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納豆
2021-05-09 01:46:02
30614文字
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せんせ詰合せ
5枚分!!!!できました!!!!
p1 ユウリちゃんとマサルくん
p2 笑顔のキバナさん
p3 にょたのお二人
p4 ソニアさんにほっぺた摘まれるダンデさん
p5 竜の遺伝子入ってるキバナさんと研究者のダンデさん
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◇ソニアさんの綺麗な手にほっぺた摘まれるダンデさんのお話
正しさに出来上がる、そんな姿を作り上げてきたのだと思う。
兎角、表舞台で見る幼馴染は、美しく造形を整えられていた。
そこには一部の隙もなく、望まれるままあなたは王者として歩み続けた。
だけど時折、つまらなそうに澱む目だって、私は知っている。
そうして、その淀みが一気に晴れる瞬間だって知っている。
とある一人を前にした時、あなたの全てが煌めくことを私は知っている。
かつてのチャンピオンダンデは、チャレンジャーキバナを前にした時だけ、ただのポケモンバカに戻れていたと思うのだ。
きっと、あなたが最後まで王者たり得たのは、彼のおかげなのだろうと私は思う。
だから、違和感はあった。
そんな特別の前で、あなたが見せた違和感を私は感じていた。
リーグ委員長、及び、ガラル史研究者は次年度チャンピオンリーグに向けて、ガラルの歴史に纏わる宝物庫へ訪れていた。
各地にあるガラルの英雄伝説、判明した新たな事実についてそれぞれの町に説明するという建前に新委員長の挨拶回り。
迷子の監視員として、私は抜擢されたのだろうと思う。
まるでジムチャレンジの頃のようで、少しだけ楽しんでいたのは秘密だ。
さて、各ジムを巡るとなれば当然、責任者も同席するわけで、宝物庫はナックルジムの管轄だ。
つと、隣を見上げる。
ダンデくんはナックルジムのジムリーダーとは適宜話をしながらも、なにか、私に話を振ることが多い。
建前は確かに私の歴史研究の資料提供、けれど、うぅん、でも何かしら。
態とキバナさんとの会話を切り崩しているように感じてならない。
見つける違和感に眇めた目元、ダンデくんは気付いているくせ無視をする。
ばち、ばち、私たちの無言の攻防に、聡い竜たる彼は気付いたのだろう。
先導していたキバナさんは、ちらと肩越しに目をやって、微笑みも軽やかに片手を振ったのだった。
「いやぁ、博士と委員長は随分気安い仲のようだ。こんな美しいレディが幼馴染とは羨ましいね」
「あぁ、自慢の幼馴染だよ」
柔らかな口調に、けれど、私は苦い顔を浮かべた。
ジムリーダーキバナさんについては、本当にわからない。
どう言う心情でそれを口にしているのか知れない。
けれども隣の幼馴染については違うのだ。
きっと人は気付かない。
けれど私は気付いてしまう。
ダンデくん、今怒ったな。
眉をぴくりとも跳ねさせず、完成された笑みを浮かべてはいる。
軽く切り返すだけの余裕を見せる。
どこがどうおかしいのかと言われると、雰囲気が毛羽立ってるくらいなもので、しかもそれだって人からすれば気にならない程度だろう。
だけどこれは中々に怒ってる。
理由は知らないが、なにやらピリピリした空気を感じた。
うぅん、ここに長くいたくない。
思わず呻きそうになりながら、キバナさんは優しく私に微笑んだ。
ぎこちなくも会釈に笑みを添えれば、ダンデくんが私を背中に隠すよう前に出る。
ダンデくんがにこり、キバナさんがにこり。
なんだろうか、冷戦状態。
見たい資料は見せてもらったし、十分な情報提供をいただいた。
そうだとすれば、ここは手早い撤退が得策ではないだろうか。
じわじわ滲むダンデくんの不機嫌に、私はガス抜きを所望する。
まだ次の予定まで時間はある。
早めにここを切り上げれば、問題はない。
そして私は一刻も早く、この場を離れたかった。
つと思考を巡らせて、私は動き出す。
