不破
2022-09-08 21:10:56
6191文字
Public 空戦
 

#9




你们好御機嫌よう! 諸氏諸君!」

 と、槍を手にしたウメは建物の中でスティンガーのミサイルの装填作業を行っている敵兵にわざわざ声をかけた。途端にいくつかの銃口がこちらを捉えるが、そこから弾丸が放たれるよりも速く大きく踏み込んだウメはぐるりと槍を翻し、勢いよく横薙ぎに振るう。勢いよく払われた銃を取り落とした敵兵達が「この女!」などと毒づきながらも、手に手にナイフを取り出したかと思えば、一斉に向かってくる。

「良いね! 私も白兵の方が好みだ!」

 言いながらも迫り来る敵兵が振りかざすナイフに新緑色の目を爛々と輝かせ、槍を翻して構えると、勢いよく地を蹴る。首を傾けてナイフの切っ先をぎりぎりのところで回避し、翻した槍の柄で敵兵の脇腹を殴りつける。その反動を利用して自らの身体をぐるりと翻し、遠心力を乗せた槍の矛先で2人目の敵兵を抉る。その攻撃の隙を狙って3人目の敵兵が槍の間合いの内側へと滑り込んできた。

「ほう?」

 滑り込んできた敵兵のナイフが勢いよく振るわれる。上半身を反らしてそれを回避し、後方へ下がりながら通信を介して仲間へ向けて声を放った。

「いやあ、なかなかやるよ彼等。普通の空兵ではないね! 通常のマニュアルにあるような戦術じゃない」

 ナイフを振りかざして踏み込んでくる敵兵の刃を槍の柄を立てて受け止めると、拮抗した得物の向こう側の敵兵の目を見て笑いながら続ける。

「傭兵……いや、サイードの囚人部隊というところだろう?」

 通信に向けて聞こえるような声で敵兵へと問いかけ、歯噛みする敵兵のナイフを払った。数歩下がった敵兵に、槍のリーチを活かして突き掛かる。その矛先が敵兵を貫いたと同時に槍の矛先を上げて振り回し、投げ飛ばす。赤い血を撒き散らしながら吹き飛んだ敵兵が崩れ落ち、ウメは槍を下ろした。

「ポイント1は抑えたよ。白頭鷲君」

 と、通信を介してポールへと呼びかける。が、返ってきたのはポールの言葉ではなかった。

『フォーマルハウト2です。微量なノイズを感知。シャウラ4、3時方向、距離3』

 響いてきた機械的な声はフォーマルハウト隊の2番機のものだった。
 距離3。そこまで近くに迫ったなにかしらに気が付かなかったと?そう考えながらも3時の方向へ目をやると、そこには割れた窓があり、その向こうに小さな銀翼があった。パイロットのいない小型の機体。それが装備した機銃が火を吹く。

「っ!!」

 6連装の銃口が回転しながら順に火を吹く機関銃が撃ち出した弾丸が掃射される中、ウメは機体を横目に見ながら垂直に疾走する。目前に迫った窓枠をハードル走の要領で飛び越え、建物の4階から空中へと躍り出る。腰にマウントしていたサテライトが瞬く間に展開。両足にスケート靴のようにして装備され、ウメは推力を得て宙を舞う。

「白頭鷲君! 黒蠍君! なにやら面白そうなオモチャが出てきたよ!」

UCAV無人攻撃機です! バグダード各所に出現!』

 空を滑るようにして飛びながら、肩越しに振り返ったそれを指して5番機であるセシアが言った。横文字はいまいちよくわからないが、敵方の物であることは間違いないようだ。

『こっちでも確認した! シャウラ隊! そっちで頼めるか!?』