ひさね
2022-05-15 21:16:07
2595文字
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とある青年の印象について

ケントの印象寄せ集め。親しい人から見ないと分からない異常性がある。


〈長曰く〉
 彼は、大事な仲間の一人だ。子どもの面倒も生活上の面倒も率先して引き受けてくれて、そして導いてくれる。
 始めは灰色のような、幾らか煌めく髪に吃驚したものだが、彼が来てからはかなり、いや最上に生活が上手くいっている。子どもの人身売買や臓器売りの被害が減った。そして生活に必要な仕事も上々だ。
 あれだけ死んでいった者たちがいたとは、信じられないぐらいの改善だった。
 明日も生きられる、希望があった。
 このスラム周辺では見ない灰掛かった髪は、疑心から希望にまで変わっている。
 誰もが彼を頼る。彼には、求心力がある。
 飢えと乾きの苦しみと腐乱死体の香りしかない生活の中で、彼は、彼だけは死ぬことがない。
 この終末そのものの生活の中で、彼だけは仕事を失敗しても上手く逃げ帰って来られる知恵がある。彼だけは、一日影すら見せなくとも、次の日にはケロリとした顔で、平然そのものの姿で帰ってきてくれる。
 他の者も、彼についてさえいれば、無事な姿を見せてくれる。
 彼は、きっと救いそのものだ。
 それに、どうだ。現に今、彼は神に選ばれた。
 神が漸くこちらを見た。きっと彼が、神の遣わした救い主なのだ。彼が、こんな土地を、生活を、苦しみを救い上げて、安寧の地へと導いてくれる。
 彼こそが、私たちの救いなのだ。