「ダンデくん、私今からランチに行きたい」
我儘な幼馴染に付き合う構図となればいい。
にぱっと笑いダンデくんの腕を取った。
キバナさんは微笑んだまま、ランチならご一緒になんて、軽やかに誘いをかける。
捕まえたダンデくんの腕がぴくっと揺れる。
動揺、つまり、ダンデくんはやはりキバナさんと何かあったらしい。
そうともなれば私は譲るわけにはいかない。
えぇい、これ以上ややこしくしないで、あなたからこの子を引き離すのが目的なのよ。
私は昔から愛想の良さには定評がある可愛い可愛いソニアちゃんである。
有無を言わさぬ笑顔をにぱっと広げて見せて、力づくにもダンデくんの腕をぎゅむりと私の胸元に抱き込んだ。
瞬間、少しだけキバナさんの目元が引き攣る様を見た気がしたが、私は知らぬふりをする。
にこにこ押し切る声は、よくよく弾んで聞こえたはずだ。
「いやだわキバナさん、私ダンデくんと久々に出掛けられてて浮かれてるんです。はしゃいでみっともないところ見られたら恥ずかしいでしょう」
よく動く口は、優秀に回る。
つらつら並び立つこの言葉たちが、ダンデくんにはぺらぺらのものだとバレていた事だろう。
事実、私に腕を取られたダンデくんはきょとりと目を丸くしていた。
いいから私に合わせなさい。
ダンデくんの逞しい二の腕に、ぎゅむうと頬も押し付けてにっこり作り笑いに押し切った。
ダンデくんは私がくっつくことには何も言わない。
この距離感は、私たちに当然にある位置なのだから当然だ。
大抵の人は、仲のいいことだと朗らかに退いてくれる。
しかして、目の前の彼は和やかな笑みは崩さず、反面、剣呑にも瞳孔を細めたのだった。
脅すつもりはないのだろうが、その顔はレディに対してどうなのかしら。
まぁ、私はそんなものくらいで怯んではやらない。
そんな可愛らしさはワンパチのおやつにでもしてやるんだから。
笑みを崩さず立ち向かう私に、キバナさんは柔らかく微笑んだのだった。
「幼馴染ってのは」
ちらとダンデくんを覗く目に眉が一瞬跳ねた。
ダンデくんは気まずそうに視線を逸らす。
確定、これは何かある。
いつだって、誰に対しても真っ直ぐ過ぎるくらい視線を外さないあなたが、不器用な逃げをした。
思わず笑みが引っ込む。
じとっと見上げる私にキバナさんは人懐っこい笑みのままダンデくんに顔を寄せた。
私が抱きしめる方とは逆の腕を取り、ぐんっと引っ張る乱暴さに目を見開いた。
威圧を隠さない仕草は、喧嘩を売ったものと判断する。
「特別か、ダンデ」
唐突な確認だった。
今の流れで何故私が引き合いに出されるのか。
そして、何故だろうか、違和感。
向けられた声は、どこか寂しそうにできていた。
なんといえばいいのか、形容するなら、拗ねたような気配に目を瞬かせる。
一息の沈黙、ダンデくんは綺麗に微笑む。
拒否の構えを、その笑顔は語る。
完成させる表情に、キバナさんの手が緩むさまを見た。
「あぁ、そうだな」
力比べならダンデくんに部があったらしい。
軽々とキバナさんの腕を振り解いたダンデくんに驚いて、私も手を外してしまう。
思わずできる隙間、けれど離れる私を引き寄せるよう、ダンデくんは肩を抱く。
ダンデくんは私ごと、キバナさんから距離をとる。
すっぽりと肩を覆った掌は、少しだけ震えていた。
「余程、キミより、特別だ」
当てつけにも似た言葉に、私はダンデくんの小さな悲鳴を聞いたような気がしたのだった。
◇◇◇
私はじとじとした視線を向けたままでいた。
今日は挨拶回りも終わったからと、ラフな格好に着替えた。
結局あの後、研究所に戻りいつも通り簡単な食事を準備して現在、簡素なランチは終了した。
お婆さまが淹れてくださった紅茶を食後に楽しみながら、私は目の前の彼を睨む。
説明もなく私を巻き込んでくれたではないか。
あれは私からすれば唐突だったが、ダンデくんには心当たりがある言葉だったはず。
なのに、人を勝手に巻き込むようにして、沈黙を貫くとはいい度胸。
不機嫌にげしげしと向かいのダンデくんの脛を蹴飛ばし続けてはや数十分、お婆さまは気を利かせて席を外してくださっている。
2階の書物整理に行きますからね、一時間は戻りません。
