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豆炭々炬燵
7662文字
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The Night
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【The Night】結婚とは人生の墓場である
嬢と氏の時系列バラバラの単発小話三話セット
大体氏の口調性格が迷子&一部モブが出張ってます御注意
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3
◆shadows and fog
濃霧が世界を白濁に染める日。そんな日は太陽が遮られ普段より長い時間活動が可能で白い闇に紛れ外を出歩くのも訳ない。
半分ほど開いた緞帳の間から空を仰ぎ見る。何処までも続く霧深い世界をただ眺めていれば窓ガラスが小刻みにカタカタと身を震わせた。
程なくして背後から忍び寄る気配に視線を空から逸らさず意識だけ後方に向け問い掛ける。
「やけに静かだからまた死んだのかと思ったわ」
「例え死んだとしても再び現世に呼び戻してくれるのだろう?」
「
……
さあね」
漸く視線を空から外し振り返ったMissiだったが予想以上にDukeが距離を詰めていたことに顔から感情という感情がそぎ落とされた。
吐息すら分かる距離。しかし、普段と違いやけに神妙な面持ちで見下ろすDukeにMissiは一瞬きょとんとするも直ぐに胸の前で腕を組み、まるで腹の奥に隠す企みを見定めるように目を眇めた。
「出掛けるぞ」
「どこへ?」
「我ら一族が集う夜会に。勿論、君のお披露目も兼ねてのものだ」
その一言を聞いてMissiは合しした。やたら靴だの小物だの最新のドレスだの身の回りが当人を置いてけ堀にして充実していったのはこのためか。
「素晴らしい夜にしようじゃないか我が妻よ」
徐にDukeは外套の影から腕を伸ばしその懐にMissiを抱き寄せた。霧の湿った匂いに紛れ舞う香りは双方の頭をクラつかせる。一人は赤裸々な悦に浸り、もう一人は気付かれないように冷静を装うが尖った耳の先端がほんのり染まっていた。
「Duke卿ご夫妻」
従僕が高らかに告げる声がざわついていた大広間を静寂へと変えた。
皆がみな、数段高い位置に備えられた場所に佇む二人を見上げ何の合図も無しに頭を垂れる。
眼下に広がる光景は圧巻の一言に尽き、隣でさも当たり前のように振る舞うDukeを横目で見遣ったMissiは改めて結婚した相手の地位の高さを認識した。
優雅な動きで差し出された白い手。一拍置いてから自身の手を置き共に階段を下りきったのに合わせ大広間にいた全員が頭を上げた。
横一列に並んだ列から一歩前に進み出た者がいた。宵闇色の美しいドレスを纏い、すらりとした背の高い女性吸血鬼が恭しく再び頭を垂れDukeに微笑む。
「これはこれは我らが閣下、貴方様が率先して夜会を開くなぞ珍しい事もあるものです」
「なに妻を娶ったなら紹介しろと口煩く言う者達が多くてな。今宵は皆に我が愛しき妻を周知させに来た」
「こちらが噂で兼がね聞く可愛らしい奥方様でしたか。なんとも小さく愛らしい、はじめ閣下の御息女か何かなのかと。どうもはじめまして」
「
――
ええ、はじめまして」
彼女の露骨すぎる態度にMissiは自分の中の熱が冷めていくのが分かった。テレビや本の中でしか知らない一度でいいから味わってみたい、想像上で描いていた夢の世界は儚くも砕け散った。種族が変わろうが生きる世界が違かろうが結局何処にでも似たような輩はいるのだとMissiは独りごちる。
「それでは閣下。貴方様に是非お目通りしたい方々が向こうに集まっていらっしゃいますわ」
人だかりがしているところへ連れて行こうと彼女の腕がDukeの腕に絡みつく寸前、彼はMissiの肩を抱き自分のもとへ引き寄せた。
「ならば我が愛しき妻も共に。今宵開いた夜会の主旨を忘れたわけではあるまい?」
所なさげに浮いていた腕が未練がましく下ろされ、踵を返し案内する彼女は如何にか平然を保とうとしているようだが顔が引き攣っている。
案内する彼女に連れられ着いた先は今までDukeと対面した事のない若い吸血鬼達のグループだった。人間の年月で考えれば十分長生きに値する部類だが吸血鬼の中ではまだまだ若輩者といったところ。見た目も総じて若い者達が多くMissiと同じ年頃の男女複数人がDukeを前にした瞬間、石像のように固まりぎこちなく挨拶していった。
