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豆炭々炬燵
5570文字
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【新ペニビル】デリーの町に冬がやってきた【旧ペニビル】
新作版、旧作版それぞれのデリーの町に冬がやってきた
ついでに道化師が兄弟のところにやってきた
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ひっそりと静まり返った朝。身に染みる寒さで目が覚めた。ぬくいベッドの中に戻りたい欲求を押し込んで抜け出す。ビルは椅子の背もたれに掛けていた上着を羽織りカーテンを開け一人納得した。
「
――
雪」
窓の外に広がる白い世界。何もかも白で覆い尽した光景に眠たげな目が覚めてきた。
「こ、こいつはジョ、ジョージが喜ぶぞ
…
」
その呟いた言葉はビル自身はしゃぎだしているのに気付いていない。
庭に降り積もった真っ新な雪。誰の足跡も無い雪。ジョージはきっと一番乗りで自分の足跡を付けたくて朝食を慌てて食べるに違いない。口の周りをソースでお洒落して、それから母親に口のメイクを落としなさいって早く外に出たいのに待ったを掛けられるんだ。結論から言えばビルの想像通りになった。大人しくされど早く拭き終わって欲しい気持ちが声に出ているジョージを母親が窘めしっかりソースを拭き取った。慌ただしく母親にお礼を言いながら玄関に走るジョージに母親は苦笑して父は微笑んだ。
ビルもビルとて早々に朝食を切り上げダウンジャケットを着ながら玄関に向かう。玄関を開けた瞬間、外から吹き込む冷気にぶるっと身震い。いそいそ前のファスナーを一番上まで上げ切ってからビルは玄関を開け白い世界に降り立った。
耳に届く楽しげな声。自然と表情が緩む寸前、真顔に戻った。何故か。こんな寒空の下。上着を筆頭に防寒具を一切身に着けていない弟を兄がじとりと睨む。
「ジョ、ジョージ」
「なぁにぃ~ビル~?」
何も知らず駆け寄ってくるジョージを無言のまま出迎えるビルはとっくにファスナーを一番下まで下ろして上着を脱いでいた。
「風邪ひっ、ひっ、ひきたいのか!?」
「あったかーい」
乱暴に乱雑にジョージにダウンジャケットを着させている割にしっかりファスナーを上げたうえに冷たくなった指先が温まるまで手を握り続けた。はやく遊びたくてうずうずしてるのを無視してビルは納得するまで温める。
如何にか納得するまで温めたが速攻雪を掴んで振り撒くジョージにビルは鼻で息を吐いた。当分の間、家に戻りそうもない。
「それじゃあ君が寒くなっちゃうじゃないかビル」
唐突。余りにも唐突だった。何の気配もなく音もさせずビルの隣に壮年の道化師が現れた。相変わらず鮮やかな色たちが同居する衣装は冬の装いになっており見るからに温かそう。オレンジ色のぼんぼん付きニット帽、紺色の星柄が描かれたマフラーを装備。手袋に至っては普段使いのものではなく、もこもこあったかミトン仕様。
「
……
余計なお世話だ」
ぼそり呟いたビルにペニーワイズの口から笑い声が漏れる。
「寒そうな君にプレゼント」
「え、いら
――
」
言いかけた言葉は口元を覆う勢いで巻かれたマフラーによって遮られた。ぐるぐるに巻かれ後ろをちょうちょ結びをして終わり、かと思いきや被っていたニット帽を目元が隠れるほど深く被らせ、わたわたしている手にはもこもこ手袋を装着させられた。
ビルがマフラーから顔を上げ、ニット帽をミトン手袋で押し上げ抗議の声を上げる。
「な、なにするんだ!?」
「何ってビル、君を温めるためさ」
しれっと言いつつ、ペニーワイズは白銀に光る糸で刺繍を施した黒色のベストを脱ぎ、それをビルの肩に羽織らせた。
「(それ別個で脱げるんだ
……
)」
「これで寒くないぞ」
ドーランを塗りたくった顔に映える赤い口紅が満足気につりあがる。
刹那、腹立たしい気持ちがビルの中いっぱいに広がった。しかし、悔しいかな。ペニーワイズのいう通り温かい。
「因みに帽子、マフラー、手袋全部俺の手作り」
「へ、へえ。編み物、と、得意なんだ」
しげしげ編まれ作られた手袋を見下ろす。
「(
……
あったかい)」
頭に被ったニット帽、首に巻かれたマフラー、手をすっぽり覆うミトンの手袋。それのどれもが一様にあったかくて。
「~~あっつ!?!?」
肌が焼ける程の熱を帯びていた。もとい焼け爛れる感覚と相違ないんじゃないだろうか。気付けばしゅうしゅう触れている箇所から白い湯気らしきものが立ち上っている。
「使用した糸も100%俺製だから保温効果はお墨付きだ」
「ほ、保温どころかっ。こっこっ、これじゃ火傷す、する!」
「あ~。やっぱり人間の肌じゃ敏感過ぎて耐えられなかったか~。いや~おじさんうっかりうっかり」
「ふ・ざ・け・ん・な!!」
タハタハ笑うペニーワイズの顔面目掛けてビルは防寒具一式を投げつけたのだった。
***
ほんの僅かな間にもかかわらず、少年の肌に直接触れていた箇所には繊維の痕が赤い筋となって何本も描かれている。
「いつつ
…
、これ治ればい、いいけど(まだ熱持ってる
……
)」
「早く治るよう舐めてツバでもつけてあげよう」
「結構!」
「じゃあ遠慮なく
――
、冗談だよビルゥ~」
舌をべろんと出して舐める仕草をしてよく言う。厭らしく弧を描いている金色の瞳を睨む碧眼は何処までも冷たい。
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