豆炭々炬燵
5314文字
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【マク裕】透き通る海空の味【キャリ裕】

当たり付きアイスを食べる二人のお話(マク裕)と、ラムネ瓶に入っていたビー玉をもらうお話(キャリ裕)と三人で復旧待機していた時のお話。

肌に纏わりつき不快感を誘う湿り気。燦々と降り注ぐ強烈な太陽光。本格的な夏到来の兆しに裕太は額に滲んだ汗を拭う。
「あつい
授業が終わり部活や特にこれといって用事のない生徒らが校門を目指し流れていく。放課後そのまま寄り道せず帰宅する者、一人どこか寄り道する者、複数人集まり賑やかにはしゃぎふざけあう者たちに紛れ裕太はリュックを背負い直した。
「(今日は一人かぁ)」
授業終了のチャイムが鳴り響きざわつきだす教室内で裕太は今日も三人一緒に六花の店に行くものだと思っていた。席を立ち前方にいる内海に声を掛けようと裕太の口が開くのより先に担任が内海を呼んだ。
「内海ィ、明日授業で使う道具のことでなんだが先に準備しとくぞ」
あからさまに渋い顔をする内海に担任の眼鏡が光る。
「お前係だろ」
「ウィーッス」
不承不承。ショルダーバッグを肩に掛け席を立つ内海が振り返り顔の前で両手のひらを合わせた。
「すぐ終わらせっから先店に行っててくれ」
「うん分かった」
「ほら内海いくぞー」
担任に呼ばれ気だるげに教室を出る内海を裕太が苦笑交じりに見送る。授業から解放され本格的にざわざわと賑やかになっていく喧噪の中でも裕太の耳は六花たち女子三人組の会話を拾う。
盗み聞きする気は更々ないものの、どうやらなみことはっすにせがまれ放課後何処か行こうと誘われているらしい。二人にぐいぐい言われ満更でもない六花だったが、徐にサマーセーターのポケットに手を突っ込みスマホ画面を見た途端、あーと気落ちした声を漏らした。
「ごめん。買い出し頼まれた」
「えーっ」
「マジかー」
本気ではない二人のブーイングを背に謝りながら足早で教室を後にする六花の後ろ姿に裕太はタイミングを完全に逃した。内海と違い一緒に買い出しに行く選択肢は早々無くなってしまったものの、六花は買い出しを頼まれたからには済み次第寄り道せず帰るに違いない。遅かれ早かれ内海と六花の二人は店で合流できる。ただ店まで行く道のりが一人というだけ。
ちょっぴり寂しい気持ちになりながら校門を潜る。気もそぞろ裕太の視線は真っすぐ前を見ており、校門に腕組しながら寄り掛かり異様な存在感を放つマックスには一切気付かず通り過ぎ。
「二人と一緒じゃなくて寂しそうだな」
雑踏の中でも通る耳障りの良い落ち着き払った声に裕太の肩がビクっと跳ね上げる。振り返れば閉じていた瞼を開け腕を解き貫禄ある体躯をしたマックスがやおら歩き出し裕太の隣に立ち。
「マ、マックスさん?どうして学校に?」
そのまま歩き出してしまった。歩幅の違いからマックスが数歩進む距離は裕太が早足で追いかけやっと縮まる距離であったが、裕太が追いつくまでマックスは数歩先で佇み、追いつくなり裕太に合わせ歩き出した。
想定外の状況に未だ困惑を隠せない裕太を一瞥したマックスが問い掛ける。
「二人は如何した」
「えっと。内海は先生に用事を頼まれて、六花はお店の買い出し、だと思います」
「では、遅れて店に合流するという事か」
「はい」
裕太を見下ろしていたマックスの視線が天使の姿を追い再び裕太を見下ろした。
「残念だったな」
「何がです?」
「彼女と二人っきりじゃなくて」
「だから何がです!?」
一目で分かるほど動揺した裕太の顔が火照る。それをマックスが指摘したところで「今日めちゃくちゃ暑いからですね?!」と裕太なりにはぐらかすもバレバレだった。
多々思う節があるものの胸中で呟き浅く溜息を零すマックスの視界にあるものが映り込み一人納得したのか頷いた。
「いや~ほんと、あっついなァってマックスさん?」
足を止め絢喫茶に向かう道から逸れ歩いていく大きな背中を目で追っていれば、道向かいにあった古そうな一軒家の軒先に小さい子供がわらわらと屯っている店に吸い込まれ数分も経たない内に出てきた。やや離れているにもかかわらず子供たちのでけぇーおっきいーという声がまだ聞こえる。程なくして手袋をした手が何かの端を摘まむように持っていた。それは大きな口を開けた少年の絵がデカデカとパッケージに描かれ所々霜が付いている。
記憶を失ってからというもの裕太の目に映るものは皆目新しく一様に興味を抱かせる。
「それはなんですか」
「暑いのだろう」
話がかみ合わず、きょとんとする裕太にマックスが続ける。
「氷菓だ、食べてみるといい」
「はい。ありがとうございます」
半ば強引に渡されたビニールに包まれた何かの冷たさが手のひらに伝わり裕太の口から感嘆の声を上げさせた。
「冷たい、これ冷たいですよ」
「溶ける」
目を輝かせはしゃぐ裕太から氷菓を渡すようマックスが促す。包装の口を開け本体を取り出し、棒部分を裕太の手にそっと持たさせた。持った瞬間、水色の見た目さながらさわやかで冷たく甘い香りが漂う。
記憶を失っていてもこの冷たくて甘そうなこれを口に頬張ればどうなるか裕太にも想像がついた。だが、実際齧ってみれば裕太が想像していた以上の物だった。
「シャリシャリして、甘くて冷たくて、……おいしい!」
一心不乱。されど味わって食べる裕太の姿にマックスの目が眇められる。
「それは良かった。だが、早く食べないと溶ける、ぞ」
マックスの言葉じりの歯切れが悪くなったのは裕太が角が歯形で欠けた氷菓を差し出したからだ。
裕太の顔から感動と嬉しさ楽しさを共有したい気持ちが前面に押し出されている。
「いいのか私の一口は大きいぞ」
「どうぞ」
満面の笑みから一転、大きく齧られた氷菓に裕太の目が釘付けになった。
「あ」
「だから言っただろう」
「違います違います。何か棒に書かれ、当たり?」
「む」
棒に書かれた当たりの文字。氷菓を食べ終わった棒を裕太から受け取り再び駄菓子屋に訪れたマックスに子供たちが、また来たー、当たったのー?と無邪気に話し掛ける光景はなんとも微笑ましかった。
道すがら。一度見て覚えたので今度は歩きながら包装を開け氷菓を取り出す。そして徐に裕太は隣を歩いていたマックスに氷菓を差し出した。
「俺の一口だって大きいですよ」
「そうか」
悪戯っぽく笑う裕太からマックスは氷菓を受け取った。









駄菓子屋で買ったアイスが大当たりしたので仲良く半分こするマク裕
#ふたりだけのしあわせ
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