一人一人に一言二言声を掛け夜の一族になったことを歓迎するDukeにある者は感激し、またある者は嬉しすぎて言葉を失い、さらにある者は気を失ってしまう始末。
若い吸血鬼達の様子をMissiが何となく眺めていれば今度は物腰柔らかな初老の男性が微笑み近付いてきた。
「久方振りに御座います閣下」
礼儀として一礼をしたものの、視線は一切妻であるMissiに向けず話し続ける。
まるで始めからいないかのような振る舞い。やっと視線をMissiに寄越したのも束の間、近くを通った従僕の盆からグラスを取り無理矢理その手に握らせた。
「奥方様も同じ女性同士の親睦を深めてはいかがでしょう?」
朗らかな言葉の裏に見え隠れする魂胆にもう飽き飽きだ。
手に持ち掲げるグラスに満たされた液体は赤黒くグラスに付きねっとりへばり付き容易に人間が飲む飲み物ではないことを安易に示していた。全く以て飲む気が起きない。
席を外させてまでしたい話でもあるのか。体よく先程と違う従僕が通りかかったのでMissiは流れる動きで盆の上にグラスを戻した。
刹那、それまで露骨に囁かれていたつまらない話の声量が増えた。そこかしこから聞こえる悪意に満ちた声達。
大広間に犇めく暗がりより遥かに色濃く澄んだ闇色が一瞬で暗がりを飲み込んだ。
「踊りましょう」
「勿論」
自ら率先して手を取り踊りに誘うMissiにDukeは二つ返事で返した。
二人に合わせ道が出来、大広間の中心にスペースが産まれた。堂々と大広間の中心に向かい歩いていき双方会釈したのち優雅に踊り出せば周囲は水を打った静けさに包まれる。
以前と違い手を取り合い踊るMissiの顔が嗜虐的に歪み、彼女の瞳が苛烈な輝きを放ちつまらない話をしていた者達を睥睨した。
その赤く燃ゆる瞳は雄弁に語り掛ける。
確かに自分の意志とは関係なく花嫁にされ挙句吸血鬼化して散々な目に遭ってきた。だが、その事を外野からとやかく言われる筋合いはない。望んじゃわけじゃない人生を自分以外の奴らに貶められるなんて冗談。勝手にしかも他人に自分の人生を決め付けられて堪るものか。
知らず知らずのうちに二人の踊りに合わせ演奏者達が音楽を奏で始めた。
その場にいる者全員二人の踊りに目を奪われ誰一人口を開こうとはしなかった。
無駄に年月を過ごし喰い偏った思想しか持たない手合いほど相手にしたくないものだ。
下世話な話なぞ端から興味なければ気になどせぬ。折角の妻から誘ってくれたのだ。それを無下にするなど毛頭ない。全身全霊共に手を取り合い踊れる喜びを噛みしめればよい。
しかしだ、何やら面倒な手合い達の目が変わってきたな。つい今しがた我が妻に対し罵り妬む小言を漏らしていた割に視線とその視線に抱いているものは何だ?
貴様らが視線を注いでいる相手は誰だ?我が最愛なる妻であるぞ?随分と勝手がいいようじゃないか。実に愚かで身の程を知らない輩たちで困る。この夜会終了後出席者の人数が減っていないことを願うばかりだな。
~~~☆~~~
「
……
。ねえ、やたら首元凝視されるんだけど何かあるの」
「我々吸血鬼にとって首元は特別な部分であるが故の事。会場内を見てごらん。私達のように首を隠す者、首元までを晒す者、数は少ないが肩口まで晒す者の三パターンがある」
「その口ぶりだと其々意味合いが違いそうね。如何でもいいけど
……
」
「古き吸血鬼の仕来りに異性の前で首から肩口を晒す行為はその者と契りを交わしてもよいというのがあってな」
「ん?」
「かつ娶った相手の首元は契りを交わした相手にしか見せちゃいけないというものだ」
「そのニヤついた顔今すぐ止めて。場所が場所じゃなかったら杖で引っ叩いてるわよ」
「ん~、公の場で夫の名誉を傷付けまいとする妻の秘めたる愛にクラクラしてしまう」
「
………
」
「それでだ、話の続きで首元まで晒す者は結婚相手募集中の意味合いもある。つまり君はずっと私に結婚相手募集をし続けた。そして、ついにあの晩!私と契りを交わしてもよいと前向きなっ!! 如何した我が愛しき妻よ?」
「うわ~、何かもう色々言いたいけど言いたいことがあり過ぎて逆に何も言えない」
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