そんなことを態々言ってくださったのだから、これは二人で話す時間を貰えたということだ。
じぃいぃと睨み続けた私に、根負けするのはいつだってダンデくんだ。
ダンデくんは困ったように微笑んで、首を緩やかに傾けた。
さらりと流れるライラックは、きらきら綺麗にできあがってあったのだった。
「楽しい話じゃないぜ」
そんなこと、あの険悪さを前にすれば理解できる。
当てつけみたいな言葉を選んでいたダンデくんはあまりにもらしくなかった。
わかっていると頷けば、ダンデくんはもごりと口をまごつかせる。
げしり、今度は強めに脛を蹴り上げればダンデくんは、ぐぅっと呻いて前のめりになった。
結構いいのがきまったかしら、頬杖にじと目を崩さずいればダンデくんはそっと視線をずらした。
それから小さく溜息、呟くように降参は漏れた。
「
……
先日、彼から一晩どうかと、誘われた」
「
……
へ?」
言葉の意味を、咀嚼しかねた。
ダンデくんは笑う。
綺麗に整え、笑っていた。
ぽかんとした私に、ダンデくんは緩く首を振る。
意味を、そのまま理解するなら、それは。
個人としては、あまり気分のいいものではない。
眉間に寄っていく皺に、ダンデくんはからりと笑って肩を竦めた。
「酔っていた、というのもあるんだろうが、男もいけるクチらしい」
笑った顔は、よくできていたとは思う。
けれど、その声音は不恰好に平坦だった。
眉間の皺は、自然、深くなる。
「ははっ、キバナは随分と食指が伸びる幅が広い」
重なる、重なる、重なる。
ダンデくんの表情にどんどんと作り物が重なっていく。
分厚く形を整えるそこに詰め込んだ感情は、隠し切れたつもりなのだろうか。
ぐぐっと眦は持ち上がっていた。
「キバナのあれは、酔った勢い、みたいなものだったし、取り合ったりはしなかったさ」
一時的に消耗されるものに、なりたい人間なんていないだろう。
当然だ。
だけど、友人からの冗談を、軽く受け流せているようには見えなくて、そもそもこれは、受け流せばいいようなものでもなくて。
これは、笑える話じゃない。
揺れているくせに、そんな自分はないのだとぐるぐる迷う彼の内側を見た。
「彼と、そんな関係は必要ないしな」
笑う、笑う、笑う。
ダンデくんは笑みをたやさない。
けれど、そこには確かに揺れる感情があるはずだった。
まるで、二人の関係に傷をつけられたように感じた?
だから、当てつけのような言い方をした?
わからない、私はダンデくんのことは大体わかるつもりだけど、わからないことだってある。
私ができることなんて、せいぜいがあなたに言葉を積み上げるくらいなのだろう。
正解も不正解も、私には判別がつかないけれど、少しでもその心を解す撓みを作れればいい。
貞淑に口を慎むレディなんてここには必要ない。
ぽいっと軽やかに捨ててやる。
笑顔を綺麗に作るあなたへ、私はその瓦解を望む。
「悲しかったのね、ダンデくん」
突きつける言葉に、動きが止まった。
ダンデくんの貼り付けた笑みはそこにある。
けれど、ひくりと口角が偏って固まる。
崩れる欠片を、私は見逃したくなかった。
ダンデくんの虹彩がぐらりと揺れる。
彼は特別で、ダンデくんの全部をぴかぴか輝かせてくれる人で、きっとあの言葉にも恨言はあったのだ。
一番の特別の前で見せた強がりは、裏返してみれば大切にされたかった心が上げた悲鳴だろう。
酷いことをよくも口にしたなと、ダンデくんなりの恨言だったのではないか。
一晩の戯れを求められ傷付く理由に、私は無粋にも踏み込んでしまう。
「好きな人に、酷いこと言われて、傷付いたのね」
好きな人、あなたはきっと好きな人に、そんなことを言われた。
キバナさんに向けた特別が、とびきりの宝物だと私はずっと思ってる。
信頼して、一番に内側に招き入れて、大切な人だと側から見てもわかりやすいほどの好意をあなたが彼に向けていたことを私は知っている。
あの人はどうかしら、わかってなかったのかな、こんなにわかりやすいダンデくんの気持ちも、わからず酷いことを言ったのかしら。
怒ればいいのに、あなたは感情をうまく扱ってしまうから、きっとその怒りも沈めてしまったのだろう。
