ナガレ
2021-09-03 20:56:47
11355文字
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SSまとめ(その2)だいたいぶぜまつ

すべてページメーカーで作って上げた小ネタの再録です。(手が滑った豊前の話、ピアスの話、まつ愛でタイムを邪魔される話、酔っ払い豊前の話、夕涼みの話)


【ただいま取り込み中につき】
至福のまつ愛でタイムを邪魔された豊前と巻き込まれた篭手切と被害者松井。気持ち脚フェチ要素を添えて。

……ねぇ、豊前」
「ん?」
「楽しい?」
「楽しい」

少し困ったように楽しいのかと尋ねる松井江と、それに対して楽しげな様子で楽しいと答える豊前江。久しぶりに二振りそろって非番の午後、豊前は松井を連れて自室に引っ込んだ。松井に座布団を勧めて座らせると、自身は松井の脚の上に頭を乗せた。松井の下肢はハーフパンツだけで、いつも足首まで覆っているレギンスは無い。珍しく素足を晒していた。
手持ち無沙汰に豊前の跳ねた髪をくるくると指に巻きつけている松井。時折髪が引っ張られるのを感じながら、豊前は悦に浸っている。頭の下の枕は松井、目の前にいるのも松井。最高だ。
身も蓋もない事を言うと、豊前は松井の脚――特に太股を気に入っていた。適度に肉がついて引き締まっているけれど、決して固いだけではなくて、しなやかと表現するのが相応しい。いつだったか酒の席で魅力を感じる部位の話が出た時、豊前は少し考えてから脚だと答えた。正確には「松井の」脚なのだが、そこは口にしなかった。する必要を感じなかったので。
ハーフパンツの裾から手を入れて、相変わらず滑らかだなと満足気にその感触を楽しんでいると、くすぐったさを感じたのか松井が少し身動いだ。豊前に悪戯心がむくむくと湧いてくる。ほんの少し口角が上がったのがわかった。
松井の太腿を撫でていた手を、そーっと脚の付け根に向かって動かした。指先に触れる布。豊前が布と肌の間に無理矢理隙間を作って侵入しようとすると、松井にぺしんと手を叩かれた。

「そこはいけないよ」

バレたかと、おとなしく一時撤退する豊前。頭上からくすくすと口元を抑えて笑う声が聞こえてきた。

「そろそろ腹がくちくなる頃だろ? 少し寝るかい?」
「松井は?」
「僕も少し寝ようかな。たまには午睡を決め込むのも悪くない」

折角の膝枕が終わってしまうのは少々残念だが、共に昼寝をするのも悪くない。が、もう少し堪能したい。豊前はすり……とわざとねちっこい指使いで松井の肌を撫で上げた。途端、松井から抗議の声が上がる。

「こら」
「松井はこうされんの嫌?」
……嫌じゃないけど、今はだめ」

懲りずに再び侵入しようとする豊前と、それを阻止する松井。攻防戦で戯れていると、誰かの足音が聞こえてきた。足音は早足でこちらに近づいてくる。この並びには江の者達の居室と物置しかない。篭手切江と桑名江は内番で出払っているし、五月雨江と村雲江の部屋に行きたいのならここを通るのは遠回りだ。一体誰だろうかと訝しんでいると、足音は松井の部屋の前でぴたりと止まった。

「松井江、いるかい?」

足音の主は審神者だった。どうやら松井に用事があるらしい。審神者も松井が非番である事を知っている。何か急用だろうかと、豊前と松井は顔を見合わせた。

「書類が終わらないから手伝ってくれないか?」

またか、と思わず口にしてしまったのはどちらだろうか。ここの審神者はとても優秀なのだが、書類仕事にぎりぎりまで手をつけようとしないという悪癖があった。松井や山姥切長義が泣きつかれる度に苦言を呈しているのだが、なかなか悪癖は直らない。最近はこちらで期日を把握して、細かく進捗を管理する事で事なきを得ていたが、どうやら見落としがあったみたいだ。
しばらく松井の部屋の前にいた審神者だったが、一向に返事が無いので不在だという事に気づいたようである。諦めて執務部屋に戻るのか、それとも他の誰かを頼りに行くのか。審神者の廊下を引き返す足音が聞こえ――豊前の部屋の前で止まった。

