豆炭々炬燵
5314文字
Public SSSS.GRIDMAN
 

【マク裕】透き通る海空の味【キャリ裕】

当たり付きアイスを食べる二人のお話(マク裕)と、ラムネ瓶に入っていたビー玉をもらうお話(キャリ裕)と三人で復旧待機していた時のお話。



その腰にある刀、本物だったんだ。
隣で小さく呟いた内海の言葉に視線を瓶から見事ビー玉を取り出すことに成功した当人に向ける。
しゃがみ込んだ体勢のまま、太陽の光を浴びてキラキラ輝くビー玉をひょいと摘まみ上げた。太陽に翳してビー玉を眺める姿を見ていると目が合った。刺すような目つきに思わず持っていたラムネ瓶を握りしめ息を飲んだ。
バッチリ視線が合った後ズボンのポケットに右手を突っ込み、もう片方の左手に瓶から取り出したビー玉を親指と人差し指で摘まんだまましゃがんでいた体勢を起こしてこっちに近付いてきた。
「えっと」
ずずいっとこちらを見下ろす眼光は逆行になっているのも相まって鋭さが増している。背を丸めているから視線の高さが大体同じだとしても相手の方がやはり高い。
「(じゃなくて、ジロジロ見られたら居心地が悪くなるって)」
相手に不快な気持ちをさせたら謝らなくちゃいけない。素直に謝ろうと口を開いた途端、筋張って長い大人の指に摘ままれたビー玉が目の前にドアップで映り込んだ。
「や、やる」
ビー玉越しから見える真直ぐで有無を言わせない眼差し。無意識の内に両手を差し出せばビー玉が乗せられた。
「ありがとう、ございます」
謝罪の代わりに出た感謝の言葉。咄嗟に口から出たそれはあまりにも形式染みていて気持ちを置いてけぼりにしている。恐る恐る上目でビー玉をくれた相手を見上げると、何故かきょとんとした顔つきで見下ろしていた。
「も、もっといるか?」
どういうことだろう。でも、その疑問はあっさり解決というか分かった。相手の視線の先にまだ斬られていないラムネ瓶を持つ手に注がれ、かつ刀に手を添えているからだ。
「大丈夫です。これひとつで十分です」
「そ、そうか」
若干拍子抜けしたような顔をした、ような気がした。刀に添えられていた手をズボンのポケットに突っ込みつと歩き出す丸めた背中のあとを追いかける。
というより、このビー玉貰っていいんだろうか。ビー玉取り出したくてラムネ瓶斬ったんじゃ。



「裕太の視線が物欲しそうに見えたとか」
「そうなのかな」
「別にいいんじゃね?本人がくれたんならさ」
「うん」
川岸の沿道に降りて遠い場所に聳え立つ怪獣をスマホで撮影しながら内海が興味薄に返す。ズボンのポケットに手を突っ込めば丸くて硬い感触が指先に触れる。体温でぬるくなったビー玉のつるりとした表面の感触を確かめながらポケットから取り出した。遠い場所で佇み動かない怪獣をビー玉越しに覗き込む。ビー玉の世界に映る怪獣の姿は上だけ大きくなったり、下だけ丸まったりとおかしな形になった。
そのまま横移動して内海を見た。近い分だけあってビー玉の世界が内海一面と化した。
……何してんだ」
怪訝な声と視線。ビー玉を下ろして理由を言おうとすれば、さっきまで橋の上で六花と話していた人が立っていた。
大げさに驚く内海のリアクションには及ばないもののびっくりした。
「は?橋から飛んで、えー
橋の上から聞こえる呆れ混じりな声を聞くにこの人屋根の上に飛び乗っていた感覚で下に飛び降りたんだ。
「い、行くぞ」
せっかちなのかな。目配せした後また歩き出す丸めた背中を追って足を踏み出した時、わずかな出っ張りにつま先を引っ掛け体勢を大きく崩してしまった。前のめりに倒れる体もそうだけど、手から弾け飛ぶように空に投げてしまったビー玉に釘付けになった。ゆるやかに動く世界で意識だけ高速に動き流れていく、と見せかけて急に元の世界に引き戻された。
首根っこを掴む要領で襟元を掴み後方に引っ張られたお陰で転倒を免れたばかりか、手の中から飛んで行ってしまったビー玉も掴んでくれていたみたいで、そっと手の中に返された。戻ってきたビー玉にホッとため息が出る。割れなくて良かった。
「すみません助かりました」
「き、気にするな」
「落とすの怖いからもうリュックの中にしまっておこう」
「そ、それがいい」
いそいそリュックの肩紐を片方下ろしてファスナーを開ける。転がったり割れたりしないよう小さな内ポケットにビー玉を入れている間、めちゃくちゃ見られているけど急かされはしなかった。
「よっと」
「い、行けるな」
「はい」
リュックを背負い直したのを最後まで確認してから早々に歩き出す相手の背中を今度は足元に注意しながら追いかける。今度は躓かないよう追いつけるよう追いかける。