えた。
元気よく駆け寄ってきたカービィはどうやら次のおすすめスポットの場所を探してきたようで、今度はそこに行こうと明るく話しながらぽよぽよと体を動かしている。
だが、デデデ大王の様子が何やらおかしいと、気付いたカービィがデデデ大王の赤いガウンを控えめに引っ張った時だった。
「
……
る」
デデデ大王の言葉が聞こえず、カービィが小首を傾げた瞬間、傍にいた小鳥たちが飛び立ってしまうほどの怒鳴り声が周囲に響いた。
「帰る!」
急に怒鳴ったデデデ大王に驚いたカービィの目が丸くなり、ガウンを掴んでいた手も振り払われた。
デデデ大王の胸中にたとえようのない感情が渦巻いていることをカービィは知らない。そして、また何故相手が声を荒げ帰るというのかもカービィは分からなかった。
「はやく帰らせろ!」
デデデ大王の嘗て見たことのない気迫に押され、カービィがワープスターを呼べばカービィ一瞥もせずワープスターに荒々しく乗り込んだ。
カービィもワープスターに乗り込む。そのままワドルディたちの町に戻る間、カービィはデデデ大王になんでどうしてと尋ねても返事は返ってこなかった。
そして、町に着くなりワープスターから乱暴に降りたデデデ大王はカービィを残し自室に向かって大きな足音を立て歩き出す。
後ろから切なげに呼ぶカービィを無視してズンズン歩くデデデ大王にワドルディたちは何事かとざわつくがそれすら無視してでデデデ大王は自室に戻っていった。
「ああ、くそっ
…
! くそっ
…
!」
枕にくぐもった声は苛立ちを孕み、そしてどうしようもなく寂しげであった。
「たかが一瞬じゃねえか。なのにまた、あいつに会えなくなっちまうかもと思っただけでこれかよ
……
」
つくづく自分らしくない、なんて呟くデデデ大王の声は枕に吸い込まれる。
一瞬間を置き言葉にならない思いのたけを枕に向かって叫んだ。それは唸り声のような悲鳴のような不明慮な雄叫びに似ていた。
多少吐き出して楽になったのか、枕を強く握りしめていた力を緩め溜息を吐いた。
「(
……
また眠れない日が来るとはな)」
疲れているのに眠れない日々の忌々しさにデデデ大王はまた大きく溜息を吐き、サイドテーブルに置かれているものに手を伸ばしたその時、ノックもせずに開く扉の音に目が険しくなる。
顔だけ振り返れば夕陽に体をオレンジ色に染めたカービィが扉越しに顔を半分覗かせていた。
どうせ明日になれば今日のことなぞすっかり忘れ普通に接するものだとデデデ大王は思っていた。つまり、今此処にカービィが来るなぞ、つゆとも思っておらず、おずおずと扉を閉めこちらに近寄ってくるなんてこれっぽちも考えていなかった。
普段全然気にしない癖こちらにとってよくないタイミングでやってくる相手にデデデ大王の顔が苦々しく歪む。
「入ってくんな。帰れ」
デデデ大王の棘のある物言いにも動じず、カービィはベッドに近付いたかと思えばよじ登り全身を使って赤いガウン越しにデデデ大王に抱き着いた。
「やめろ、帰れ」
抱き着いているカービィを引き剝がすべく、ガウンをバッサバサさせるデデデ大王。だが、離すまいとしがみ付いているカービィを引き剥がすことは出来なかった。いつしか烈しく動かしていたデデデ大王の動きが小さくなり、しがみ付いていたカービィを抱き込むように腕をまわした。
「(
……
)」
腕の中で、ごめんねと、今度気が向いたらでいいからまた行こうねと。小さく話すカービィにデデデ大王は抱きしめる力を少しだけ強めることで肯定を表す。
いつの間にか夕陽の筋は消え、部屋の中が暗闇で満たされる。いい加減、自分の家に帰らなくていいのかとデデデ大王がカービィの顔を覗き込む。爆睡だった。そういえば徐々に声が小さくなっていたような気がしなくもない。
頬を引っ張ろうが、頭をぽよぽよ叩こうが起きやしない。
暫くして、デデデ大王はこの地に来てから冷やかし程度に使っていた香の存在を思い出した。使えば多少眠りやすくなる香を焚こうとすれば丁度カービィが来たのだった。
「そういや昨日も焚いてたな」
だとすれば残り香がまだ残っていたとか。そうデデデ大王が思うなり、腕の中で気持ちよさそうに寝ているカービィに呆れた視線を向ける。
「馬鹿効きじゃねえか」
知ってか知らずか聞き取れない寝言をむにゃり言うカービィに這っていた気が緩み、デデデ大王もそのまま目を閉じカービィを抱えたままベッドに潜り直した。
この新世界に来てからはじめて深く眠れたデデデ大王は腕の中で眠り続けるカービィを目覚めるまで抱きしめ続けた。
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