……豊前江」

部屋の外から呼びかけられ、豊前と松井に緊張が走る。

「そこに松井江いるよね。少し仕事を手伝ってもらいたいんだけど……

審神者の言う通り、松井はここにいる。しかし今は非番、時には心を鬼にする事も必要だ。豊前は首を横に振った。松井は物言いたそうにしていたが、居留守を使う事に同意してくれた。審神者も返事が無いとわかれば諦めるだろう。二振りは時が過ぎるのを待った。しかし審神者はなかなか諦めない。

「今夜が締切なのに終わらないんだよ?長義に見つかったら大目玉を食らうんだよ?松井江貸してくれよ?」

しばらくすると泣きが入り始めた。これはまずいんじゃないかと、松井がそわそわし始めたのがわかった。松井の意識が審神者と今夜が締切なのに終わっていない書類に向きかけている。いけない兆候だ。松井を抱き枕にして昼寝をするどころではない。このままだと松井を取られる、豊前の直感がそう告げた。

「僕、行ってきた方が……
「行かなくていい」

ほら、やっぱり。松井を制すと、豊前は起き上がった。豊前も鬼ではないから審神者を助けてやりたいと思う。しかし今はだめだ。面白いぐらいに昼も夜も松井と予定が合わなかったが、ようやく非番が重なった。そんな貴重な時に松井を貸せるか。
はぁとため息混じりで立ち上がると、豊前は部屋の障子を開けた。障子を開けると、部屋の前に立っていた審神者の表情がぱっと明るくなった。

「豊前江! そこに松井江もいるんだろ? 悪いんだけど……
「取り込み中」

――ぴしゃん!

「あ! 鍵掛けた!」

障子が開いてから閉まるまで、わずか数秒だった。見た目はただの障子だが、実は電子ロックが掛かるこの障子。刀剣男士達のプライバシーに配慮したもので、解錠できるのは部屋の主と審神者のみ。審神者は障子を力づくで開けようとしたが、障子はがたがたと音を立てるだけで開かない。当然だ。そこに内番を終えた篭手切江が通り掛かった。

「主?」
「篭手切江! 豊前江がひどいんだ!」
「りいだあが、ですか……?」
「松井江に書類を手伝ってもらいたいだけなのに貸してくれないし、鍵掛けるし!」
「それは……

主が悪いと思います。

篭手切は出かかった言葉を飲み込んだ。先日の出陣、篭手切は豊前と同じ部隊だった。松井が足りないと豊前はぼやいていた。松井と厨当番が被った時、最近すれ違いばかりで少し寂しいとこぼしていた。
そんな二振りの非番。急用ならまだしも、忘れていたであろう書類仕事の手伝いで呼び出しなんてたまったものではない。篭手切は私でよければ手伝いましょうかと申し出たが、審神者は聞いていなかった。

「豊前江! 松井江を渡せ! 審神者権限で開けるぞ!」
「開けたら事故現場見せつけっぞ!」
「豊前!?」

売り言葉に買い言葉。豊前の台詞で慌てる松井の声がした。続いて、ちょっと何脱がそうとしてるんだと聞こえてきて、さすがに審神者の障子を揺らす手も止まった。豊前は本気である。この場合、一番の被害者は誰だ。松井だ。

……主、手伝いますね」
「うん……ありがとう……

篭手切に慰められながら、審神者はとぼとぼと執務部屋に戻った。

あの後一悶着あったのか、夕餉の場に姿を見せた豊前の左頬は少し赤くなっていて、松井は珍しくむくれていた。篭手切は何も言わず、サラダに乗っていたミニトマトを松井の皿に置いた。


――――――――――
松井だって時には豊前に手を上げることもある。

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