悲しいという気持ちだって、涙を見せることも下手くそなダンデくんは飲み下したのだろう
ぐるぐる巡る感情を、ダンデくんは迷子に沈めてしまった。
細めた目に映る幼馴染はひくっと眦を引き攣らせた。
笑みは固まり、この子の本来あるべき表情を閉じ込める。
手を伸ばす。
無理矢理引き摺り出したのは私、ダンデくんが一人で片付けようとした痛みを引き摺り出したのは私。
だから、私に怒っていいし、こんな気持ちを迷子に放り出すのはやめてほしい。
私の細い手先でも、作り込まれた仮面に亀裂くらいは入れてやれると思うのだ
「私の知ってるダンデくんはそんなことに迷わないよ」
ぐにりとその頬を持ち上げた。
そんなこと、言葉は強く選んでいた。
感情を隠し通すか、発露させるか、きっとあなたは迷っていた。
迷って迷って、ぐるぐる内側を苛ませる澱みは、重かったろう。
だからくだらないと、思って欲しかった。
自分を傷つける迷いなんて、くだらないのよと、言ってやりたかった。
ダンデくんは、道には迷う。
それは自分が進むべき道を、ダンデくん自身が迷わず選び歩みを止めないからだ。
人は選ばない道筋を、あなたは簡単に選んでしまう。
そんなダンデくんだから、恐れを知らない勇猛さを持つのだと、多くの人はいうのだろう。
けれど、別に彼はそんなに特別じゃない。
選択することには迷わない、何故ならいつだって、自分の心に従って思うがままに突き進んでいるからだ。
だけど、今は、迷っている。
自分の気持ちを扱いあぐねている。
好きな人に酷い形で傷つけられた、普通の男の子。
可愛いダンデくん、そんなにも想いを寄せているのなら向けられた言葉に泣いてしまえばよかった。
心の赴くまま、酷いことを言うなって怒って泣いてもよかったのに。
いつもなら迷わない、そんなあなたが及び腰になってしまう。
そんならしくない部分を出すほどに、あの人だけは特別だったのかしら。
目を細めて、ダンデくんの頰をまたくにぃと持ち上げる。
固まるダンデくんは、しかし、次には困ったように眉を寄せあげた。
「俺は、迷っているのか」
「そう見えるよ」
「そう、か」
しおしおと下がる眉、笑みはなくなり瞼が伏せられる。
泣きたい時は、泣くべきだと思う。
頰から指をほどき、促しに目尻を撫でる。
ダンデくんはぱちぱち瞬きすると、次にはくしゃりと力なく顔を崩した。
瞳の表面がじわりと濡れて見えたのは、気のせいではなかったと思った。
「ソニアの手は、魔法だな」
「うふふ、そうよ、ソニアちゃんの手は嘘つきダンデくんを退治できちゃうの」
ついていい嘘だってある。
どけど、今ダンデくんが誤魔化そうとする心は、きっと長く彼を傷付ける。
平気なわけがないじゃない。
体だけを求められた事実だけを自分の中で消化させて、そんなもの平気なわけがない。
心は鈍い痛みを引き摺るのだ。
ダンデくんは強いから、そんな痛みも見ないふりはできる。
だけど、それでもあなたの中身はきっと削られる。
そんな様は見ていたくない。
強い人でも、痛みはあるの。
これは私のわがまま、結構、その通りである。
幼馴染に笑って欲しい。
作り物じゃない本物で、笑って欲しい。
そんな酷い、私の我儘だ。
やり過ごそうとしたあなたを引き止めたのは、私の我儘。
伸ばした手先は髪に絡まり、緩やかに梳いていく。
よしよしと頭を撫でてやれば、ダンデくんは呟く。
「俺は、わかりやすいか」
「私には、結構前からバレてる。ずばり、自覚は五年前かしら」
「それは、恥ずかしいな」
ふはっと力なく声を漏らしたダンデくんは、否定しない。
見てきたもの、画面越しだけれどあなたを見てきたの。
大事な幼馴染、あなたの喜びが沸き立つ先にはいつだって彼がいた。
あなたの特別に、私よりもよっぽど大きく、彼はいたのでしょう。
だから、悲しんでいい。
そんな大切な人に向けられたくない言葉を、おふざけだとしてもぶつけられたのだもの、平気なふりなんて必要ない。
ぐらぐら揺れるその瞳を、私は静かに見守った。
「これが最善だと、思ってる」
「うん」
「もし、受け入れた時、見返りまで求めそうな自分が、情けないから」
「そう」
「いつも通りに振る舞って、やり過ごそうとしたんだ」
「うん」
「でも」
途切れた声に覗き込めば、黄金はじわりと涙を滲ませた。
零すまいとぶるぶる引き攣る目尻を両手で頬を包んで抑えてやった。
ぐらりと揺らいだその瞳を、私は悪いものだとは思えなかった。
「多分、悲しかった」
遊びの延長に扱われた心は、確かな傷を負ったのだとわからせてやりたい。
子供みたいなわかりやすい感情を前に、私は頷く。
多分なんて、言わなくていい。
あなたの心の痛みに鈍くなることはない。
そうしてこの手から温もりが伝わればいいと、そればかりに彼の目尻をゆったり撫でた。
ぼろりと落ちる涙、くちゃくちゃに拉る口元、ダンデくんはちゃんと泣けている。
好きな人が欲しくて、好きな人に大事にされたくて、好きな人に選ばれたい。
だけれど、向けられたものは心を遊ぶ一言だった。
そうとなれば、泣いたっていいじゃないか、悪いことなどあるものか。
手を外し、立ち上がる。
それからつかつか回り込み、ダンデくんの頭をぎゅっと胸元に抱きこんだ。
顔を埋めた胸元は湿り気を帯びる。
私の腕に収まりきらない大きな体、だけど、私にしてみればあなたはいつまでたっても可愛いあの頃のダンデくん。
背中を押せればいい、そうとばかりに言葉を積み上げた。
「普通よ、そんなの」
次にあったら私も蹴っ飛ばしてあげちゃう。
二人でやれば怖くはないわ、なんなら号泣してやればいい。
人の気持ちをなんだと思ってるんだって、大きな声で怒ってやればいい。
私はぐぐっと眉を寄せて見せた。
「ていうか、今から直談判とかでも付き合うよ」
「こらこらソニア」
「いいじゃない、私今ならメガトンキックかませる気がするわ!」
ふつふつ湧き上がる怒りにふんふん鼻を鳴らせば、ダンデくんは笑う。
もぞもぞ顔を持ち上げて、下がった眦に涙の痕はあるけれど、次の涙は浮かばない。
なんだそれ、なんてふはりと抜けた笑みを浮かべるから私はなんだか安心してしまった。
優しい私の幼馴染、あなたのそういう穏やかな笑顔が私は大好きよ。
ぎゅーと力一杯抱き締める。
私の胸元に顔を沈められ、わぷっと悲鳴を上げたダンデくんにからから声を転がした。
「もう今日は泊まって行きなよ!あなたがいなくても寂しい夜なんてありませんってお泊まり会の写真送りつけてやろ!」
「いいな、そしたらホップたちも呼ぼうか」
「うふふ!そうしましょ!ユウリと私で両手に花の写真撮らせてあげちゃう!」
今夜の楽しみにわしゃわしゃとダンデくんの頭を撫でくりまわす。
そんな私にダンデくんは腕を回してくっついた。
甘えつく、そういう仕草に目を細める。
感情の取り扱いに迷うあなたを私は知っている。
だからどうかこの先も、一緒に考えてあげたいと思うのだ。
心に素直になれますように、そうとばかりに私は手を伸ばしてしまう。
傷は癒える、けれど、長引き放置された傷は治すまでに時間がかかる。
そうとなる前に、手当に触れられたことは僥倖であったと思うのだ。
「よっし!ホップに連絡とってユウリとマサル誘ってもらっちゃお」
「賑やかになるな」
バトルもできるだろうかなんて、ダンデくんはうきうきし始める。
ようやく、らしい、ダンデくんが戻ってきて私はにっこり浮かれてしまう。
連絡を取った先、はしゃぐ子供達に私とダンデくんは顔を見合わせ声を立てて笑った。
さてはて、今宵の記録をここに。
今夜の私とダンデくんが撮ったラブラブショットを前に、深夜襲来するドラゴンがいたことをまず記そうか。
本心を差し出すことに尻込みをした、逃げを用意したかった、等々言い訳はなんとも弱気なものだ。
事の顛末を知ることになるが、しかし、ダンデくん大好きナイトがこちらには四人も待ち構えている。
そう簡単にダンデくんを渡してなるものか。
迎撃準備は万端に、臆病なドラゴン退治といこうではないか。
深夜のバトルは咆哮まじりに、最後の求愛に至るまで続く。
最後の締めくくりがどうなったのかなんて、そう、寝静まる夜中の馬鹿騒ぎに興じた私たち以外知る由もなかったのである。
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